第15話「俺プティ1」
- - - - -
ーー誰だ?
うるさい。
誰?
「ニラァジュです。」
ーーあぁ!忘れてた。
確か、絵を教える約束をしてた!
「今日からいいですか?」
ーーそんなご機嫌⁈
扉を開けると溢れんばかりの笑顔で待ってた。
どんな格好する?
「いつも通りでいいですよ。」
少し待ってて。
ーーいつも通り…?
上着を羽織って、再び扉を開ける。
ニラァジュは、鼻唄を歌いながら階段を下りて行く。
ーーそんなに楽しみにしてたんだ?
部屋に入るなり、張り切り出す。
「上着を脱いで、ブラウスラァで立っててください。
窓から斜めにこっちを向いて。
そうです。そう!
しばらく、動かないで下さいね。」
ーー木炭で紙に描く音が走る。
_φ _φ 、_φ…。
「もう、1枚描かせて下さい。
次は、腕を組んで、少し横を向いて。
あっ良いですね!そのまま。」
ーーささっさっと音が響く。
…何もかかってないイーゼル。
これから描きかけの自分が描かれた絵がかかるのか。
なんだ?
このざわざわした感じ。
「次は座りましょうか!そこの椅子を使って下さい。
脚を組んで…良いですね!良い光りが入ってきてます。」
ーーすごい楽しんでる…。
真剣な顔。
描くことに集中してる。
描く音が早いなっ‼︎
木炭の走る音が早い。
「もう1枚描くので、次は背もたれに身体を預けて下さい。身体を横向きに。
そう、そうです。良いですね!!」
ーー部屋はちゃんと片付けられてる。
本は本棚に。
洋服はかけられてる。
絵の道具は1つの所にまとめてある。
「描けました。モアさん、評価お願いします!」
あぁ。
ーーうん。
構図はいい。
うぅん。
ここ、もうちょっと追って欲しいなぁ。
あぁ、もうちょっと差があってもいいなぁ。
まぁ、全体的に悪くない。
ぅーん?描き込んだらよくなっていくはず。
たぶん時間がかからない様に抑えて描いてたし…。
暗い所と明るい所をもっとはっきりと。質感をもっと表現して。…後は、描き込みかな。描き込んだらよくなると思う。
「ありがとうございます!」
ーー悩みが出るのは、この先らしい。
「あの…もう何枚か書かせて欲しいんですけど…後、2日ください」
ーーえ?
何するの?…しかも、2日も?
いいよ。
ーーもうたくさん描いたでしょ?
まだ描く?
「ぇえと、ほ、本はどこまで進みましたか?」
んん…青い美女が終わって、声からして美女に声をかけられたとこ。
「ここまで読んでどうですか?」
まだ、わからないかな。
「そうですか…。」
ーー何⁈
何⁇
滲ったれた顔して?
また明日夕刻に来るから。
「はい!いろいろ準備しておきますね!」
ーーあ。
いつもの顔に戻った。
準備?
思ったより、早く終わった…。
ショコラでも飲みに行くか…。
薄暗い螺旋階段を降りて外へ
渋い赤の空、今日は雲が多い。
酔っ払いに絡まれる。
うざったい…。
「ん''?」
ーーあ''ぁ''?
…最悪。
この時間は、こいつがいるのか…帰りたい。
「ヴォン・ソワァル。モア。」
ソワ。コメット。
「モア…早く…終わったんだな。」
あ''ぁ。
ーー知ってたら、絶対来なかった…ぅ''わー。
ショコラが台無し。
隣り側からごくっとを呑み干す音がした。
「ソレイュ!オレ、もう帰るョ!
それと、しばらく来ないからッ!ァビエントッ!!!」
がしゃんっと貨幣を置いて出て行った。
「あっ!コメット!!ぁ…ァビエントぉ…。」
ーー帰った…!急いでショコラを飲む事にはならなくて済む‼︎
しばらく来ないって、これで時間余っても安心。
「…。今日って、夕刻からだろ?
こんなもんなのか?」
1日目だから
「そんなもんなのか?」
さぁ、相手はニラァジュだから。
ーー明日、ほんと何するんだろう⁇
「ニラァジュとは、仲良くしているのか?」
うぅん?悪くはないと思うけど?
ーーニラァジュはいつもにこにこしてる。
でも、あの滲ったれた顔はなんだったんだろう?
「ニラァジュは良い奴なんだけどさぁ。昔から他の奴と違うから扱いが難しくて…。」
へぇ。
ーーそんな風には感じなかったな。
初めから懐かれてる感じだったし。
「あ、俺の方が6つ上な。ほっけなくて、何度も話しかけて友達になったんだ!絵を描いてくれるくらい仲良くなるの大変でよぉ。」
ふぅん。
ーーニラァジュの嫌そうな顔が浮かぶ。
ソレイュ、昔からしつこい奴だったんだ…。
6つ上?まぁいいや。
「あ〜。今日もヒマだな〜。日付も変わるし、閉めようかな〜。」
ーー帰っても暇だなぁ。
手伝おうか?
「……。
いいのか?」
慣れてるし、いいよ。
ーーなんか間があった…何⁇
どうせ時間潰してるだけ…どうでもいい。
机を拭いて、椅子を上げてく。
「あ、サンチェから荷物預ってるぞ!」
あぁ、ありがとう。
ーーやっと布が貼れる。
帰ったらやろう。
「あ、落とし物だ。
えぇと、ココ…誰が座ってたかなぁ?」
ーーいちいち覚えてるの⁈
「あぁ!思い出せねぇ!」
ーー思い出さなくて、いいんじゃない?
落とした奴が悪い。
最後に店先の机と椅子を中へ。
木の扉に鍵をかける。
「手伝ってくれてありがとな、モア!」
あぁ。
細い路地を通って裏へ。
深い緑色の扉を開けて螺旋階段へ。
螺旋階段を上がっていく。
「先に上がって預かってるもんとってくるから、部屋の前で待ってろよ!!」
わかった。
ーーそんな急ぐ?
ソレイュがすごい勢いで駆け上がっていくのが、音でわかる。
ーーん?
自分の階だけ暗い。
今度は下りてくるのが聞こえる。
ーー「急げ」とは言ってない。
「はい!モア!お待たせ〜ッ!!」
ありがとう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます