第44話 無事に帰って来た父さん、そして?
フルフル達が家に来てくれて3日目。あの最初の出会いの日、俺達はきちんとフルフル達に挨拶をした。
ちょっとドキドキしたが、俺達がこんにちわと挨拶をすれば、フルフル達もそれぞれペコっと頭を下げて挨拶してくれたり、手を振って挨拶してくれたり。とりあえず挨拶は成功したよ。
それから2日間は、フルフルに家や人に慣れてもらうって事で、お風呂場は勿論、フルフル達が行きたい場所を回ってもらった。ちゃんとみんな1列に並んで、騒いだりせずに、ちゃんと進んでくれるんだ。
そしてその後ろをついて歩く姉さんと俺。2人ともフルフルが静かしていたから、俺達も静かにしないとって事で、勿論静かに後ろをついて行ったよ。
時々姉さんが静かに歌う歌を聞いて、フルフル達が変な表情をして振り返っていたけど。大丈夫、その辺もそのうち慣れるさ。心配はいらない。
2日もあればかなり慣れたみたいで、途中で昼寝をする子も出てきたことから、フルフル達が嫌がっていなければ、フルフルと遊んで良い事になって。早速朝のご飯が終わると、姉さんと俺は、モコモコのお風呂用おもちゃを持ってフルフルの所へ。
モコモコ達も喜んで自分からおもちゃを運んでいた。海の仲間が来て嬉しいんだろう。
もちろん最初からいきなり遊ぼうとはしなかった。フェリーがボールを持ってフルフル達の浴槽へ。それでボールを差し出して、そして待つこと数分。フルフルが遊ぶ意思表示をしてくれたから、みんなで浴槽の中へ。
アトウットさんが作ってくれた砂浜に座って、ボールを転がす俺。本当にミニサイズの海が目の前に。まさか家の中で砂浜に座るとは。
そのアトウットさんだけど、いや、アトウットさんだけじゃなくて、他の使用人さんやメイドさんもだけど、ここの所ずっと、とても忙しそうにしている。
ほら俺には分からないし、姉さんもいまいち分かっていないみたいだけど、何かみんな海に危険を感じてるだろう? それで魔獣や魚が避難しているって。
それで今回のフルフルじゃないけど、逃げるのが大変な魔獣や魚を保護するって事で、それの準備にとっても忙しいんだ。
庭の半分を、どんな魔獣や魚達が逃げてきても良いように。例えば大きな水槽のような物を用意したり、フルフル達みたいにミニサイズの海を作ったり。うちは庭が大きいから、色々な準備ができるって。
それからこれはウチだけじゃなくて、他でも街を挙げてやっているみたいで。色々な場所に避難場所を作っているって。
後はドームにくっつける感じで、生簀みたいな物を作って、そこに結界張るって。そんなことを母さんが言っていた。
ただその生簀の結界を張るときは、このドームごと結界を張る時だろうとも。その指示は偉い人がするみたいで、その人から連絡が来たら、結界担当の人たちが一斉に結界を張るらしい。
と、みんなとっても忙しそうにしているけれど、何もできない俺は、みんなの邪魔をしちゃいけないからな。もふもふモコモコと戯れていようと。ああ、もふもふとモコモコに囲まれる幸せ。
フルフルの特徴は、別に寒いとか怖いとかではないんだけど、普通にしている時でも、よく体をフルフル振るわせていて、それがそのまま名前になったらしい。
それからペンギンみたいに飛べないのかと思ったら、確かに飛べないんだけど、少しなら飛べた。
俺に1番懐いてくれたフルフルは、あの1番最後に空間魔法から出て来た、1番小さなフルフルだったんだけど。そのフルフルは床から俺の頭の上までくらいなら飛べるんだ。大きくなるともう少しだけ飛べると。
ただ、全部飛べるわけじゃなく、3回に1回くらいは失敗して、ペしゃっと前に倒れていた。これは大人になっても変わらならしい。そのペしゃっと潰れた姿が、またとっても可愛かった。
色は今の季節は真っ白で、もっと暖かくなると黒になる。抜けた羽は毛布やクッションなどの中身や糸になるらしい。
俺達の洋服にも使われていて、この何とも言えない肌触りは、フルフル達のおかげだった。他にも毛を使わせてもらっている魔獣達もいるけど。その中のトップ3に入ると。
俺に懐いてくれたフルフルが、ウォーターホースのように、自分で毛を抜いて俺にくれたから。ウォーターホースの毛を入れてあるケースと、同じケースを用意してもらって、それに入れる事にした。俺の宝物が増えたよ。
俺はお礼に俺のおやつの果物をあげた。いや、それくらいしかあげるものがなくて。でも喜んでくれていたから良いだろう。
でもこの日の夕方、家はまた騒がしくなる事に。避難魔獣? 戦力魔獣? が、うちに来たんだ。父さんと一緒に。
夕方、俺や姉さんの部屋じゃなく、別に用意されている遊び部屋でみんなと遊んでいる時だった。フルフル達がみんな、急に顔を上げて窓の外を見たんだ。フルフル達だけじゃない。モコモコ達も外を見ていて。ブルーに至っては、しっぽをブンブン振っている。
と、アトウットさんが、父さんが帰ってきたと知らせに来てくれた。ブルーは父さんが帰ってきた事に気づいてしっぽを振っていたんだ。
みんなで父さんのお出迎えに行こうとする。と、なぜかフルフル達も一緒についてきて。付いて来てというか、俺達の先頭を歩いているっていうか。
何でだ? と思いながら玄関ホールへ。玄関はもう開いていて、母さんが何か指示をしていた。それと母さんの斜め向こうに父さんの姿が。
姉さんが走って行って父さんに抱きつく。そして遅れて、リズに抱っこされていた俺も、父さんに抱きついた。
『パパ! おかえりなさい!!』
「おちゃ!!」
『ただいま! 元気そうだな。2人とも良い子にしてたか?』
『うん! おともだちとあそんでた!!』
「おちょ!!」
『そうかそうか。お父さんは2人が元気で安心したよ』
うん、父さんも何もないみたいだ。無事に帰って来てくれてよかったよ。なにしろ俺の分からないことばかりだから心配でさ。
『ほう、その子が人間の子か』
『ああ、俺達の自慢の息子だ』
『お前も人の子に会うのは久しぶりか?』
『ああ。最近は面倒な人間ばっかりで、なるべく近づかなかったからな』
父さんと俺達が、久しぶりの家族再会を喜んでいると、父さんの後ろの方から知らない声が2つ聞こえた。
『小さいと言っていたが、まだ赤ん坊か』
『赤ん坊は更に久しぶりだな』
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