ワタシの事が嫌いなキミに、すべてを奪われるシナリオ。

双葉音子(煌星双葉)

第0話 僕が我儘を書き始めるまで。それを記したプロローグ。

「えっと、その。好きだから!付き合って!」


 2年前のある日。中学生だった僕――椎名しいな燦葉あきはは、ずっと好きだった幼馴染の少女に告白した。

 だが、僕は物語の主人公じゃない。この告白が上手くいくだなんて思ってない。


「……ごめん」


 結果は予想通りだった。僕は振られた。

 それだけなら良かった。良かったんだ。


「私、彼女いるの」


 その一言だった。悲しみが、とても強い嫌悪へと変わった。

 もし、彼女が同性愛者でじゃなかったら、付き合えたかもしれない。彼女が悪いんだ。

 余りにも我儘な考え。今は多様性を尊重する時代。僕は淘汰されるべき存在だろう。でも、そうとでも思わなければ、この胸を締め付ける縄を緩めることは出来なかった。


「だから、付き合うのは無理。でも、私は燦葉のこと、1番の友達だと思っているから」


 どうしてそんなことが言えるのか、わからなかった。彼女がそう思っていたとしても、僕はそう思うことはできない。

 無責任だ。 君の中で、僕はその程度の人間でしかないんだ。今まで彼女と過ごして来た日々が、全部馬鹿みたいに思えてくる。

 でも、本当に無責任なのは僕だ。全部、彼女のせいにしようとしている僕なんだ。しかし、それを認めることは出来なかった。

 そんな愚者を置いて、時間と共に彼女はその場を去ってゆく。

 その日から、僕は女性同士の恋愛ゆりに対して、嫌悪感や苦手意識を抱くようになった。

 それから暫くして、クラスの女子からイジメを受けた。これでも女性を苦手にならないという人間がいるのならば、是非会ってみたい。

 そうして、僕が学校に足を踏み入れる日は段々と少なくなっていった。

 あの日以降、彼女と再び言葉を交わすことは無く、僕は卒業した。

 全部、僕のせいなのだから。選択を間違えたからだ。これは、しょうがないことだった。


 ◇  ◇  ◇


 それから1年と少しが経ち、僕は高校生となった。

 その間、特に手入れもされ無かった髪はすっかり伸び、見た目はまるで女性の様になってしまった。元々、顔が中性的だったからだろうか。それにしても、畏怖の対象に似た容姿になってしまうとは、何たる皮肉か。

 学校には行くようになったが、放課後になってから、担任の先生の下に少し顔を出すだけだった。

 本来学校でするべき勉強は、家で済ませているから問題はない。それ以外の時間は、元々興味のあった執筆活動に充てた。

 燦星きらぼしフタバ。それが僕のもう一つの名前ペンネーム

 過去と現在を切り離すことは出来ないながらも、その名とともに新しい道を歩いていこうと決意した。




 まだこの時には、まさか花を枯らしてしまうことになるだなんて。そんなこと、思っていなかった。

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