第47話 プレルスの背中に乗せてもらおう!!

『いいか、そっと下ろすからな。ケニーシャ、背中に乗せてもらうんだ。騒ぐんじゃないぞ。騒いだらすぐに下ろすからな。それにちゃんとありがとうっていうんだぞ』


『うん!! せなか、ありがとう!!』


 姉さん今じゃなくて、乗らせてもらって、後でプレルスの前に戻ったら挨拶だよ。ん? 今でも良いのか? でも今のだと、背中にありがとうって言っている感じが? 

 そう感じたのは俺だけじゃなかったようだ。プレルスが笑いながら、背中にありがとうと言われたのは初めてだと笑い始めたんだ。


 やっぱりそうだよな? プレルスは首が長いから、俺達の様子を見ることができているけど、姉さん、どう考えても背中に向かって、ありがとうって言っていたし。父さんも苦笑いをしているし。


『ケニーシャ、ちゃんとありがとうが言えて偉いぞ。ただ、下りてからもう1度ありがとうをしような』


『? うん!! ありがとういっぱい、うれしいねぇ』


 まぁ、ありがとうは何回言っても良いし、言われる方もありがとうって言ってもらって、悪い気にはならないだろうから。うん、俺も1度背中にありがとうを言っておくか。


『あちょお!!』


『ハハハ、それがグレンヴェルのありがとうか。さぁ、背中を楽しめ』


 まず先に姉さんを下ろす父さん。姉さんは父さんに言われた通り騒がずに、そっとそっと背中の上を2歩ほど歩くと、その場にこれまたそっと座った。

mそして座った瞬間姉さんは満面の笑みを浮かべ、目がキラキラと輝き。今地面だったら、走り出していたところだろう。あの歌を歌いながら。


 次は俺の番だ。姉さんの時のように、そっと下へ降ろしてくれる父さん。しっかりとお座りの姿勢で着地して。でも父さんは姉さんの時みたいに、俺を離したりはしなかった。


『ハイハイできるようになったからな。まだそんなに遠くまではいけないが。それでも、もしもという事があるからな』


 大丈夫だよ父さん。流石に俺もまだ、背中でハイハイしようとは思わないよ。父さんじゃないけど危ないと思うし。


 それにハイハイって、結構力を使うんだよ。体全体に力が入るし。こうギュッと、手にも力が入ってさ。もしかしたらプレルスの背中に爪をたてちゃうかもしれないし。それかギュッと掴んじゃう可能性も。だから今はハイハイしないよ。


 でも、撫でるのは良いよな? 姉さんなんか俺の隣で、気持ちいいって、背中にへばり付いてるし。


 と、俺が父さんに降ろしてもらっている間の。時一緒について来て、父さんの頭と肩に乗っていたモコモコ達が、下に飛び降りて来た。そして姉さんと同じようにぺたっとお腹までつけて伏せの姿勢をしたんだ。するとすぐにまったりの表情になって。


 これはやっぱり、すぐに俺もやらなければ!! 俺も真似してうつ伏せになろうとする。が、勢い余って、顔面から倒れてしまい、思い切り鼻をぶつけてしまった。じ~んとした痛みが襲ってきて、俺の目から勝手に涙が溢れてくる。


 赤ん坊のせいか、涙腺が緩いんだよな。大人だった俺なら泣かなかったことでも、今だとすぐに泣いてしまう。


『ふえ、えぇぇ』


『ああ、ほら』


 俺の後ろに座っていた父さんが、俺を抱っこして背中をさすってくれる。俺のモコモコ達も俺を心配して、ぺたっをやめてすぐに俺の所へ来てくれた。プレルスも心配してくれる。


『だ、大丈夫か!?』


『ああ、心配しなくて大丈夫だ。勢いがついて鼻を打っただけだから。時々やるんだよ。まだその辺、動きがな。小さい子供にはよくある事だから、気にしないでくれ』


『そうか、ならば良いのだが』


『ほら、これくらいならすぐの治るから。ヒール』


 父さんがヒールですぐに俺の鼻の痛みをとってくれる。この世界にはヒールがあった。もちろんハイヒールや、その上の魔法もあるみたいなんだけど、父さんは簡単なヒールを使えて。これくらいならすぐに治してくれるんだ。


 鼻に当てた父さんの手の周りが、淡い緑色に光ると、俺の鼻の周りも光り初めて、すぐに痛みが引いた。


 ふぅ、痛かった。父さんありがとう!! まだ涙は止まっていないが、俺は父さんにありがとうをして、治ったアピールに手を振る。モコモコ達とプレルスにも。モコモコ達はそんな俺を見て、ほっとした顔をして、また背中にぺたっを始めて。


『ふぅ、良かった。次は気をつけるのだぞ』


『グレンヴィル、そっとだぞ……。またなってもな』


 今度は父さんが手伝ってくれて、俺は鼻を打つ事なく、みんなと同じ、プレルスの背中にぺたっと張り付くことができた。そして。


「みょおぉぉぉ!!」


 最初の叫びだけは許してくれ。思わず出てしまったんだ。フルフルの時はもふもふ、モコモコ、サラサラだったけど。プレルスはツルツル、スベスベ、ペカーって感じだった。こんなにツルツル、スベスベした物がこの世にあったなんて。


 この世界には今までの俺の常識を超える物が多すぎる。しかもそれが全て良い方向に上限突破するんだから、本当に困ったものだ。顔がニヤけてしまう。


 ああ、こんなに気持ち良いなんて。これはモコモコ達にはない気持ちの良さだ。暑い日なんか、背中で寝させてもらえたら最高だろうな。


「しゅうぅぅ」


『しゅう? りゅうって何だ? 『も』は色々あって、何となく分かるが、しゅう?』


 父さんが俺の言った言葉の意味を考えている。すると姉さんが、スベスベの『す』だと、父さんに伝えてくれた。それに納得する父さん。


「ちゅう」


『ちゅう? ちゅうも色々あるが、何のちゅうだ?』


『パパ、ツルツルの『つ』だよ』


『おお、そうか!』


 俺達のまったり姿を見て、プレルスはとても喜んでいて、色々と落ち着いたら、いつでも背中に乗させてくれると。


 それから手や足の部分は、滑って遊べるぞと言ってきて。どうも滑り台のように遊べるってことらしく、姉さんもモコモコもとっても喜んでいた。俺は出来たらやらせてくれるって父さんが。是非ともやらせてもらいたい。


 その後も少しの間、背中を堪能させてもらった俺達。背中から降りた後、みんなでちゃんとプレルスにお礼を言い、大きいフルフルとプレルスとの初対面は終わった。ある疑問を残して。


 あんなに大きいモコモコとプレルス。他にも仲間が来てくれているみたいだけど。家の庭が広いって言っても、どうやって過ごすんだろう? と。

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