第81話 俺の身に起こったこと、俺が気を失ってから

 ミルクをごくごく飲みながら、ユースタスさんの話しを聞く俺。このとき俺はまだ気づいていなかった。俺の後ろに、俺達以外の誰かがいるなんて。

 ただこの時は、何が起こっているのか全く分からず、ユースタスさんの話しを聞こうと、そっちばかりを気にしていたから気づかなかったんだ。


 そしてユースタスさんの話しで、俺は自分に起こったこと、屋敷に起こったこと、そして今現在の状況を知ることになった。


 まず初めに。俺に何があったのか、覚えているか聞いてきたユースタスさん。だけどまぁ、俺の答えを聞いたところで分からないし。赤ん坊の俺がショックで覚えているわけもないと。

 聞いてきたけど、さっさと話しを初めて。それで俺は自分に何が起きたのか、しっかりと思い出せた。


 そうだ、そうだよ。急の現れたシードラゴンに襲われて、結界とドームが破られたんだった。でも最初の攻撃ではなんとかなった俺達。急いで避難場所へ移動しようってことになって。先に姉さんが屋敷の端まで移動したんだ。


 それから俺も父さんと言葉を交わして、父さんは俺のお頭を撫でてくれて。それで移動しようとした瞬間に、ルスの声が聞こえたと思ったら、さらに激しい攻撃が来て。


 気づいたら時には、知らない奴が俺の目の前にいて、父さんは吹き飛ばされ、ユースタスさんも父さん同様に吹き飛ばされ。俺は破られたドームから、激しい勢いで入ってきた海水の中へ。

 息吹のパルのおかげで呼吸はできたし、声も出すことができたけど。どんどん俺は外へ向かって流れて行ったんだった。


 そしてドームから出る瞬間、母さんが俺を追いかけてきてくれて、それで母さんに伝わるか分からないけれど、感謝を伝えて。それから俺は……。


 と、まず、どうして吹き飛ばされてはずのユースタスさんが、俺と一緒の居るかっていうと。それはまだ俺が気を失う前、母さんが俺を呼んだ時、背中にちょっとした衝撃があっただろ? 


 あれは攫われそうになっている俺を、モコモコ達と小さいフルフルだけで、連れ攫われるわけにはいかないって。急いで俺の所へ追いついてくれた、ユースタスさんの衝撃だったんだ。しかも何故かリスの姿で。


 リス魔獣の名前はリーシュと言って、強い魔獣が住んでいる森、山、林に、住んでいる魔獣らしい。そのリーシュに変身できるユースタスさん。体も大きくしたり小さくしたり自由にできるようで。


 吹き飛ばされても、気を失わなかったユースタスさんは、すぐにいい感じの大きさのリーシュに変身。リーシュの大きな尻尾を使って、もの凄い勢いで俺に追いついてくれたんだ。


 そうして俺が気を失うと、モコモコ達や小さいフルフルに、静かにしているようにと。ユースタスさんが何者か、ユースタスさんが許可をした人、魔獣にしか、教えないようにと約束させ。その最中にも俺達は、流れに乗って、どんどん運ばれてきた。


 そして着いた場所は大きな大きな洞窟で。まるでここは洞窟でできた城のようだったと。その洞窟お城の中を、俺達は地下へ運ばれ、その後すぐに海水は引いて行き。引き始めてすぐに、ある人物が現れた。


 その男の名はジェフィリオン。男は名乗る事はしなかったが、ユースタスさんはその男のことを知っていたんだ。どうもそのジェフィリオンという男も半端者らしい。父さん達が気をつけていた半端者のリストの名があったと。


 そのジェフィリオンだけど。海水が完璧に引くと、俺達をこの牢屋に入れ、おとなしくしていろ、そうすれば何もしない。それだけ言い残し、どこかへ行ってしまったらしい。


 ユースタスさんはジェフィリオンがいなくなると、すぐに変身を解き、俺の体を調べ、どこも怪我をしていないことを確認。その後モコモコ達と小さいフルフルも調べて、みんなが元気なことを確認した。


 それから1時間くらいして、再び現れたジェフィリオン。その時もユースタスさんはリーシュ変身していて。俺の周りには魔獣しかいないよう見えるようにした。これはどうしてか後で聞かされたが。これからの事に関係していたんだ。


 リーシュがユースタスさんだと気づいていない、そのジェフィリオンだけど。どうも俺が目を覚まして、体力が戻り次第、そして準備が整い次第、俺から魔力を吸収するつもりらしい。だが長く俺が使えるように、全部の魔力は吸収しないとも。


 そして魔獣姿のユースタスさんとみんなには、俺を少しでも安心させるために、相手をしていろと言い、またどこかへ行ってしまったらしい。


 やっぱり狙いは俺だったんだ。俺の魔力。俺はまだ魔法を使える年齢じゃないんだけどな。しかも魔力なんて。小さい俺からじゃ、そんなに取れないだろうに。


「お前は珍しい、黒髪黒目の人間だ。そういう人間は赤ん坊の頃から潜在的に、体の魔力を体に宿している。かなりの量のな。それを奴は狙ったんだろう」


 そうなのか? じゃあもし俺が今、魔法をやろうと思えばやれるってことなんだろうか? と、それは良いとして、まさか俺に、すでにかなりの魔力が宿っているとは。全くなんだって俺に、こう面倒ごとばかり起こるんだか。


「だが、奴がグレンヴィル、お前から魔力を吸収する前に、私は奴の隙をつき、ここから逃げるつもりだ。奴は私がエルフだと気づいていないからな。奴がいる時は奴を油断させるために、この姿で行動をする。その時が来るまでは。だからグレンヴィル、お前も私の正体を誰にでも言うんじゃないぞ。分かるか?」


 ユースタスさんの話しに、モコモコ達と小さいフルフルが、俺が分からないだろうと、俺に今の話しをジェスチャーで伝えようとしてくれる。ユースタスを指しながら、姉さんの俺によくやる、『しー』とする仕草をやってくれたんだ。


 大丈夫だよみんな。俺は分かっているから。でも。一生懸命教えてくれてありがとう。俺は小さな声で、でもしっかりと手を上げて返事をした。


「ちゃ!!」


「……本当に分かったのか?」


 ユースタスさんは変な顔をしながらも次の話しに。そして俺は新たな出会いを果たした。

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