第98話 ちびっ子達のマシンガントーク

 それからもモコモコ達と小さいフルフル、双子シードラゴンの、大人組に対するどうして一緒に逃げなんだ攻撃は続き。俺はそれを黙って見ていた。うん、今口を挟むと、あの誠心誠意の土下座をする事になりそうだったからだ。


 そして『どうして攻撃』を受け続ける大人組の、ユースタスさんと親シードラゴンだけど。こっちもさっき言葉に詰まってから、何回かは復活はしたものの。話している途中でモコモコ達のツッコミが入り。

 その度に言い負かされるとまではいかないけど、結局言葉に詰まるを繰り返し、モコモコ達を止めることはできず。


 ほらな、こんな状態だ。俺は絶対に口を挟まない方が良いに決まっている。ユースタスさんも親シードラゴンも、モコモコ達と小さいフルフルの、こういう時の怖さを知らないからな。双子シードラゴンもみんなみたいに、グイグイくるとは思わなかったけど。


 ただ、ユースタスさんは屋敷にいる時に、モコモコ達の様子を見ていたはずなんだけどな? ほら姉さんの歌の時とか、俺が余計なことを言った時とかさ。それで俺は誠心誠意の土下座をしていたんだから。


 もしかして自分には被害がなかったから、気にしていなかったとか? それじゃあダメだよ。ユースタスさんは周りを見る能力が高いんだから。誰を怒らせちゃいけないって、ちゃんと見ておかないと。


 と、止まらなかったみんなが、少し落ち着いてきて、ようやく今までのマシンガントークが収まってくると。双子シードラゴンが親シードラゴンにある質問をしてきた。


『きゅ。きゅきゅきゅ、きゅ?』


『くきゅ、くきゅきゅきゅ』


『何でだと?』


 ユースタスさんが俺に、小さな声で教えてくれた。今大きな声で言って、静かにしていてとでも言われたら、面倒だと思ったんだろう。

 今の双子しドラゴンの質問は、どうしてお父さんはみんなが嫌いなの? 今ここにいるグレンヴィルも魔獣達も、僕達すぐにお友達になれたのに。と言ったらしい。


『それは奴らが敵だからだ。今回のこと、最初に我らを襲ってきたのは海に生きる者達で、人間とエルフは関係なかったが。今回はと言うだけで、他の種族の者達も、いつでも我らを敵対視しているのだ。だから友達などにはなれぬし、敵として最初から攻撃しなければ』


『きゅうぅぅぃ、きゅうきゅ、きゅう』


『くきゅう、くきゅきゅ、くきゅうぅぅぅ』


 今のは、え~、でも今は誰も攻撃して来ないよ。みんなと遊んだだけ。そうだよ。全然攻撃してこないよ。グレンヴィルは僕達よりも弱いし。


 ……ああ、そうだよ。俺はこの中で1番弱いさ。ハイハイとちょっとお尻降りダンスしかできないさ。でも心は大人なんだよ。小さな子にそう言われると、なんか寂しくなるんだ。だからそんなにハッキリ言わないでくれ。


『弱いからといって、敵なのは変わらん。もしこの子供が大きくなり、我々を攻撃してきたらどうする。この子供は他の者達よりも魔力量が多いからな。もしかするとここから逃げても、またいつか、今回の者達と同じことをしないとは言い切れんのだぞ』


 それに応える双子シードラゴン。そんな事ないよ。大きくなっても絶対僕達の方が強いし。モコモコ達やフルフルだって、グレンヴィルよりも強いよ。それよりも僕達が守ってあげなくちゃ。ね、みんな。


 と、これに俺のモコモコ達と小さいフルフルが。そうだよ。僕達がグレンヴィルを守ってあげるんだよ。後はお世話見してあげるの。今もご飯の時とか、寝る時とか、色々お世話してあげてるんだよ。


 ご飯の時に、スプーンやフォークを落とした時はすぐに拾ってあげるし、顔が汚れたらすぐにタオルを持ってきてあげるの。

 寝ている時に、グレンヴィルが動いちゃって、毛布がズレちゃった時は掛け直してあげるし。枕から落ちちゃっても、枕を移動してあげるし。


 ユースタスさんと親シードラゴンが俺の方を見てくる。いや、あの……。すみません、いつもお世話になっております。本当助かっています。

 俺は何とも言えずに、別に謝っているわけではないけれど、あの誠心誠意の土下座と同じ格好をしてしまった。


 それからも続ける双子シードラゴン達。ほらね、やっぱり僕達の方が何でもできるお兄ちゃんで、全然怖い人間じゃないよ。そうそう、僕達お兄ちゃん。

 それに続くモコモコ達と小さいフルフル。僕達はお兄ちゃんだし、家族だよ。そう、だから1番弱いグレンヴィルを、大切で大好きなグレンヴィルを、お世話して守ってあげるの。どんなに強い敵からだって守ってあげるんだから!!

 

 だから僕は敵じゃない、と。みんなの声が重なり、その後うんうん頷くみんな。みんなが俺のことを思っていてくれて、とっても嬉しくて、少しニヤけてしまった俺。だけどすぐに何とも言えない気持ちになり、またガックリしてしまい。


 はぁ、もう少し動けるようになれば、みんなに迷惑かけることも減ると思うんだけど。俺、どれだけ弱いんだよ。いや、みんながしっかりし過ぎなんだな。俺と同じ1歳なのにさ。双子シードラゴンの方は5歳で俺達よりもお兄ちゃんだけどだ、それでもなぁ。


 そうしてガックリしている俺と、またまた黙ってしまった大人組。と、今まで勢いよく話していた双子シードラゴンが、急に静かに話し始めた。


『きゅ、きゅきゅう、きゅう』


『くきゅう、くきゅ、くきゅう』


 そんな双子シードラゴンの言葉を、今まで面倒くさそうに見ていて、そして話しを聞いていたユースタスさんが、真面目な顔をして俺に伝えてくれる。


 僕達初めてできたお友達なんだ。だってお父さん、みんなと遊んじゃいけないって。僕達、周りで遊んでいる魔獣達を見て、お友達になりたいってずっと思っていたの。

 

 その言葉に、親シードラゴンもしっかりと双子を見つめた。

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