第49話 溢れる避難魔獣と息吹のパルのパル

 小さなもふもふに大きなもふもふ、そして大きな魔獣にと。みんなが避難として、ここへ来たのは知っていたけど、なんだかんだで楽しんでいた俺。でも数日も経てば、楽しんでいる場合じゃなくなってしまった。


 いや、どんな大変なことが起きているか、この時の俺には分かっていなかったんだけど。俺の家は避難魔獣達で溢れる事に。しかもそれは俺の家だけじゃなかった。

 街の中も、他の街でも次々と避難魔獣達がきているらしくて。結構な騒ぎになったんだ。


 毎日毎日、続けざまに避難魔獣達がやってきては、それぞれの避難場所へ。隣の街との間に、避難場所を新しく確保もする事もあった。魔法で土地をささっと綺麗に平らにして、そこに避難所を作ったりして。


 また、俺はドームって言っているけど、この国はドームで囲まれているだろう? そのドームを広げて新しい土地を確保し、そこにも避難場所を用意した。

 とっても広い土地で、避難に必要な道具がしまってある、道具小屋もちゃんと設置。魔獣達のお世話をしてくれる人達も、ちゃんといるから問題はない。

 

 そして魔獣をお世話してくれる人達とは別に、他にも新しいドームの方へ行ってくれた人達が。

 

 地上の人間達じゃないけど。ほら、俺を海に捨てた奴らな。この世界にはやっぱり騎士がいるらしくて。そんな騎士と同じような役割の人達が、海を生きる者達の中にも。その人達が、しっかりと向こうの新しいドームを守ってくれているらしい。


 新しい土地、お世話係に、守ってくれる人達。避難してきた魔獣達は、今の所はゆっくりできるみたいだ。


 ただ、避難はとても大切だけど、ちょっと色々な場所に、人を送りすぎじゃないか。1人1人の仕事が大変になるんじゃと、そう思った俺。


 でもその心配はすぐになくなった。助っ人が来てくれたんだよ。俺がここへ来てすぐ、俺の今後を話し合っていた時。父さん達と仲が良い、エルフの話しが出ただろう? 

 

 そのエルフに偉い人、確かブレンデンさんだったか? ブレンデンさんが、応援を頼んだらしい。

 そうしたらエルフ達は快くそれを承知してくれて、エルフ達がここへ来てくれたんだ。そして各地へと散らばって行って、俺たちの街にも20人ほどのエルフ達が。


 エルフが来た時、みんなで出迎えたんだけど。その時の話しだと、かなりの人数のエルフが来てくれたらしい。俺の街だけで20人だからな。他を合わせたらどれだけの人数が来てくれたのか。


 というか、エルフってそんなにたくさんいるのか? 俺の読んでいた小説だと、珍しい人種で、そんなに人数がいなかったけど。

 しかもこれだけたくさん来てくれているのに、エルフが住んでいる場所の戦力はそんなに変わらないと。どれだけ強いのか。


 こうしてエルフが応援に来てくれて少し経てば、避難も落ち着いてきて、ようやく騒ぎが収まってきた。


 そうそう、屋敷にも何種類かの魔獣達が避難しているんだけど。その中に息吹のパルを作ってくれる魔獣がいたんだ。ピレンターさんが急いで彼らを非難させてくれて。みんな避難ができたみたいで安心した。


 息吹のパルを作ってくれていた魔獣は、大きな大きな帆立みたいな魔獣だった。俺がかる~く10人は入っちゃうくらいの大きな貝で、名前はその名の通りパル。


 パルが息吹のパルが作れるのは1年に1回。しかもしっかりと使える物が出来る確率はけっこう低くて。それでもパル達は頑張って作ってくれているんだ。

 あと、大きなパルから、あの小ささのパルを見つけるのは大変だから、パルを探す専門の人達がいるらしい。ピレンターさんみたいに。


 そんな専門職の人達だけど、パルに信用してもらうまで、かなり時間がかかる。下手をすると5年はパルの巣に通い続けないと行けないって。それでようやく信用を勝ち取って、そこから息吹のパルを扱えるようになるんだ。


 ピレンターさんは、その職人の中でも、パルにとても信用されている人で。海に生きる者の中では1番じゃないかって。だから息吹のパルの商品を、いつも安定して売ることができるんだ。


 もちろん貰ってばかりじゃない。パルは餌をとるのが苦手らしく。下手をしたらあまりにも餌がとれなくて、そのせいで死にそうになることも。だからそうならないように、ご飯を用意するんだ。


 他にも、パルの殻は、そのまま使って商品にできるほど、真っ白な綺麗な貝殻で。けどその綺麗な貝殻を狙って、バカな人間達や他の種族がパルを襲うことも。だけどパルは、その場から動くのが苦手だから、そういうバカから守るんだ。


 後は、こういう非常事態の時に、安全な場所に非難させる。などなど、色々パルに必要なことを、息吹のパルをもらう代わりにやっているって。で、息吹のパルと一緒に殻の端っこを貰うことも。殻は後で再生するから大丈夫なんだ。


 パルが避難して来た時、その事を教えてもらった俺。しかもうちに避難してきたパルが、俺の持っている、全部の息吹のパルを作ってくれているって教えてもらって。もちろんお礼に行ったよ。パル達のおかげで、俺は生きることができたんだから。


 俺がお礼を言うと、ピレンターさんがパル達に俺の事を話してくれた。そうしたら殻をパタパタさせパル。気にするなって言ったらしい。ピレンターさんは何匹かと契約していて、パルと話ができると。


 契約。契約すると、契約した魔獣のレベルが高ければ高いほど。それから契約者同士の絆が深ければ深いほど、しっかりと話しができるようになると。ピレンターさんは契約したパル全員と話しができていた。


 契約か。俺もいつかモコモコ達と契約したいけど。モコモコ達は俺と契約してくれるだろうか? 話しもしたいしな。

 いや今でもモコモコ達の仕草や表情で、今何を言っているか何となく分かるけど。しっかり話せた方が、絶対に楽しいに決まってる。モコモコ達に契約しても良いと思って貰えるように、しっかりしないとな。


 こうして父さん達と一緒に、道具で俺を助けてくれたパル達に、俺はしっかりとお礼を言うことができた。

 と、それと同時に、なぜかパルが挨拶の後、俺に貝殻の端っこをくれて。それをみんなに貰った羽と一緒に飾った。


 ピレンターさん曰く、俺の貰った貝殻の隅っこは、特別良い部分だったらしくて。ここで暮らす一般の人達のお給料、1年分になるって。

 苦笑いをしながら、誰にも聞かれないようにボソッと言っていたけど、俺には聞こえてしまった。だから俺は、部屋に飾った後、なるべく触らないようにしようと思ったんだ。

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