第43話 小さな小さな可愛いもふもふもこもこのフルフル登場!!

『さぁ、ケニーシャとグレンヴィルはそこで待っていて。まずはフルフルの好きにさせてあげてね。そしてフルフルが挨拶をしてくれそうなら、2人も挨拶をしましょうね。勝手に近づいて騒いではダメよ』


『ここですわってる!!』


『す!!』


『しずかにしてる!!』


『ち!!』


『そうよ。静かにしていてね。ケニーシャはいつも返事は良いのだけれど、やっぱり興奮しちゃうのよね。でもこれからここに居させるのに、始めから分かっていた方が良いし。もう少し落ち着いてくれれば良いのだけれど』


 最後の方、母さんの声は小さかったけど、俺になバッチリ聞こえたよ。きっと姉さん、途中で歌い出すだろうな。


 と、俺達が話しているうちに、浴場をさらに改善したアトウットさん。お風呂はしっかりと半分で区切られていて、俺達から遠い方からは湯気が見える。そっちがいつものお風呂だろう。それで近い方が海水。


 その海水の入っている方の浴槽は、最初何も入っていなかったんだけど、アトウットさんが魔法で、土? 砂? を出したり、大きな岩や小さな岩を出したりして。浴槽はまるで海岸のように。


 フルフル、一体どんな生き物だろう。この様子だと、海だけじゃなくて陸でも生活できる、モコモコみたいな生き物だと思うんだけどな。

 

 姉さんと俺が動かなくても見えるように、姉さんは大きめな椅子に座って、俺はカートレットさんと一緒に座ることに。

 アンディーさんとリズは、これからここへ来るだろうフルフルが、作られた海岸にスムーズに入れるように、それの手伝い。そしてアトウットさんは、その時に合わせて、地形を変える準備。


 みんなの準備が整って、母さんが手を上げた。入り口を見る俺。いや、普通入り口から入ってくるって思うだろう? だけど違った。母さんは空間魔法を使って、いつも荷物を入れている空間を出したんだ。いつもよりも低い位置、足元スレスレに。そうしてその空間に上半身を突っ込んだ。


 突然のことに驚く俺。


『まぁ! ちゃ!!』


 今のは、ママが消えた!! って言ったんだ。


『坊っちゃま、奥様は消えたのではなく、中の様子を見ているのです。そしてフルフル達に出てくるように伝えているのですよ』


 え? あの空間って、生き物も運べるの? 中って息ができるの? まさかの事実に驚く俺。そんな俺が驚いているうちに、空間から母さんが出てくると、少しその場から離れた。そして数秒後。


『みょおぉぉぉ!!』


『フルフル!!』


 思わずまた叫んでしまった。姉さんも一緒に。でも姉さんは母さんとの約束を思い出したのか、パッ!! と自分の口を両手で塞ぐ。でも目はキラキラだ。と、今はそれどころじゃない。フルフルだ。


 結論、フルフルはペンギンに似て生き物だった。ペンギンの赤ちゃんは産毛がふわふわで、小さくて、とっても可愛いだろう? 

 フルフルも同じ感じで、ペンギンみたいな姿で、毛がもふもふもふ、ふわふわでとっても可愛く。歩き方もペンギンと同じで、よちよち歩きでとっても可愛かった。


 そしてここが1番大事。最初に出てきたフルフルは、母さんの手のひらにちょうど乗るくらいの小ささだったんだ。


 そんな小さく可愛いフルフルに俺のテンションは爆上がりし、なるべく叫ばないように、でもブンブン腕を振ってしまう。


 だけど可愛いはここで終わらなかった。最初に出てきたフルフルは、周りを見渡し、そして母さん、アトウットさんと、近くにいる人から匂いを嗅いでいき。最後に姉さんと俺の匂いを嗅いだ後、何かを考え、そして空間の方へ。


 そのまま空間に入ってしまったフルフル。もしかして俺と姉さんが叫んだせいで、出てきたくなくなったとか? それとも俺の匂いを嗅いで、おしっこ臭いから嫌だとか。さっき綺麗にしてもらったばっかりだから大丈夫だと思うんだけど。心配になる俺。


 でも少ししてまた出てきてくれたフルフル、ホッとして瞬間、また可愛いが溢れ出した。空間からフルフルが並んでよちよち出てきたんだ。まるでペンギンの行進のように。そうして出てきた順番に用意した浴槽へ入っていくフルフル達。


 1番大きな子でブルーくらい。1番小さい子は最後にお母さん? フルフルと寄り添って出てきた、姉さんの手と同じくらい小さなフルフルだった。

 途中で何回か転んでいたけど、何とか浴槽にたどり着き、用意されていた階段は母さんに手伝ってもらって上った。


 そしてその小さなフルフルが浴槽に入れば、フルフルの大移動は終了。そしてフルフルの臨時避難所に避難完了だ。最後は頑張って歩いて、何度も転んでいた1番小さいフルフルを見てドキドキしちゃったけど、無事に避難が完了して良かった。


 と、俺達と一緒にいたモコモコ達がフルフルの方へ。そして何かを話し始め。種族が違うけど、話が通じるのか? と不思議に思いながら、でも可愛い者同士の触れ合いに、俺はいつも通りニコニコしてしまう。


『あら、グレンヴィル、何をそんな変な顔でニヤニヤしているの?』


 母さん、俺はただ笑っているだけだよ。何でみんな、俺がもふもふ達をもている時、ニヤニヤしているって言うのか。


 その後も、モコモコ達とフルフル達の話し合いは続いて、俺達はその間、遠くから話し合いに参加していない、浴槽のチェック? をしているフルフルを見ていた。


 フルフル達の水の中への入り方が独特で、俺はそれにもニコニコ。こうスッと入ったり、ジャンプして入るのではなく。こう、バタンッ!! と前に倒れる感じで水に倒れ込み。そのまま泳ぎ始めるんだ。


 時々ちょっと痛そうな音が。実際痛い子もいるんじゃと思う入り方がだったけど、本人達がそれで良いなら別に構わない。俺は可愛い姿を見られるしな。フルフル、新しいもふもふが家に来てくれた。

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