第53話 海の問題、俺の問題
『しっかり結界を張れたわね』
『ああ、こっちは問題なしだな。私はこれからブレンデン様の所へ。時間がないといけないから、壁と結界の間を通って行ってくる。それとフルーが連れて行ってくれると』
『分かったわ。フルーが連れて行ってくれるのなら、かなり早く移動できるわね。ウォーターホースで飛ぶよりも速いもの』
『ここを頼む。皆何も言わずともやってくれているが』
『大丈夫よ、任せて。そうね、ひと通り確認が済んだら、あの子達にどこまで理解ができるか分からないけれど。多分グレンヴィルは無理でしょうけど。今回のことを話しておくわ』
戻ってきた父さんと母さんが、遊びの部屋へ来て、こんな話しをしていた。それからすぐに父さんは、今回のことである人物の所へ。確かブレンデン様って、俺のことを父さん達の家族にって、決めた人だったよな。そに人の所へ行くらしい。
それでブレンデルさんの所まで行くってことは、大きな街まで行くってことで。それってかなり時間がかかるんじゃ。確か前に聞いた時、そんなことを言っていなかったか?
と、それに、待って待って、今母さんはウォーターホースで飛ぶよりもって言った? 飛ぶ? 走ると間違えた?
色々考えているうちに、部屋にフルーがやって来て、すぐの父さんと出発することに。今回は非常事態ってことで、俺の家の裏、ドームのかなり近くまで、俺の家の敷地なんだけど。
その裏の方に、俺の家専用の出入り口があるらしく、そこから泳いで向かうらしい。この前の入り口は、一般の人達が使う入り口として、俺の家から1番近い入り口だったんだ。
それとこの前と違うことがもう1つ。見送りに行くと、父さんの洋服がいつもと違っていた。
何と言うか、いつもみたいにヒラヒラ、キラキラしている洋服なんだけど。いつもよりそのヒラヒラがヒラヒラせずに、必要のない生地部分を取った感じだった。
それから肩や胸、肘や膝、防具をつけていたんだ。しっかりとした防具。靴も膝下までの長い、カッコいい靴を履いている。
『今日はね、パパはお魚にならないのよ。パパのまま海の中に入るの。それとお外は危ないから、体を守ってくれる、お洋服も着ているのよ』
ああ、なるほど。この前ちょっと聞いたけど、いつもよりもヒラヒラしていない、今着ている洋服が。最初から着ていて、そのまま海に入っても、問題なく泳げる洋服なんだな。それに危険だから防具を付けると。
『では行ってくる』
『気をつけて。フルーもよろしくね』
『任せろ。用事がどれだけかかるか分からないが、移動の方は、俺が移動するんだ。お前達の移動の半分の時間ですむからな』
半分の時間? 凄いね、どれくらい早く泳げるんだろう。でも早く帰って来てくれるのは、安心だな。
父さんとフルーが外へ。見ていたら洋服は体の張り付かずに、海の中でも陸と同じような動きをしていた。
うん、あれなら海の中でも問題なさそうだ。もし俺が大きくなって海で泳ぐようになったら、あの洋服を買ってもらおう。裸で泳ぐわけにはいかないし、海用洋服は普通に売っているみたいだから。
そして父さん達が海へ出ると、フルフル達も見送りのために海へ出た。1番小さなフルフルも外へ。みんなスイスイ泳いでいて、泳ぎはペンギンそのものだ。
父さんとフルーがこちらを見て、手を振ってきた。それに手を振って答える俺達。父さん、フルー、気をつけて。何もなくすぐに帰ってきてくれ。もう誰かがいなくなる、大怪我をする、なんて嫌だからな。
手を振り終わると、父さんがしっかりとフルーに掴まり、2人が前を向いた。次の瞬間、父さんとフルーが消えた。パッ!! と。本当にパッ!! と消えたんだ。最初の見送りもかなりの衝撃だったけど、今度はいきなり消えた父さん達にビックリする。
「ぱぁ、ちゃ?」
『ママ、グレンヴィルが、パパがきえたからビックリだって』
時々俺の言っていることを伝えてくれる姉さん。今回は分かってくれて、母さんに伝えてくれた。
『あら、そうよね。これはこれでビックリだったわよね。しかも今回もパパは消えるように見えたわよね。思わず前回見ているから、大丈夫って勘違いしていたわ。グレンヴィル、パパは消えたわけじゃないのよ。フルーもね』
「う」
『とっても速く、フルーが泳いでくれたから、消えたように見えたのよ』
「う」
『フルフルはとっても速く泳げるのよ』
「う」
『見せてあげたら、ちょっとは元に戻ってくれるかしら。フルちゃん、聞こえる?』
母さんは俺の小さいフルフルのことをフルちゃんと呼んでいる。ドームの向こうで、こっちに戻ってこようとしていた小さいフルフルと他のフルフル達。母さんに呼ばれて、泳ぎながら母さんの方へ。
『ちょっと泳いでくれるかしら。グレンヴィルに泳いでいるところを見せてあげたいの。ゆっくりじゃなくて、1番速くよ』
そう母さんが言えば、こっちの話しをモコモコ同様、結構理解してくれるフルフル達が、一斉に泳ぎ始めた。そしてすぐにみんなが見えなくなって。
『ほらグレンヴィル、フルフルがみんな見えなくなったでしょう?』
さっきの父さん達じゃないけど、今のフルフル達も同じようにパッ! と消えたように見えた。
『ね、フルフルも見えなくなるくらい、速く泳げるのよ。モコモコと一緒ね。モコモコよりもちょっと遅いくらいかしら。フルーは強いフルフルだから、もっともっと速く泳げるのよ。私達でも見えないくらいに。お父さんは特別な結界を自分に張るから、どんなに速くても、フルーに乗れるのよ』
『みんな、はやい!!』
『そしてそのスピードで、攻撃もできるによ。敵に向かって行ったり、餌をとったりするの。落ち着いたら見せてもらいましょうか』
攻撃? 餌取り? 餌取りは早く動けた方が良いだろうから分かるけど、攻撃は?
それにこの世界の魔獣は、みんなそうなのか? 俺が見えないくらいに速く移動できる? 結界を張らないとダメ? 俺、大丈夫かな? モコモコとフルフルと一緒に泳げるのか? せっかく洋服は解決したのに、また不安んになってきたよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます