第66話 それぞれの状況(キュリス視点)

『向こうはどうだ?』


『はっ、デギオン様が指示してくださり、今のところ問題はないと。それと、新しい避難所ですが、そちらも問題はありません。どちらかといえば、向こうにはほとんど来ていないようで』


『まぁ、そうだろうな。わざわざこんなことするんだから、我々が目的だろう。それかグレンヴィルかもしれんが。逃げることが難しい魔獣達とはいえ、広い海の中、どこかにはいる魔獣を狙うとは思えないからな。珍しい魔獣は別だが』


『デキオン様より伝言です。こちらは任せろと。それとこちらがまずい場合はマーヴェリック様を残し、こちらへ駆けつけると』


『あいつが来てくれた助かった。避難場所は全てあいつに任せられるからな』


 シードラゴンと半端者達が襲撃してきてから数時間。こちらに大きは被害は起きていない。そして大きな怪我をした者も。まぁ、本番はこれからだろうが、それでも何も起きていないのは良いことだ。


 結界も問題はない。最初のシードラゴンの攻撃にも、その後の攻撃にも、少しの亀裂は出来たものの、一瞬で修復できるほどの亀裂で問題はなかった。

 そしてもちろん、その結界は半端者達にも、しっかりと効いている。誰1人通さず、そして魔法も物理攻撃も全て防いでいる。


 が、今言ったが、これからが本番だろう。この後攻撃は激しくなるはずだ。今攻撃をしている半端者達は、魔法も武器の攻撃も、全然なっていはい者達ばかり。

 向こうの指揮をとっているのが誰なのか、それはまだ分かっていないが。おそらく使えない者達を先に使い、この国を襲わせ、運が良ければ侵入しよう、と考えているのだろう。


 それと少しでも我々の力が弱まれば、とも思っているはずだ。何もしない状態で最初から我々と戦うよりは、使えない半端者達と戦わせた方が、ほんの少し、ほんの少しだが、こちらの体力は削られるだろうからな。


 そうして力のない半端者者達が我々に倒された後は、力をそこそこ持っている半端者達が襲ってくるはずで。それも倒せば次は……。


 いつ向こうの指揮をとっている者達が現れるか。今はまだ後ろの方で手は出さず、指揮だけしているはずだ。指揮をとっているのも半端者なのか、それとも半端者ではない、全く無関係の者が指揮をとっているのか。


 一応半端者の中の、指揮を取れそうな者達は、半端者達が記録されている資料から、確認はしておいた。危ない半端者は10人。まだその半端者達がいたと、報告は来ていないが、注意しておかなければ。


 そして対策として、攻撃、防御に、薬に関しても、しっかりと準備してある。それぞれ1人ずつに回復の薬を2つずつ支給し、治癒師の所へ行けない場合は、それを使うようと。またもし薬を使った場合は、交代の時に必ず補充し直すようにとも。


 国に何か起きた時のために、我々は常に回復薬を作り続けてきた。そのため地下にはかなりの量の在庫が保管してある。

 また、その回復の薬は、ただの小さな傷が治る程度の薬ではない。重症の怪我でも、数分もあれば完全に回復する薬だ。


 もちろん作るのには時間がかかるし、素材も珍しい素材を使うため、大変ではあるが、それでもそれをずっと続けてきたからな。しかも保存がきくから、こうして大問題が起きても、回復薬については慌てることはなかった。


 そしてユースタス達が来てくれたことも、我々にとっては本当にありがたいことで。ユースタス達も、エルフに伝わる回復薬を持ってきてくれたのだ。そして今も地下でその薬を我々と共に作成してくれている。


 ユースタスについては、指揮を取る私やシェリアーナに代わり、自らグレンヴィルの護衛についてくれ。グレンヴィルが狙われいる可能性があると聞き、本当に不安だったが、ユースタスのおかげで安心できた。


『これから2段階ほど、向こうの力が上がった場合は、私はもう少し前にでる』


『はっ。……向こうの狙いは、本当のグレンヴィル坊っちゃまだと?』


『ブレンデン様からの情報だからな。本当は違っていてほしいが。もちろん目的がグレンヴィルじゃない可能性もある。本当は他に何か本当の目的があって、その目的のついでに、グレンヴィルを狙ったかもしれないし。完璧にグレンヴィルが関係ない場合も。だが、1番可能性が高いのはグレンヴィルだろうな』


『ブレンデン様が、こちらに兵をお貸しくださいましたからね』


『ブレンデン様はグレンヴィルのことを心配してくださり、定期的のグレンヴィルの様子を確認されていた。そして何かあれば、すぐにご自身の元へ連れてくるようにと。病気や怪我をして、こちらで治療が無理ならば、すぐにブレンデン様の専属治癒師に診せる。食事が合わないことがあれば、ブレンデン様専属の料理人に、料理を作らせると。他にも色々と心配してくださっていた』


『ケニーシャのことがなければ、ご自身で引き取ろうと思っていらしたと』


『ああ。グレンヴィルが私達の家族に決まった時、もし人間の所でもエルフの所でも、誰も引取り手がないのならば、引き取ろうと考えていたと。だが、ケニーシャの『あたしおねえちゃん』で、ケニーシャに任せると、ケニーシャならグレンヴィルの良き姉になってくれると感じ。私達にというか、ケニーシャにグレンヴィルを任せてくださった』


『お嬢様はよくグレンヴィル坊っちゃまを見ておられす。時々やりすぎることも、ご本人が気分が上がりすぎ、どこかへ飛んで行かれる時もありますが』


『ははっ、そうだな。それでもケニーシャはかなり成長したな。これからもグレンヴィルの良いお姉ちゃんでいてくれるだろう。そのためにも、今のこの状況を、全て無事の終わらせなければ』


『はい、必ず』


 待っていろ、ケニーシャ、グレンヴィル。パパが絶対に解決するからな。

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