第94話 物騒な男の人の話し
『それで、お前はここから逃げる事を考えている。それは間違いないな』
「当たり前だ」
俺の事を無視して話を再開する2人。だから俺の話しも聞けって。とは思いながらも、俺が邪魔をしちゃいけないとも、ちゃんと分かっていて。誰もいない今、2人がこうして話しをしなければいけないと、お互い考えあってのことだったら。
今の状況は大切だろうからな。ジェフィリオンはいない。他の仲間もいない。そしてまだしっかりとは気を許していないけど、一応は大丈夫だと判断したスカーレットさんも、まだ完全に気を許してはいないからな。
またいつこういう状況が訪れるか分からない。なら今のうちにできるだけ話しをしておかないとってことで。そうすると、言葉の分からない俺なんかの相手をしれいる場合なんかじゃない。
俺は仕方なく静かにしている事にした。分からないこと、不思議に思ったことがあれば、後で寝る前にでも、誰もいなくなった状況で、ユースタスさんに気聞けば良い。
『ここから逃げるには、奴も魔法を突破せねばならんぞ。お前も分かっているだろう?』
「ああ。海に生きる者達の国を襲ってきた時、時々感じていたが。直接攻撃された時と、ここへきた時に確信した。奴の魔法。私は奴が使っている魔法を初めて見たし、属性そのものを知らない。g!それはお前も同じだろう?」
『そうだ。我も知らないものだ。あれのせいで、どうにもうまく動くことができん』
「それはお前の、今の状況とも関わっているか?」
『……それで、お前はここから逃げると言っているが、その方法はもう考えているのか?』
「いや、まだだ」
『ふん。だろうな。そんなに簡単の、逃げる方法を見つけられるのならば苦労はせん。が。我は方法を考えてある。その作戦を実行する時、それの邪魔をするなと、我は言いたかっただけだ』
「何か方法が見つかったのか?」
『これは我にしかできんことだ。多少の犠牲を払うことになろうとも。そして周りがどうなろうと、我の知ったことではない。息子達が助かり、その後幸せに暮らすのであればな』
「犠牲……か」
『ああ。こんな事をした奴らを、そして今まで我々に敵対してきた者達も。いや、我々以外の、我らの生活に必要のない全ての者達を。我はできる限り消すつもりでいる。息子達や仲間達が、これからこの海で、平和に暮らせるように』
息子達。この男の人には息子がいるのか。それに今までの話しからすると、もしかしてその息子さん達も、ここで捕まっていたりするんだろうか? それでその息子さん達を逃がしたいと。
ただ俺達が連れてこられて、しかも何故かリーシュがユースタスさんだと気づいていて。ユースタスさんが居るのならば、俺達も逃げるだろうと考えたのんだろう。
が、俺達が逃げることで、自分の息子さん達を逃すのに支障が出たら困る。そんな感じだろうか。
ただその後の、小さな犠牲? 消すつもりってのは何だ? ジェフィリオンを消す。あ~、多分殺すって事だよな。それについては、まぁ。この世界のことだし、これは案外普通のことだったりするんだろう。
裁判? みたいな物も勿論ある。だってあの半端者達。そういったやつで判決が出て、国を追われたんだから。ただ、それで片付かない事もるはずだ。小説みたいにな。
だからジェフィリオンやその仲間を消すのは分かる。だけどその後の、敵対してきた者達については、まぁ分かるとして。自分達の生活に必要ない者達すべてってのはどういうことだ?
「全て……か。そんな事ができるとでも?」
『だからできる限りと言っている。他の者達が我ら種族に逆らわなくなるくらいには』
だから、さっきから物騒なんだよ。こちつ本当に何者だよ。ジェフィリオンを相手に、そして他の人達を相手にって、それだけの力があるって事なんだろう? さっきから自信満々だし。
「ゆしゃ」
「グレンヴィル、もう少し静かにしていてくれ」
どうしても気になって、思わずユースタスさんに声をかけたが、サクッと却下されてしまった。
それから俺を置いて話しは続き……、そうになったが。急にユースタスさんがリーシュの姿に変身してしまい。その数十秒後スカーレットさんが戻ってきた。ユースタスさん、スカーレットさんが戻ってくるのに気付いたんだ。
こうして急に話し合いは止まってしまい、その後はスカーレットさんがいなくなることはなく、男の人とユースタスさんは話しをすることはなかった。
ただ男の人はその後ずっと、双子シードラゴンと遊んでいた。ボール投げをしたり、貝殻で遊んだり。色々と遊んでいて、双子シードラゴンは本当に楽しそうで。
その様子だけ見ていると、この男の人が、結構物騒な事を考えているなんて思えないんだけどな。
そうして時間は経ち、俺はミルクの時間になった。モコモコ達や小さいフルフル、リーシュ姿のユースタスさん、それから双子シードラゴンにも食事が出され。その食事の間に男の人は誰かが呼びにきて、出て行くことに。
その時の双子シードラゴンの様子といったら、本当に可哀想だった。行かないでくれと必死に訴え、水の中だから分からないが、きっとあれはかなりの勢いで泣いていたはずだ。その姿が本当に可哀想で。
男の人もあの無表情が、少し寂しそうに見えて。いや、多分。そんなに変わっていないように見えるけど、本当はとっても悲しいんじゃないかって思ったよ。
男の人が出て行った後は、双子シードラゴンはご飯を食べることはなく、そのままあの岩の中へ入ってしまった。スカーレットさんが何度か呼んだんだけど、ぜんぜん反応はなく。
やっとご飯の時間が終わると、スカーレットさんはある人を呼んできた。その男の人はスカーレットさんの話しを聞くとニコッと笑い、双子シードラゴンの檻の中へ。
その瞬間父さん達と同じ魚の姿に変わった男の人。この人も海に生きる者だったらしい。
その人は魔法で岩を、俺達のクッションの方へ動かしてくれ、それから岩の中にいる双子に何かを言い。ささっと檻の外へ。そして人の姿に戻るとすぐに洋服を着た。その間スカーレットさんは後ろを見ていたよ。
そうしてスカーレットさんが呼んだ男の人は広間を出て行き。スカーレットさんも、ゆっくりできるかは分からないけれど、できるだけゆっくりしてねと言い残して、広間から出て行ったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます