24歳、未婚のシングルマザーになりました

第1話 幸せの幼少期

平凡な家庭の一人娘に産まれた私。


父親は設計士、母親は当時専業主婦で、どうやら初めての子どもという事もあり、それはとても可愛がられていたそうです。

小さい頃の話で印象に残っていたのはある時写真屋の前を通ると、写真を撮られ、飾られていた事もあったという話は聞いたことがありました。

ですが世の中はバブルが崩壊し、父親の仕事は段々と数が減って行ってしまったそうです。


子どもを抱え、家族の大黒柱である父親は転職が余儀無くされ、家族共々田舎へと引っ越しをしました。


最初は工場の社宅。アパート暮らしの始まりでした。町にコンビニは1つ。スーパーまでは車を使わないと行けない不便さではありましたがそれでも父親は慣れない仕事ながら家族の為に働いていて、母親も軽く働きに出て、あまり記憶はありませんが充実していた幼少期だったように思います。

充実していたからこそですが、何事も不自由なく育った私は保育園では問題児でもあったそうです。

今は親友になった友人が当時の私は嫌いだったとそう、口に漏らすほどの我儘っぷり。


自分は可愛くありたい!

自分が、自分が!

といった我の強い子だったそうです。


髪の毛を可愛く縛ってくる子たちが許せなくて髪の毛を引っ張ったり、喧嘩をしたり……

大暴れっぷりだったそうな。


正直私は幼少期の記憶が余りないので(というのもこれからお話しする経験あらゆる出来事もあり、恐らく記憶を消そうとしている部分があるため)友人の話を聞き、綴らせて頂いております。


そんなこんなで、大事に可愛がられ、我儘に育っていった私。

父親も30歳を迎え、私も小学校入学の年になり、家族としては大きな分岐点に立ちます。

人生の大きな買い物、一軒家を購入する事になったのです。

今思えばこの決断からもしかしたら家族は間違った方向に道を進めて行ってしまったのかもしれません。


私が小学校2年生に上がった頃、母親が急な朝帰りをして、父親がそれに激怒した声が玄関から聞こえ、私は飛び起きました。

何を言ってるかまで、当時の私は理解が出来ませんでした。

でも喧嘩ひとつなかった両親の、温厚な父親の初めての怒号、頭の中に浮かんだのは〝止めなきゃ〟という思い。


『止めなきゃ、止めなきゃ、止めなきゃ……』


この事は今でも鮮明に覚えています。

布団の中に包まり、2階だった私の部屋から飛び出して、2人を止めないとと思ったのです。


しかし私は何も出来ませんでした。


怖くて、早く怒号が止むことだけを願って、布団から出ることが出来なかったのです。

この時私がもし2人の喧嘩を止めることが出来ていたら、何か変わってることがあったのかもしれないと思うとこの時勇気が持てなかった事を後悔してしまいます。


それから少しずつ家族の形が変わった気がします。

家族旅行に行っても両親は隣に並ばないし、母親はカップル用のお揃いのキーホルダーを買ってるのに、父親はそれをつけてなくて。

私の前では丸になろうとしてるけど、何処か繋がってないようなそんな仮面家族。

正直所々の記憶は強いものの、完全に全てを記憶しているわけでは無いので詳しい時期までは記憶がありませんがそれから程なくして、私は両親に呼ばれました。


リビングとはまた違い、2階に余った6畳ほどの部屋。

ベランダがあり、床にはカーペット、1つだけテーブルが置いてあるだけの簡易的な部屋。

そこに両親は座っていました。


『お父さんとお母さんは別々に暮らす事にした。お前はどっちについていきたい?』


父親にそう問われ、意味はよく分かりませんでした。

でも当時は父親よりどうしても母親のが好きだった私。

どうしても外で働きに出る父親より、家の中にいる母親のが過ごす時間も長く、母親を選んでしまったのは突然と言えば当然だったのかもしれません。


『もう一緒に暮らせないの?』


当時の私でもこの質問は口にしました。

なんで?どうして?そんな気持ちが強かったからです。

父親と母親と一緒に暮らしたかったからです。

でも母親は首を横に振るだけ。

もう亀裂の走った絆は元には戻りませんでした。


これは私が20歳になった時、父親の口から聞いたのですが母親は不倫をしていたとのことでした。

そして当時7歳の私は新しい父親と母親の元で暮らす事になったのです。

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