「カゲロウ山に登る」 V.2.1
@MasatoHiraguri
第1話 はじめに
大吹雪のなか、ある旅客機が20トンの金塊と共に消息を絶った。
不時着する直前、機長は「山に激突する」と発信していた。
しかし、その不時着(墜落)したと見られる現場付近は大雪原であり、山など存在しない。
ところが、地元のインディアンの伝説では、数日間大吹雪が続く時、幻の山カゲロウ山が現われる。そして、その山を見ることができるのは、山の存在を(強固に)信じることのできる者だけだという。
レーダーにも写らない幻の山では捜査のしようがない。公式の捜索が不可能とされる状況下、6人の犯罪者と一人の神父、そして海賊コブラが、原住民の案内でカゲロウ山への登頂を試みる。
単なる欲に目がくらんだ6人は、初めのうちこそ山が見えていたが、猛吹雪の中で断崖絶壁を登る困難の中、一人また一人と「山の存在」が信じられなくなり、崖から転落していく。あるかないかわからない金を探すという希薄な目的意識では、(山の存在に)ほんのわずかな疑いを抱いた瞬間、彼らの目の前から山は消えた。
しかし、墜落した機内に相棒のレディーがいることを「彼女からの救助信号で知る」コブラと、自分の父がこの山に登ったことを信じるインディアン、そして、神を信じるようにして山の存在を強固に信じる神父の3人は、遂に登頂に成功するのだが・・・。
「信じない者にとっては存在しない山。それはまるで神への信仰と同じであり、私がその山を見ることができ登頂に成功すれば、神への信仰を取り戻せる」という神父の信心は、果たして本物であったのか。
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① ニューヨークの顔役といった肩書きを頼りにする者や、カネ目当ての者たちは、究極の場で「信じる」ことができず、地獄へ堕ちていった。
② 救助信号だけで、本当にレディが生きているかどうかはわからないという状況下。しかし、どんなに危険であっても絶対に諦めない、という強い信頼感(仲間意識)が、コブラの(山は必ず存在するという)信心を堅固なものにした。
そして、そんなコブラの強い意志にカゲロウ山は応えてくれた。
③ 部族の酋長になるための試練として山へ向かい生還しなかった父は、(山を恐れて逃亡した)卑怯者とされた。しかし、その汚名をそそごうとする息子には、父が頂上にたどり着きながらそこで息絶えたという強い信念(愛)があった。
そして、やはり山はその信念に応えてくれた。
(神父については「ネタバレ」になるので書きません。)
目に見えない相棒の存在を信じるコブラの強い心に対し、山は応えてくれた。
父親の勇気を信じる息子の深い愛に、やはり、山は応えてくれた。
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