ポンコツ幼馴染(先輩)に振られた翌朝、何故か同居することになった件
@kei06
第1話 朝
高校の屋上に俺、相良翔は幼馴染の先輩柊柚葉と立っていた。
「何、テニス部の練習始まんだけど」
「柚葉、もう、そろそろさ」
「だから、何」
「付き合ってください!」
柚葉とはガキの頃からずっと一緒でバカやって、今日まで親友と言っていいほど、良好な関係性だった。
でも、俺もそろそろ彼女がほしい年頃なわけで付き合うなら柚葉しかいなかった。
だって、そうだろ?
俺たちは幼馴染でお互いの良いところも悪いところも知ってるから他人と付き合うよりはずっと上手く行く自信がある。
だから、俺は勇気を出した。
柚葉の顔は少し赤い。
「...ダッサ」
「え?」
頭が真っ白になる。
今まで過ごして来た時間で好きだよって言われたことなんて、数えきれないほどある。
なのに...
「アタシ、同い年しか恋愛対象に入んないから、無理。
じゃあ」
視線の先にはアスファルト。
柚葉は早足でドアへ向かう。
俺には追いかける気力も何も、残っていなかった。
ーーなんで、なんでだよ...
告白は確認作業だろ...?
────────────────────
「やっと見つけた!柊、早く!先輩達もう来てる!」
「マジかぁ」
このマジかぁは探してくれた同級生と告白してきた翔に対する言葉。
あぁ、なんでフッたんだろ。
あんな約束、覚えてるのアタシだけに決まってるのに。
「早瀬、アンタ彼氏いるっけ」
「いるよ、そりゃ二年生ですから
なになに、彼氏ほしいの〜?」
コイツ、数日前までいないって言ってなかったか?
「今告白されたの」
「あらあら、で、誰?」
「教えない」
翔だって言えば、口の軽いコイツは絶対言いふらす。
それだけは避けなければ。
「カッコいい?」
「まぁね」
「速水?」
「あんなヤリチンこっちから願い下げだっての」
「えー、誰だろ」
「だから、教えない」
「まっいっか」
手こずるかと思ったけど、案外すぐ引いてくれた。
コイツなりに成長してるってことか。
「柊、アンタやっぱテニスやる胸じゃないわ」
「うっさい」
訂正。
コイツは成長してない。
胸も精神年齢も。
「90はグラビアだよねー」
「顔も可愛いし、応募してあげよっか?」
「したら殺す」
グラビアなんて、オッサンのカメラマンに水着姿撮られて、大半は大して売れないんだ。
絶対やらないし、やりたくもない。
「おーこわ」
「アタシはテニスで金メダル取る」
「志高いねー」
アイツが野球でメジャーを目指すならアタシはオリンピックを目指す。
これは小さい頃決めた約束だ。
だから、今じゃないのに、あのバカ。
「柊鬼モードじゃん...」
「サーブキレすぎて、サービスエース連発じゃん...」
「歌恋先輩が手すら出ないってやばすぎ」
あのバカのおかげで今日は調子が上がらない。
皆は褒めるけど、いつもならもっと速く鋭いサーブが決まる。
「やっぱやばいね柊、なんかあった?」
「別に、告白されただけです」
「あーね、告ハラ?」
「まぁ、そんなとこです」
告ハラってわけではないけど、遠からずだ。
歌恋先輩と握手を交わしたアタシは束ねてた髪を下ろす。
今日だって、アイツに可愛いって言ってもらいたくて、ポニテにして来たのに、アイツは言ってくれなかった。
ポニテ好きなくせにさ。
────────────────────
翌朝
「ねみぃ」
今日は野球部の朝練が監督が用事があるとかでない。
非常にありがたい。
昨日、泣きに泣いて腫らした目を見られなくてすむ。
「今日、メシ何?
...って、!?」
「翔、可愛い女の子がこれから居候します〜。
過激なイチャイチャはママおこっちゃうから!」
いつものように朝食が置いてあるリビングに行くとそこには昨日、俺のことをフリやがった柚葉がいた。
「もうやだ、おばさんったら、そんな関係じゃないって、昨日も言ったじゃないですかー」
誰だ、お前。
「幼馴染は付き合うモノなんだよ、ゆーちゃん!
翔のことよろしくね!
あ、避妊はちゃんとするんだよ!
恵に怒られちゃうから、私が!」
「だからぁ」
そんなtheラブコメ展開、俺と柚葉の間にはないんだ、ママ。
残念ながら...
「勘違いしないでね、翔君」
可愛いく両手に手を乗せ、舌を出してウインクする柚葉。
ぶん殴りてぇ、マジでボコボコにしてぇ。
昨日の今日だぞ。
「心配しなくてもしねぇよ、柊」
もうお前なんて興味ねぇよ。
「アタシは先輩、お前、後輩。
上下関係学んで来なかったんか?アァン?」
「敬う気がねぇんだよ、クソ幼馴染」
胸ぐらを掴んでくる柊。
俺は掴み返す。
でっかい胸がクソ邪魔だし、俺は無意味な上下関係が大嫌いだ。
「どさくさに紛れて、胸触ろうとすんな、離せ、このおっぱい星人が」
「誰がテメェの胸なんて触るか、触るならもっと柔らかいの触るわ」
鍛えられた胸より柔らかいハリのある胸だ。
「お兄ちゃん、彼女いないじゃん」
「ダッサ」
「夏葉、子供は黙ってろ」
「一歳しか変わらないので無理でーす
お兄ちゃん、私も敬う人は選ぶから」
「生意気な」
卵焼きを食べる妹の夏葉。
また生意気になったな、まだ中3のくせに。
「あら、もうイチャイチャしてる、何、夫婦喧嘩?」
「黙れ、七瀬」
「双子の姉に向かって黙れだって!ママ聞いた!?」
七瀬は俺の双子の妹。
俺が兄で七瀬が妹だ。
なんで頑なに認めないんだかしらんが。
「翔、ななちゃんと喧嘩したらお小遣いなしよ!
エロ本買えないよ!」
「買ったことねぇわ!時代が違うわ!」
今はインターネットという便利なものがある。
エロ本なんておっさんしか買わんし、コンビニでも撤去されてる。
「いつまで掴んでんのよ!」
柊の強烈ビンタが左頬に直撃する。
その衝撃で手を離してしまい、俺は床に倒れ込む。
この怪力ゴリラ女はマジで加減ってもんをしらねぇ。
「大丈夫?」
「だいじょばねぇ」
「フン、学校行くけど、ついてこないで」
「わーってる」
誰が行くか、誰が。
「翔くん、一緒に学校行こ」
「あぁ」
家を出て少し歩いたところにはクラスメイトで一年のプリンセスと呼ばれる絵里がいた。
絵里はピンクのポニテが似合う本当にプリンセスのような天真爛漫な女の子で、俺とは選手とマネージャーの関係。
そして、クラスメイトからは俺の正妻と言われている。
ーー柚葉はダメだったし、この際絵里でいいかな。
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