第2話 幼い悪意
そうして更に7年、オレは10歳になっていた。
この7年の間でオレは自分の体がおかしいことに気付いていた。
明らかに身体能力と五感が周りと隔絶しているのだ。
理由は正直分からないが、オレはこれが魔力を代償に得たオレの
親父とお袋には既にこの身体について話していた。
その時は世にありふれた魔法よりも貴重なものを授かったと2人とも泣くほど喜んでくれた。
なんだか気恥ずかしかったが、悪い気はしなかった。
同時にこの特異な体質を知られればまず間違いなく狙われるということで誰にも話さないということを約束させられた。
たしかに王家の剣である公爵家にオレみたいな異分子がいたら狙われるのは当然かもな、と納得することにした。
ホントにオレには勿体ない両親だよ。
現在、既にオレの下には弟3人と妹2人がいた。
そして、オレは絶賛双子で生まれた弟2人にイジメられていた。
子供のイジメと言っても前世のオレの知識など比べるべくもなく今世のイジメは過激だった。
まず、平気で魔法を放ってくる。
「ギャハハハ!オラオラ!抵抗してみろよおにーさまァ!!」
そう言ってお手玉程度の火の玉をオレに向けて投げつけてくるこのクソガキは双子の兄イルス、親父譲りの真っ赤な髪色と切れ長の眼をしている。
まぁ、悪辣に笑うせいで親父のような威厳もへったくれもないが。
「ほらほら、兄さん抵抗しないとまた服が燃えちゃうよ???」
そう煽ってくるこのクソガキは双子の弟アレス、こいつは兄のイルスよりタチが悪い。
他の弟妹たちより頭が良いのか自分の手は絶対に汚さない、ちなみにコイツも見た目は親父似だ。
…性格はご覧の通りだが。
「(う〜〜ん…イルスにオレの身体のことが知れたら間違いなく大騒ぎするだろうしなぁ…)」
オレは全く痛くもない火の玉を背中で受けながら蹲っているフリをしてそんなことを考えていた。
「何をしているのあなたたち!!」
オレが考えに耽っているとそんな声が響いてきた。
「ゲッ!!姉上!!?」
「イーシャ姉さん、ご機嫌よう。」
イルスとアレスはそれぞれの反応をする。
この子はイーシャ、7年前に生まれた長女だ。
お袋譲りの薄紫で綺麗な髪をストレートに伸ばしている。
お袋似なのもあって将来間違いなく美人になるだろう。
「またノルお兄様に魔法をぶつけてたの!?」
イーシャは怒りながらイルスに詰め寄る。
「だ、だってこの魔力無し…」
「黙りなさいッ!!お兄様に対してその無礼な呼び方は改めなさいと言ったでしょう!!」
「うぐっ…」
「……」
イーシャに怒られるイルスとアレス、イルスは心底不服そうだがアレスは冷ややかな目でイーシャを見ていた。
オレはその時のアレスの反応に引っ掛かりを覚えた。
しばらくイーシャに説教をされて双子はすごすごと屋敷に戻って行った。
「フー…」
オレは息を吐きながら焼け焦げた服をパタパタとはたいていると、イーシャが眉間にシワを寄せて俺の方にも詰めてきた。
「お兄様!なぜやられっぱなしなのですか!!お兄様ならあの子たちにビシッと言えるでしょう!!?私はノルお兄様があのように虐げられるのはガマンなりません…」
イーシャは悔しさからかドレスのスカートを握って震えていた。
「はぁ…イーシャ。お前の気持ちは嬉しいけどな、オレのこのチカラは表面上知られちゃならねぇんだよ。」
オレは諭すように言いながらイーシャの綺麗な紫髪を撫でる。
「イーシャは分かりません…どうしてあの二人よりもすごいお兄様が…」
「お前がそう言ってくれるだけでオレは救われてるよ、ほら母上とお茶するんだろ。」
そう言って手を差し出すとイーシャはふくれっ面から一転花が咲いたような笑顔でオレの手を握ってきた。
オレは手を握りながらご機嫌で歩くイーシャを横目に3年前、オレのチカラがイーシャにバレることになった事件が起きた日のことを思い出していた。
イーシャも最初から今みたいにオレに懐いていたわけじゃなかった。
むしろどっちかと言うとイルスみたいな感じだったかも…
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