夜の月に煌めく桜たち
暗霊春宵
第一章 2年生〜3年生一学期編
第一話 残桜学園の始まり
ーここは残桜学園高等学校。この高校では日常的に何かが起きると言われている。そんな学園での、お笑いのような、恋愛混じりのような、なんかよくわからない物語。
夜月家-リビング
「…今日も学校か。めんどくせぇなぁ…。」
「そんなこと言ってたら、留年しちゃうわよ?」
「うるせえよ
「お兄ちゃんひどい!」
「はぁ……行くか。」
「…いってらっしゃい。」
「お前も学校あるだろ。」
残桜学園-2B教室
今日も教室は朝から騒がしい。ある人は友達とスマホゲームをし、ある人はアニメの話をし、またある人は静かに読書をしている。
どうでもいいが、この学校の奴らは謎に髪色と目の色がゴチャゴチャしてる。赤髪で黄色い目をしている奴もいれば、青髪でオッドアイのやつもいる。そのせいで集会の時は目がチカチカして本当に嫌になる。まぁ、俺も例に漏れず紫髪で赤い目をしているんだが…。ちなみに学校側はそういう色になってることは特に制限していないのだが、髪型だけはとんでもなく厳しい。そのせいで何度締め上げられたことか。
「よお夜月。今日も化学の勉強してんのかい?」
「当たり前だろ。」
「良くやるよなぁホント。俺は絶対やだね。」
「テストで赤点取っても知らんぞ。」
「冷てぇ奴だな相変わらずよぉ。」
「…」
今のは
とまぁ、適当に時間を過ごしているとチャイムが鳴る。
「はい皆さん席についてー。
さて…先生も来たし、訳のわからん1日がまた始まるな…。
1限-地理総合
「この半島の地名、誰かわかる人はいるか?」
しかし誰も手をあげない。そりゃそうだ。全員社会科が嫌いだからな。
「アナトリア半島。」
「おお、正解だ夜月くん。」
この授業でまともに喋ってるやつは先生と俺ぐらいしかいない。クラスのやつらは小声で教えあったりしているが、全く関係ない。どうせテスト前に全部教えることになるんだからな。
「そんでこのアナトリア半島に位置する国家が…」
「オスマン帝国!!」
「は?」
今のは
「バカそれは昔の国よ。」
「あれ?」
「うんオスマン帝国は昔の国だね。」
「ええ?でも教科書にはオスマン帝国って…」
「それは歴史の教科書よ。」
「あっ。」
黒谷の隣にいるのは
そんなこんなで大体静かな1時間目が終わった。
-休憩時間
休憩時間になると教室はまた騒ぎ出す。気持ちのオンオフが激しいやつらだな、本当に。
「次の授業何ー?」
「現代文ー!」
「マジー!?やったー!」
現代文の授業の時は毎回うるさい。先生がそういうタイプだからな。にしても、授業の態度に差があり過ぎる。どうなってんだコイツら。
「次は現文か…」
「夜月、アンタお金持ってる?」
「は?」
「飲み物買いたいんだけど、お金が足りなくてさ…」
「貸さねえぞ。」
「そこを何とか!」
「……ちゃんと返せよ?」
「ありがとう!」
今のは
2限-現代文
「じゃ、授業始めて行きまーす。」
「はーい。」
「すみません遅れましたぁ!!」
「?」
「あれ?」
「どうしたんだい
「あ、遅刻してきたんで。」
「あぁ。」
あいつは
ちなみに西蔵は中国史が好きらしく、それで髪型を清王朝の時に流行っていた(?)辮髪にしていた事もあったのだが、思いっきり学年主任と生徒指導の先生に捕まって強制的に刈られたらしい。ただその時の2人の先生の行方は今もわからない。噂によると牢屋にぶち込まれたとか聞くが、西蔵に聞くと全然違うと言っている。真実はアイツしか知らなさそうだ。
そうして(?)時間が過ぎていき、遂に昼食の時間。俺はいつも通り解放されている屋上で飯を食う。理由は単純、一人になれるからだ。
