第105話 私の計画通りに動けない馬鹿ども(***視点)

『まだ連絡はないのか?』


『ああ』


『前回の連絡からどれくらい経った?』


『3日程か』


『これは子供を攫うの事には成功したが、自分の力を使い過ぎ、連絡が出来ないでいるのか』


『それともその逆で、返り討ちになったかね』


『奴がそう簡単のやられるとでも?』


『分からないわよ? だってあの人が言っていた事が本当なら、子供の魔力にやられるって事だって考えられるわ。子供とは言え黒目に黒髪。こう言った人間達の魔力量、あなた達だってそれがどんなに脅威か、あなた達だって分かっているでしょう?』


『そうだぞ。私達が自ら、その子供を管理していれば問題はないだろうが。もし魔力の暴走を起こしていれば、奴とて無事では済まないだろう』


『どちらにしろ確認はしなければ。その後でこれからの事について話し合おう』


 俺はそっとその場を離れた。まったくこの世界の者達は使えない。俺がこれだけ力を貸してやっているというのに。奴の力まで抑えてまで。

 これだけ奴の邪魔をしてやれば、今回の事、もっと簡単に世界に争いが広がると思っていたが。


 そろそろ本当に気をつけなければいけなくなってきた。奴も普段は馬鹿なことばかりしているが。本来の力は他の者達よりかは優れている。

 その証拠に、まだまだ俺が張った罠は残っているものの、仕掛けた罠は当初の半分にまで解除されてしまった。ここからは更にそれの解決が早くなるはずだ。


 そしてそれに並行して、世界が今どういう状況か、詳しい確認も行われるだろう。今までは全力で罠の解除にあたっていたものが、そこまで罠に力を入れなくても良くなるからな。その分細かく世界のことを見てくるはず。


 そしてその時、奴が想定していなかったことが世界で起こっていれば……。


 俺は奴の本気を、今までに1度も見たことがない。どんなことが起こったとしても、全力を出さずに解決できてしまうほどの力持っているからだ。しかしその力があるのに、どうにも奴にはミスが多すぎて。俺にどれだけの迷惑がかかったか。


 まったく、俺の力はその辺の者達よりも優れているというのに。これまで奴らの俺に対する態度と言ったら。文句を言われる筋合いもないし、今回のような酷い扱いを受ける必要も、本来ならなくても良かったんだ。

 俺は俺の仕事をしっかりとしている。それなのに、奴のミスを俺のせいにされ、皆から不当な扱いをされ、これまでどれだけそれに耐えてきたか……。


 今回にこと、原因をあいつだと思わせることが出来れば、奴は皆から制裁を受けるはずなのだ。そうなればこちらの世界にも新しい時の流れが。

 そしてそれを解決した者が俺だと知れば、その時きっと、今回の事件を解決した者として、俺は更に上の位へと上がることができるはず。


 しかし、今回のこの世界で争いごとを止める事ができなかったら? その時はこの世界がどうなろうと、俺には関係ない。

 争いが世界を埋め尽くし、人々に恐怖と悲しみが広がろうがと、そのまま世界が滅ぼうとな。こんな世界1つなくなった所で、どうでも良い事だ。

 

 もしそうなれば、別の世界で方法を変え、今度こそ奴の地位を奪ってやる。俺はそれができる男だからな。

 失敗など、今回はこの世界の者達が役に立たなかっただけのこと。もっとしっかりとした者達がいる世界ならば、今よりもスムーズの事が進められるかもしれない。


 が、失敗などあり得ない。方法を変え次の世界で奴の地位を奪うと言ったが。今回のこの世界での出来事は、俺が引き起こした事だからだ。


 ここまでくるのにどれだけの時間がかかったか。そしてどれだけ奴らに気付かれずに事を進めるのが大変だったか。俺でなければ今回のことを、実行することはできなかっただろう。それだけの力が俺にはある。


 それなのにここに来て、問題が起き始めた。私の計画した通りに、この世界の者達が動かないのだ。本当ならかなり計画を進められていたはずなのに。あの海の国を襲った所までは問題なく計画は進んでいたのにだ。


 俺の素晴らしい力を貸してやっているというのに。何故俺の力に皆応えないんだ。いや、私の力が素晴らしすぎて、他がついて来れないのか。きっとそうだろう。

 まったく、俺はどれだけ素晴らしい力を持っているのか。やはりこの素晴らしい力を全て、俺がいるべき場所で発揮するためにも、私は上へと上がらなければ。


 しかし、それにしても……。あの人間の子供。あれは俺にとっても計算外だった。奴がこの世界へ子供を転生させる前に、あの子供に授けた力の上限を確認しておいたが。


 本来なら力の上限は生涯変わることなく、努力したとしても限界を超える力を身につけることはできない。

 もちろん努力がまったく関係ないというわけではなく、最初は皆、力は最低限のため、そこから努力をして、自分の限界まで力を上げる事ができる。

 私にように最初から素晴らしい力を持っていれば別だが。努力しなければ、その上限まで達することはできず、ただの力の持ち腐れになってしまうのだ。


 だが、生き物とは無情な者達が多く。素晴らしい力を持っていても、俺に言わせれば殆どの者が努力を怠って、授けられた素晴らしい力を発揮する事ができずにいて。

 そう、本来ならあの下等生物達は努力しなければ何にもできない、それなのに要求ばかりしてくる、馬鹿な生き物なのだ。しかしあの子供は……。

 

 俺に気付かれず、何故あれ程までに力が成長した? 予定よりも2倍の速さで奴の力は成長している。今子供があれだけピンピンしているのが証拠だ。

 本来なら今いる場所では、負の気配により、もう少し具合が悪くなっているはずで。家族になった者達の加護や、エルフの力を持ってしてもだ。


 しかし今も現在進行形で、あの子供の力の源とでもいうのか。それがかなりのスピードで成長し、子供自身を守っている。これは予定にはなかった事だ。

 そのせいであの者は子供から力を奪う事が、今だに出来ておらず。俺の計画に遅れと予定外のことが起きてしまっている。あの子供を奴に気付かれずにどうにかしなければ……。


 あのふざけた神を、引き摺り下ろすために。

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