第14話出発

あの取材から一ヶ月が経ち、内藤が我々のところを訪ねてきた。

我々は撮影の機材を準備し、ディレクター·椿つばき、アシスタント·道草みちくさ石渡いしわたり、カメラマン·三吉みよし澤田さわだが取材のため現地へと向かった。椿と道草は内藤の乗ってきた車に乗車し、後の三人は機材を載せたワゴン車に乗って追いかける。

「こちら、運転している伊口さん。儀式の手伝いをしているんだ。」

「はじめまして、伊口です。」

挨拶をした椿は、三週間前に起きた例の交通事故について内藤に訊ねた。

「そういえば、前に来た松田さん、亡くなったんだってね…」

「松田…?だれだそれ?」

内藤の返答は明らかに変だ。

「覚えてないのか?一緒に来たじゃないか?」

「あぁ、初めて本名聞いたからおどろいたよ。」

「は?名前を知らなかったのか?」

「えぇ、そういうルールなので…。おれみたいに本名で呼ぶのも、偽名で呼ぶのも自由だけど、秘匿性のために自己紹介と儀式の時以外は会話を禁止しているんです。」

ということは今この車を運転しているのが伊口さんであるとも言い切れない…。

そこまでして秘匿性を徹底的する理由とは一体なんなのだろうか…?

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