第106話 今のジェフィリオンの状態は?

「それではこれからの話し合いをしよう。お前は奴の、ジェフィリオンの今の様子を、しっかりと把握できているか?」


『しっかりと、と言われるとそこまではな。奴に隠れ奴を監視するのは、やはり奴隷契約をしていては難しいのだ。少々なら隠れて行動することはできるが、その後の反動がな。動けなくなってしまっては仕方がない』


「そうか。ならいつ奴がグレンヴィルの力を奪いにくるか、流石に分からないな。すぐの可能性もあれば、まだ余裕がある可能性も」


『おい、我は『しっかりと』と言ったはずだぞ。ここへ来る前にチラッと奴の状況を見てきた。あれくらいの時間であれば、我は罰を受けんからな。だから今、我はここへ来られている。子供達に会いながら、これからの計画を立てるために』


「はぁ、ならば最初からはっきりと言わないか。それで奴の状況は?」


『あれはまだまだ力の回復に時間がかかる。おそらく後2日は無理だろう』


「それほどか?」


『お前も知っている通り、奴の力は我々がまったく知らないものだ。その力のせいなのか、それとも何か他に問題があるのかは分からない。だが、ここへ戻ってきてから、回復を始めた奴の力は、半分も戻っていない』


「半分も。それは私達にとっては良い情報だが。やはり奴の使っている力が気になるな。もしここから無事に逃げられたとしても、その後またおそわれてしまっては。対策しなけければ同じ事の繰り返しになってしまう」


『お前の言う通りだ。そして奴も、よっぽどの馬鹿でない限り、対策をとってくるだろう』


「が、それでも先ずは逃げ出さなければ、その対策どころか。奴の目的が何かは分かっていないが、その目的が達成されてしまう可能性も。お前は奴の目的を知っているか?」


『いや、それについては何も。我は奴隷契約をしてから、お前達の国を襲い子供を攫えとしか言われていないからな。それに奴はおそらく、本来の目的を仲間にも言っていないだろう。どうにも奴の行動と言動がおかしく感じるのだ』


「……そうか。本来の目的が、『海の征服』だけと言うのなら、話しは早いのだが」


 一緒に逃げると決まって、早速ユースタスさんと親シードラゴンが話し合いを始めた。今のところジェフィリオンのことは心配はないようで、俺は少しホッとした。せっかく一緒に逃げると決まったのに、すぐにジェフィリオンが俺の力を奪いに来てしまったら。

 

 今の俺は赤ん坊で、ハイハイしかできず殆ど自由に動けないが。もし力を奪われてしまったら。その後の俺の体の状態がどうなるか分からないし、ぐったりして、完璧に動けなくなったら?

 そしてそれが、ユースタスさんの回復や、薬草でも回復することができなかったら? 逃げる時にどれだけみんなに迷惑をかける事になるか。


 意識がハッキリの俺を、ユースタスさんが連れて逃げるのと、ぐったりの俺を連れて逃げるのと。どちらが良いと言えば、もちろん一応は意識のハッキリしている俺の方が楽だろう。


 それにしても、さっきからユースタスさんの達が話しているジェフィリオンの力だけど、一体どんな力なんだろうな? ユースタスさん達にも分からないみたいだし。かなりの脅威みたいだ。


 脅威。それはそうだろう。ユースタスさん達が分からないんだぞ。まったくなんだってそんな面倒な力を、ジェフィリオンは使ってくれたのか。

 そしてその力をしっかりと把握しないと、今ここから逃げても、また同じ事の繰り返しになる可能性があるなんて。


 ただ、今回だけは、奴がわけな分からない力を使ってくれて良かったのか? 何せその力のせいなのか、奴の回復が遅れて、今のところ俺の所に来られないでいるんだから。


「仕方がない、やはり奴の力が気になるが、他の面倒事から解決していかなければ。まず最初に、お前の奴隷契約についてだ。お前を奴隷契約するくらいだからな。普通の奴隷契約とは違うのだろう?」


『ああ。我も知らないものだ。あのわけな分からん力でされた、見た事のない奴隷契約だな』


「はぁ、それも厄介だな。普通のと言っても、奴隷契約にも色々あるが。その普通の奴隷契約ならば、私は殆ど契約破棄できるのだが」


『殆どとは?』


「今世界でいられている奴隷契約の3つを除いて、全て契約破棄する事ができる」


『それはどれくらいなのだ? 我が知っている奴隷契約は50ほどだが』


「お前の知っているものと私のはほぼ一緒だろうと思うが。私が知っているのは55。そのうち52を破棄できる。契約をした本人ではなくともな」


『ふん。奴の力もおかしいが、お前も奴とは別の意味でおかしいな』


 奴隷契約、本当は詳しく聞きたかったけど、小説なんかと同じなら、良くないものだからな。モコモコ達や小さいフルフル、そして双子シードラゴンにその内容を聞かせたくなかったから聞かなかった。


 だけどもし俺の小説での知識と同じ奴隷契約なら、奴隷契約の破棄ってとっても大変なんじゃ? そりゃあ簡単に破棄出来るものもあるけれど、でも強力な物なら、それだけ破棄も大変で、下手をしたら危険を犯して自分が再起不能になったり、命を落とす事も。


 今、親シードラゴンはユースタスさんのことを、ジェフィリオンもおかしいが、ユースタスさんもおかしいって。と、いうことは、やっぱり奴隷契約の破棄は難しくて、それを3つ以外、全て破棄できるユースタスさん。ユースタスさん、一体どれだけの力の持ち主なんだよ。


「もし私がお前の奴隷契約を破棄した場合、いや、破棄しようとした場合、破棄できるかできないかは別として、やはり奴に気付かれるか?」


『ああ。奴はいつも我を見張っているからな』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る