【完結】完璧お嬢様な幼なじみが、唯一勝てない相手は、どうやら俺らしい
柊なのは
1章
第1話 再会と告白
「奏太くん。もし、再会した時も私のことを好きであることに変わりがないのなら結婚しましょうね」
小学生4年生の頃。家族の次に誰よりも一緒にいた幼なじみが、急に両親の仕事の都合で引っ越すことになった。
小さい頃、俺と彼女は、両思いだった。あの頃は彼女のことが好きだった。けれど、今は彼女のことを好きかと問われればハッキリと好きとは言えない。
この春から俺、
小さい頃の約束なんて忘れるものだし、なかったことになる。
会いたいと言われれば久しぶりに会ってみたい。
(けど、会ってもなぁ……)
小さい頃は毎日のように会って話していたが、久しぶりとなれば何を話したらいいのかわからない。
今日から通うこの学校で再会、なんてあり得ないことを思いながら、先生らしき人に案内され、掲示されているクラス発表の紙を見に行った。
名字が田原なので、だいたい真ん中に自分の名前があるはず。だが、同じ中学の人がどのクラスになったのかも気になり、上から順番に見ていく。
1組には自分の名前がなく、2組を見ていく。
(青木……小田………し……ん?)
ある名前を見ていると後ろから誰かに肩を叩かれた。
「おはよ、奏太。同じ2組だな、よろしく」
「おぉ、光希。同じクラスなのか」
後ろを振り返るとそこには中学からの付き合いがある
光希とは部活が一緒で仲良くなった友人だ。俺とは性格が真逆でコミュニケーション能力が高くすぐに友達を作ってしまう。だが、俺といるのが1番好きらしい。
光希と同じクラスとわかり、再び、クラス発表の紙を見て、2組の光希の下に自分の名前を見つけた。
一緒のクラスなので、教室までは光希と一緒に行くことにした。
少し不安だったので、光希と同じクラスなのは安心する。この1年は、何とかやっていけそうだ。
教室に入るとすでに何人か来ており、仲良さそうに話したりしていた。
(グループがもうでき始めてる……)
座席表を確認したところ、1番後ろで、前の席が光希だった。
「いや~良かったな、奏太」
椅子に座るなり、前に座る光希がこちらを向いてニヤニヤしながら見てきた。
「何がだよ」
「俺と同じクラスになれてっ良かったなってこと。親友と別クラスなんて寂しいしな」
「寂しくない。光希がいなくたってやっていける」
「ほんとかなぁ~。あっ、そうだ」
光希は、何か思い出したのか俺の隣の席に目を向けた。その席の人はまだ来ていない。
「奏太の隣の席の人。入試で満点に近い点数を取ったらしいよ。噂によれば美人らしい」
「へぇー」
興味無さそうに反応するが、光希がそう言うのは珍しく、その美人さんを見てみたくなった。
(さっき、チラッと見たけど、隣の席の人の名前、何だっけ……)
思い出そうとすると光希が、教室の出入口の方を見た。
「あっ、噂をすれば……」
(ん?)
光希が見ていた方を見ると教室に綺麗なブロンドの髪を持ち、言葉にできない雰囲気を纏う1人の少女が入ってきた。
彼女を見て、俺はすぐにわかった。髪が短いとか、背が伸びたとか、あの頃と違うところがあるが、いつも一緒にいたからわかる。
彼女は、幼なじみであの約束を交わした
彼女は、教室の出入口付近でクラスメイトに何人かと話していたがやがてこちらに来て俺の隣の席に座った。
(隣か……)
チラッと横目で見たが、彼女は、俺のことを見ることなく前の席の人と話していた。
俺だけが覚えていて、彼女は、覚えてない。少し寂しいが、何年も会ってないんだ。覚えているはずがない。
俺のこと覚えているかと聞くこともできたが、彼女は、帰る時間まで誰かと話していたので、結局、話しかけることができなかった。
そして先生の話を聞いたりしていたらあっという間に1日は、終わった。
「奏太、一緒に帰ろ」
「あぁ……」
ロッカーで靴に履き替えていると手紙が入っていることに気付いた。
(ラブレター? なわけないか……)
手紙は半分に折られており、開いてみるとそこには丁寧な文字で『1号館の奥、1階の階段で待っています』と書かれていた。
(この文字……やっぱり忘れてなんていなかった)
「光希、先に帰ってくれ。用ができた」
「用? わかった。じゃあ、また明日な」
一緒に帰るはずだった光希と別れて、1人で手紙に書いていた場所へと向かう。
さっきまで帰る人でいっぱいだった廊下だが、奥に進むほど人がいなかった。
人がいる気配が全くしないが、本当にここでいいのだろうかと不安になってくる。
(あっ、ここで行き止まりだ)
真っ直ぐ歩いていき、右に曲がるとそこには階段があった。
1号館奥の1階の階段前に来たが、辺りを見回しても誰もいない。
すると、上から足音がした。視線を再び階段の方へ向けると、そこには、ブロンドの綺麗な髪を持つ彼女が踊り場で立ち止まってこちらを見ていた。
「5年振りの再会ですね」
「……うん、久しぶり」
「あの約束は覚えていますか?」
彼女は、俺に尋ね、ゆっくりと階段を降りていく。
「覚えてるよ」
「ふふっ、私だけが覚えているんじゃないかと思っていましたが、嬉しいです」
下で待つ俺と階段を降りていく若菜の距離は、少しずつ近くなり、後1段のところで彼女は、立ち止まり、俺のことを真っ直ぐと見た。
「田原奏太くん。私と結婚を前提にお付き合いしてくれませんか?」
あの日の約束を彼女も覚えていてくれた。まだ好きでいてくれた。それはとても嬉しかった。けれど────
「ごめん、若菜とは付き合えない。俺は……」
振って彼女の悲しい顔は見たくない。けど、今の俺は彼女とは付き合えない。
「ふふっ、そうですよね。5年も経ってしまいましたから……」
振って悲しい顔をさせてしまうと思ったが、彼女は、嬉しそうな表情をする。それはまるで断られることを最初からわかっていたようだった。
「面白いです……奏太くん、覚悟してくださいね。私は必ずあなたの心を射止めてみせますから」
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