…まぁ、たまにアイツが来るんだが。
「今日は来ないな。一人で集中して動画を見れるし、ギターの練習もできる。」
飯を食い終わってギターの練習も少し済ませた後、チャイムがなる前に教室へ戻る。戻ってきたらなんか騒がしかったので西蔵に聞いてみたら、どうやら先生の弁当が盗まれたらしく、それで色々あったらしい。結局弁当は盗まれておらず、先生に冤罪をかけられた生徒たちが抗議していた。やっぱり西蔵が少し早くくると事件が起きる。まぁそんなこともありながら、午後の授業が始まる。五時間目は体育の授業。今日はサッカーをやるらしい。
校庭-朝礼台の前
「んじゃ好きなやつとペアでパス練習なー。」
『はーい』
…ペア練習はめんどくさい。一人でやらせてくれ。
「夜月さん、私とやりましょ!」
「…あぁ。」
必ずと言っていいほど俺はコイツ(
「んじゃ男子対女子で試合するぞー」
こういうのは苦手だ。俺は特に誰とも話さない。
「っしゃあ頑張ろうな夜月!」
「…」
まぁ、西蔵ならいいか。それなりに仲良いし。
「…頑張ろうぜ。」
「行くぞー!」
俺は基本動かん。動いたところで役に立たねえからな…と思っていても、ボールは俺の元にやってくる。
「夜月ー!」
「こっちパス回してくれ!」
「うるせえな、今やるから待ってろ。」
とりあえず適当に攻めてきた女子の間を通り抜けてパスを回す。
「うわっ、マジ?」
「オラよ。」
「ナイス!」
「…」
ボールを渡したら速攻で後ろに戻る。
「夜月、ゴールの近くに来てくれ!」
…戻らせろよ。
「…」
「へい夜月!パス!」
「は?」
「行け!」
「チッ…」
舌打ちをしながら適当にシュートを入れる。
「よっしゃあ夜月ナイス!!」
「…おう。」
やっと戻れる…。
「あ、夜月。相手の方行っててくれ。」
「…」
だから戻らせろよ…。だがあんまり言うとめんどくせぇことになるし、それだったら言わん。結局俺は後ろに戻れないまま試合が終わった。
「んじゃあ片付け早く終わらせろよー。」
「俺三角コーン片付けるー。」
「は?ずるいぞお前だけ!」
「あっちにもあるんだからそれやりゃいいだろ。」
「うちらゴール片付けとくねー。」
俺はとりあえずゴールの重しに使ってたタイヤをかたしにいく。一番人と関わらずに済むからな。
「おい夜月代われよー!」
「…」
「無視すんなよ!」
「おーいこっち手伝ってくれーい。」
さて…とりあえず片付けたし歩いて戻るか。
「夜月さん!」
…またか。
「何だ?」
「今日もペア組んでくれてありがとうございました!」
「…」
「次も組んでもらって良いですか?」
「勝手にしろ。」
「はい!」
そういうと彼女は戻って行く。なんで俺と絡むんだか…。ま、そんな感じで午後の授業も適当にこなして、HRが終わると部活の時間がくる。部活は最高の時間だ。俺が唯一元気になる時間と言っても過言ではない。
視聴覚室-ドア付近
「おっす夜月。」
「よお、
「今日も頑張ろうね。」
「おう。」
ベースの
「文化祭でやる曲、何にする?」
「夏奈斗が歌えて俺らでもできるやつにしないとだよな。」
「今有名なやつにするか?」
「それなら、
「あ、それいいな夜月。めっちゃ人気のやつじゃん。晴翔はどうだ?」
「僕はなんでもいいよ。」
「じゃ、夏奈斗が来たら教えてやるか。」
「おう。」
そうして曲の練習を進める。
「おいーっす!」
「夏奈斗!」
「よお憂太!今日も頑張ろうぜ!」
「おう!」
「おっす。」
「お、夜月!お前は今日も元気か?」
「あぁ…元気だが離れろ、人に近付かれると元気が消える。」
「ハッハッハッ!」
「相変わらず声でけえな。」
「そうか?」
「そんな気がするが。」
「そういや今何やってるんだ?」
「文化祭でやる曲の練習だ。」
「何の曲やるんだ?」
「リングリーザのラヴェルタ。」
「おー!めっちゃ人気のやつやん!俺めっちゃ好きだぜ!」
「歌えるか?」
「もちろん歌えるぜ!」
「ナイス」
「夜月の選曲すげえいいじゃん!」
「そうか?適当に選んだつもりだったが。」
そうして話して、また練習をする。
「あ、ねぇ夜月。」
「ん?どうした
「うちら文化祭で
「え?別にいいが、リパインツだったら
「うーん…でも
「あー…何となくわかるわ…」
「お願いできる?」
「まぁ、頑張ってみるわ。」
「ありがとう!」
「お礼はなんかあるのか?」
「無いって言ったら?」
「恨むぞ」
「怖ぁ」
「冗談だ」
「んじゃ、うちの家来る?」
「いいのか?なら今度の土曜日にでも行くわ。」
「はーい。」
そうやって同じ部活のやつらと話したり練習をしたりしていると、下校の時間になった。
「ギター持って帰るのか、夜月?」
「あぁ、家でも練習しないとだしな。」
「そうか。」
「お前は置いてくんだろ?」
「あぁ。流石に自転車だとキツいからな。」
「俺は問題ねえし、優太も体力あるんだから問題ないと思うんだけどな。」
「帰り道に坂が多くてな…。」
「あーね。」
下駄箱
「じゃあ、また明日な。」
「おう。」
部活のやつらとは別れて、一人になる。
「ジュースでも買うかな。」
ここの自販機は本当に安い。学校の自販機って大体そうなのかって思いたくなるぐらい安い。
「あっ、メロンソーダ売ってねえ…。しょうがねえ、カルピスにするか。」
メロンソーダは必ず飲みたいのだが、今日は売り切れのようだ。
駐輪場-夜月の自転車
「さて…今日は何の曲を聴きながら帰るかな…っと。」
「あ、夜月さん!」
「ん…夢那。何だ?」
「あの、この後予定って何かありますか?」
「別にないが。」
「じゃあ、カフェに行きません?」
「カフェ?」
「最近駅前にできたカフェです。」
「…まぁ、暇だし行くわ。」
「ありがとうございます!」
自分で言うのもなんだが、部活とか以外で人の願いを聞くなんて結構珍しい方だ。大抵はめんどくせぇからな。ま、今回はどうせ帰っても暇だったし、いいか。
-スターライクカフェ
「ここか。」
「はい。」
「いらっしゃいませ…お好きな席へどうぞ。」
「カウンターでいいか。」
「お二人さん、カップルですか?カップルでしたら割引できますが…」
「へっ?」
「おう、カップルだ。」
「かしこまりました…では、25%割引させていただきます。」
実際は別に付き合ってなどいない。でも、割引できるってんならさせてもらう。
「えっと…夜月さん…?」
「割引できるんだから、いいだろ。」
夢那の耳元でそう言うと、何故か夢那は赤面した。
「あ…はい…///」
そうして何事もなくカフェで時間を過ごした俺たちは、帰路についた。そういえば、夢那のことは『ミリカ』って呼んでくれると嬉しいと本人から言われた。どこからその名前が出てきたのかはわからんが、まぁいいか。
「やっぱいつも聴いてるこれで良いか。」
簡単に言えば軍歌を聴いている。歴史系の曲は意外といいのが多いんだな。そして小声で歌いながら家に帰る。家には彩桜春がいるから少し嫌ではある。
夜月家-玄関
「ただいまー…。」
「おかえりお兄ちゃん!ご飯できてるよ。」
「あざ。」
適当に聞き流して終わり。その後夕飯を食って風呂入って少しだけ作業をして…。そんなことやって、また訳のわからん1日が終わった。
「…まぁ、それなりに楽しめてるからいいか。」
そう呟いて、俺は眠りについた。
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