第6話 闇に潜む鳥たち 2
「父上、、いや
窓の外を眺めたまま物思いにふける父王を、
父、
この人は王の器ではない、小心で善良なのだ。
まつり上げられた王の座で、使いこなせない権力を息子のために使ってやれず、心を傷めている。
故郷に妻を残し、息子を連れて長い戦いの旅にでた。
帝国は建国したものの、内政は征服した他国の家臣たちが主力だ。彼らが薦めるままに土地の権力者の娘を皇后として娶った。
「いや、
「皇后さま、を?なんでしょうか」
「皇后のことをどう思う?」
「お美しく聡明であられると思います」
父の質問の意味を測りかねて、つい慎重になる。
「あの姫が三輪山の神の娘というのは本当だろうか」
「まさか、、、人間であればこそ、王との間に三人もの皇子をお産みになられたのです。三輪山の神の娘というのは、あの方の美しさへのたとえ話が大きくなったものでしょう」
三人も皇子をつくっておいて、いまさら何を言い出すのか。
「あの姫を皇后にと強く勧めたのは
「それが、三輪山の神だと?」
征服者がその地を治めていた王の親族と婚姻関係を結ぶのは当然のことだ。そうやって民や豪族たちを納得させて治めるのだ。
三輪山の神の子という触れ込みだが、実際は
「三輪山におられるお方と、
「三輪山におられる方、、、ですか。なるほど。たしかにそれは神しか考えられませんね、、、。それで、皇后さまがどうかされたのですか?」
この人のいつもの癖だ。もしかしたら、、、。
「皇后は、皇太子をたてて
わかっていたことだが、実際に父の口から聞かされると悔しさが込み上げた。
思えば、日向の国を出たのは十五になったばかりだ。
父に従って初めての遠征。
行く先々で血を流し、人を殺し、そして自らも死を目の前にしたことが幾度あったことか。
ヤマト帝国を建国するまでの苦労を一番知っているのは、自分だと思っている。
宰相とは言え、敵国の皇太子だった
父がこの帝国のなかで唯一心を許せる腹心は、このわたしなのだ。だが、跡を継ぐのは敵国の姫が産んだ息子だ。
もし、王が死んでその息子が王になったら。
そこまで考えた時、父王が案じることを悟って胸が熱くなった。父が本当に心配しているのは、わたしの身の安全なのか。
「
声は
日々の仕事が忙しく積み重なっていき、種はいつしか奥深くに埋もれていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます