第100話 ここでまさかのお尻振りダンス!?

 モコモコ達の話に、は? と思った俺。ユースタスさんは俺にすぐに伝えてくれていたんだけど、俺の反応がいまいちだったからかもう1度、モコモコ達が話していた事を伝えてくれて。


 今話した内容は。そうだ、お父さんが人間は怖くないって、よく分かるように、お尻振りダンスをしようよ!

 そうだね、せっかく教えてもらったんだもん。お尻振りダンスをすれば、きっとお父さん分かってくれるよ。ねぇねぇ、みんなはどう思う?


 うん! それが良いかも!! 怖くないって、攻撃しないって分かれば、お兄ちゃん達のお父さんも、僕達をもう攻撃しなくなるかも。

 お兄ちゃん達のお父さん、僕達のお家壊したんだよ! それで海のお水がざばぁぁぁッ!! って入って来ちゃって。グレンヴィル流されちゃったんだよ。

 だかもしボク達が怖くないって分かったら、お家壊してごめんなさいもしてくれるかも。ごめんなさいはとっても大切だって、ボクのお父さんとお母さん、いつも言ってた。


 ええ!? お父さん、グレンヴィル達のお家壊したの!? いけないんだ!! お母さん物を壊しちゃダメっていつもお父さんに言ってるでしょう!

 そうだよ、壊しちゃいけないんだ!! やっぱりお尻振りダンスをして、怖くないって分かってもらって、ごめんなさいしてもらわなくちゃ!


 なんて話しを展開していたらしい。ああ、それで親シードラゴンは今、あんな反応をしているのか。怒るに怒れない、文句を言いたいのに言えないって感じの、それから困っているような。まぁ、何とも言えない表情をしていた。


 と、親シードラゴンのことは今はおいておいて、問題は俺の方だよ。確かに俺達がシードラゴン達にとって脅威というか問題なのは分かる。だってそれは今現在進行中で起こっているんだから。


 海に生きる者のジェフィリオンが、子供を人質に奴隷契約までして、ずっと精神的にも肉体的にも、苦しみを与えているんだから。

 それに今の事だけじゃなくて、親シードラゴンは長い間生きてきた中で、色々あったんだろう。だから自分達の仲間以外は敵だと判断して、他種族の友達を作るなって。もしかしたらその友達に何かされるかもしれないからな。


 でもこの広い、いや、どれくらい広いかは分からないけれど。まぁ、かなり広いだろうこの世界には。親シードラゴンが思っているような、最悪な種族ばかりじゃない、良い人もいれば悪い人もいて。きっと良い人の方が多いいはずなんだ。


 だって俺の周りには、そんな人達ばっかりだから。父さんも母さんも姉さんも、アトウットさん達も、他の使用人さんやメイドさん達。俺を助けてくれた海に生きるすべての人達。


 本当のたくさんの人達が、俺にとっても親切にしてくれて。そして新しい家族になってくれたんだ。そんな人達がわざわざシードラゴン達と敵対なんて考えられない。

 勿論今までみたいに襲われれば、大切な人達を守るために、街を守るために戦うだろうけど。わざわざ危険を冒すことはしないだろう。


 それにもし、双子シードラゴンに会えば。親シードラゴンと話し合いの場が持たれて、お互いの誤解が解けてば、お互い平和に暮らせて、双子シードラゴン達はたくさん友達ができるかもそれない。


 だから、今までにどんなことがあったか分からないけれど、そのことを親シードラゴンが少しでも知ってもらえたら。ここから逃げるために手を組んで、無事にみんなに逃げられられたら。


 が。が、だ。そのことを分かってもらうために、お尻振りダンスは必要なのか? もう少し話し合いで、どうにかできないのか? 

 いや、まぁ、親シードラゴンの感じから、話し合いだとかなりの時間がかかって。それならさっさと避難についても話しをした方が良いかもしれないけどさ。


 何でみんな俺にお尻振りダンスをさせたがるんだよ。そうだ! お尻振りダンスじゃなくて、他の応援ダンスなんかどうだ? 

 ほら手足をバラバラに動かしたり、同じ方の手足を動かしたり。スキップ風やでんぐり返り風。色々みんなやってるじゃないか。

 

 どこまでできるか分からないけど、頑張るからそっちのダンスにしよう! 俺はモコモコ達のそのことを伝える。ユースタスさん達大人組に、俺の今言っていることが伝わらなくても良い。今はモコモコ達に伝われば良いんだ。


 ということで、一生懸命に伝えた俺。でも全て却下だった。


「お尻振りダンスでないといけない、と言っているぞ? 自分達が1番気に入っている、そして唯一グレンヴィルとできるダンスだからと。グレンヴィル、お前は何と言ったんだ?」


 ユースタスさんに聞かれた俺。でもその問いに答えることができず、グッタリとその場にうつ伏せになっている俺。

 そんな俺を無理やりモコモコ達と小さいフルフルが起こしてきて。これまた無理やりハイハイをさせて、双子シードラゴンの檻ギリギリまで連れて行った。


 はぁ、何でこんな事に。ここまできてしまえば、やるしかないだろう。このグタグタな時間も勿体無いからな。そんな暇があれば、さっさと避難について話し合った方が良い。


 仕方なく俺は覚悟を決めて、小さいモコモコと小さいフルフルの間に入り、そしてしっかりとハイハイの格好をした。


『ぷ~ぴ、ぷ~ぴ♪』


『ぷ~う、ぷ~う♪』

 

『く~う、く~う♪』


『きゅ~い、きゅ~い♪』


『くきゅ~う、くきゅ~う♪』


 みんなが歌い出しお尻を振り、お尻振りダンスを始めた。俺も少し遅れて、小さくお尻振りを始める。するとみんなに、もっとお尻を振る、いつもみたいにって注意されて。


 檻の中、お尻振りダンスをする俺達。そんな俺達を何とも言えない表情で見てくるユースタスさん。散々に言われて、何も言えなくなり、挙句お尻振りダンスを見せられている親シードラゴン。


 きっとここに他の人がいたら、一体何をしているんだ? と。あまりの不思議な光景に、他の人達を集めてきて、周りは野次馬だらけになっていたんじゃないだろうか。

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