第002話 自己紹介って難しい

 入学式が終了後、俺達は各クラスへ移動することになった。

 話しが長すぎて身体中が痛くなっていたが、ゆっくり動きだした。

 そしたら後ろから聞いたことのある声が聞こえてきた。


「霧道君、私より歩くスピード遅ーい。」

「確かにそうでござるな。霧道殿、そのままだと遅れてしまうでござるよ。」

 

余計なお世話だと思いながら言葉を返した。


「で、お前ら何でついてくるんだよ。体育館までだったはずだろうが。」

「そんなこというと友達できないよぉー。」

「そうでござる。拙者達はすでに友達でござるよ。」

 

こいつら数時間前まで仲悪そうにしてたのに、いつの間にか団結してやがる。

この2人は、だいぶ個性が強い方だが確かに友達はいたに越したことはないか。


「わかったよ。改めて、よろしくな。」

「霧道君が成長してて、むぅー感動だよ。」

「ぐすぐす、そうでござるなー。」


さっき知り合ったばっかりだろ。

そんな会話している最中に2人の男女が声を掛けてきた。


「おーい!歩ー!やっと見つけたぞ。」

「そうだよ。キリにぃー、学園まで一緒行けばよかったじゃん。」

 

相変わらず2人とも元気がありすぎるな。


「お前ら待ってたら遅刻するだろうが。朝からドタバタするのは嫌なんだよ。」


様子を見ていた王馬が今だと言わんばかりに、話に入ってきた。


「霧道殿、この2人とは知り合いでござるか。紹介してほしいでござるよ。」

 

それ見て2人は驚いて叫んだ。


「「歩 (キリにぃ) にもう友達が出来てるーー!!!」」


そんなに驚くことはないだろ、全員俺のことをなんだと思っているのか後で聞き必要があるな。


「このうるさい男女が、俺の幼馴染で双子の日朝ひあさ兄妹だ。」

「よろしくな。俺が兄の日朝 蛍ひあさ けいだ。少しでも知ってる人がいるほうが安心するし仲良くしようぜ。」

「そしてそして、私が妹の日朝 灯ひあさ あかりだよ。よろしくねー。」


この2人とは生まれた時からお隣同士で、家族と言っても差し支えない存在だ。


「ま、まぶしいすぎるでござる。」

「2人とも元気がいいねぇー。」

 

そして、王馬と大柏の紹介も軽く済ませた。

4人が楽しそう話している時に、あることに気付いた。


「2人がつけてるそのバッチ、星が2つってことはクラス・セカンドなのか?」

「そうだよー!私たち2人ともセカンドだよ!」

「って言っても、この学園じゃクラスなんて最初の指標にしかならないから俺達も日々鍛錬なんだけどな。」


やっぱりこの兄妹はクラスで差別することはないな。


「そろそろ俺達クラスの方に移動するわ。じゃあな!」

「またね!みんなー!」


こうして、嵐のように元気な兄妹がさっていった。

俺達も初日からクラスで悪目立ちしたくないので、急いでクラスの方に移動した。


◇◆◇


「全員教室に集まったようだな。それでホームルームを始めよう。」


今日は大体授業らしい授業はないだろうから楽だな。


「今日は、初日ということもあり自己紹介から始めてもらおうと思う。」


忘れてた。クラス初日の罠である自己紹介。

笑いを狙っていくとスベって黒歴史になるし、無難にいこうとすると短くなってしまい話辛い印象を持たれてしまうジレンマだ。


「いきなり、生徒同士で自己紹介と言っても困るだろうからな。まずは、担任である私からさせてもらおう。

私の名前は、倉谷 響くらたに ひびきだ。歳は31歳で未婚、趣味は酒と映画観賞。男子生徒からの結婚の申し出はいつでもウェルカムだが卒業するまで待つように。以上だ。」


まずい、これは先生が空気をつくろうとボケた結果、地獄のようになるパターンか。

本気だったとしたら、なお恐ろしいぞ。


「それでは、まずは私を哀れむような目で見ている霧道。お前から自己紹介をしろ。」


そんなことを考えていると先生に捕まってしまった。50音順だと思い油断していたので何も考えていなかった。

とりあえず、指名されてので席を立つ。


「えー、霧道 歩です。趣味は、DIYです。」


やばい、もう何も喋ることないぞ。


「えーと、入試は最下位だったので戦闘訓練の際はお手柔らかにしてもらえると助かります。よろしくお願いします。」


自己紹介を終わるとまばらに拍手が返ってきた。

どうやら真剣聴いてる生徒はいないらしく安心した。


王馬、悲しそうな目でこっちを見るな。

それと大柏、クスクス笑っているの分かってるぞ。


「それでは、50音順に自己紹介を始めようか。」


俺のは、ただの八つ当たりかよ。


「私、秋鹿 由美あきしか ゆみです。中学の部活は弓道部だったのでこの学園でもそれを続けたいと思っています。話すことが好きなので、このクラスでも友達をたくさん作りたいです。よろしくお願いします。」


お手本のような挨拶だからといって俺の時より拍手が多いのは何故だよ。

気にしてないけどな。ないけどな。


これきっかけに自己紹介は、盛り上がりながら順調に進んでいった。


京極 瞬きょうごく しゅん。順位はこのクラスでトップだ。正直言って、クラス・フォースだからと言って他のクラスに舐められるのは気に食わねー。だから、俺はこのクラスでも最強になれることを証明したいと思うからよろしく。」

 

その一言がクラスの空気を変えた。


京極の言う通り、俺達フォースは最弱のクラスとして卒業まで後ろ指を刺されるだろう。それでも、俺達は特防になるために強くなるしかない。それをしっかり思い出した。


俺以外は失敗することなく自己紹介を終えた。個性豊かなクラスメイトとこれから5年間同じクラスで過ごすことになる。


「それでは、明日の日程について説明する。明日は、いきなりだがクラス内で試合を行ってもらう。順位の近いもの同士で1対1をやってもらう。

霧道や京極は自己紹介で入学試験の順位について触れていたが、同じクラスになったからには実力を知るいい機会だ。しっかりと取り組むように。尚、他のクラスも行うため、登校は午後からになるので間違いのないように。」


よっしゃー。明日は午後からの登校かと思ったが、いきなり対人戦か。

面倒だし、それなりにこなせればいいか。

それにしても、王馬や大柏の能力さえしらないし、クラス最強の京極の戦い方も気になる。

これは、全試合一瞬たりとも目が離せない経験になるな。


いろいろあった1日がやっと終わりに向かっていく。

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