第21話 依存するもの

彦徳は家で勉強をしていた。


「先生、ここの数字は合ってますか」


彦徳の横にいるのは、数か月前から家庭教師をしてもらっている内村だ。


「どれ、、うん、途中までは、、あってるね」


独特な間をもっている内村は、そう言うと手元にあるスマホへと目線を落とした。


「途中ってどのあたりですか?」


彦徳は内村の方を向き、訪ねたが内村はスマホに夢中で返答はない。


画面を見るに、なにかのアプリだとは思うが、みたことがない。


「それ、なんていうアプリですか?」


「これ?なんだっけな、、いつインストールしたのかすら、覚えてないなぁ、、」


話している間も内村の目線はスマホだけを捉えていた。


彦徳は今まではとても親身になって勉強を教えてくれていた内村が、

アプリに集中してこちらも向かずにいることが不思議でならなかった。


スマホをタップする音が忙しなく、画面と顔も近い。


「タタタ、タタタ」


内村が喋っているのか、スマホから出ている音なのか分からない。


「タタタタタタタタタタタタタタタタタタ」


ガチャ、と部屋のドアが開いた。


「そのアプリやめといた方がいいよ」


彌子が部屋に入ってきて、スマホを内村から取り上げた。


内村の顔は目が中心に向かって大きくずれており、一瞬目が消えたのかと彦徳は錯覚した。


「先生」


ハッと内村は我に返ると、普段の温厚な表情に戻っていた。


「彦兄、アプリ消しといたからね」


彌子はスマホを彦徳に渡すと、自分の部屋へと戻っていった。


「アプリもうやらない方がいいですよ」


彦徳は内村にスマホを返す。


内村はまるで自分のものではないかの様に、嫌に丁寧に鞄にしまうと、


「なんか、、ごめんね、、うん」


と、ぼそっとつぶやいた。

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