第33話 人? 魚? 炭酸水
それから俺達は、俺達が乗ってきた馬車に乗り。街のお店が並んでいる通りへ。そして街で1番と言われている、喫茶店のようなお店に入ると、それぞれ飲み物と母さん達はケーキを注文した。
『さぁ、グレンヴィル、果物のジュースをよ』
母さんが持ってきていたミルク瓶に、お店の人が特別にジュースを入れてくれたんだ。母さんが俺の口にミルク瓶を近づけてきて、されるがままにジュースを飲んだ俺。
『あ?』
思わず変な声を出してしまった。まぁ、この喫茶店に来るまでのことは、なんとなく見ていたってくらいで、頭の中は父さん達のことでいっぱいだった。
それでボケッとしているところに、母さんが俺に果物のジュースを飲ませてくれて。ビックリした俺は思わず変な声を出してしまったんだ。
『『あ?』って、なんか今のちょっとドスが効いていたわね』
『本当に。いつもそんな声を?』
『いいえ、初めてよ。いつもはとっても可愛い声なのよ。いやだは、そんな声を出すなんて』
『今までボケッとしていたし、それだけさっきのことが衝撃だったんでしょうね。まだ赤ちゃんといっても、色々理解してくる頃だものね。ビックリして変な声が出ちゃったんじゃない?』
『そうね。私達のことはちゃんと理解してくれているし、しっかりと話すのはまだまだ先でしょうけど、パパのことは『ぱぁ』と、私のことは『まぁ』で、ケニーシャのことは『ねぇ』と言ってくれるのよ。他のアトウット達のことも、なんとなく言えるようになってきたわ』
『そんなに理解しているのなら、いつも一緒にいるパパが消えたらビックリするはずよ。そして消えたところには魚よ』
『魚って』
『あら、簡単に言えば魚よ。まぁ、その辺の魚とは別物だけど』
『まぁ、そうれはそうだけれど。でも本来の姿はこっちなんだから』
え? え? 何々? 待って待って。またぼけっとしてしまいそうになる俺は、なんとか止まって母さん達の話しを聞く。
今、母さんは何て言った? 本来の姿はこっちって言った? なら今の姿が基本で、海の中を移動する時や、何かの用事で海に出る時は、あのリュウグウノツカイみたいな魚に変身するってこと? それで海の中でも自由に動くことができて。
この世界がどうやってできたか、どうやって生き物が進化してきたか知らないけれど。母さん達の種族は最初から魚に変身できたのかな? それとも海に生きる者達だけが、魔法なんかであの姿に変身できるようになって。だから海で暮らそうってなった?
何にしても魚に変身って。なんか人魚姫に似てる。逆って感じかな。向こうは人間に変身。こっちは魚に変身。
でもまさか、父さん達が魚に変身できたなんて。おれ、みんなが外を泳いでいるの、気づいていないだけで、いつも見てたんだな。だって庭で遊んでいる時とか、買い物の時、いつもあの魚は外を泳いでいたんだから。
果物のジュースを飲んでいるうちに、ようやく落ち着いてきた。まだちょっとドキドキしてるけど。はぁ、
それにしても。そうか、だから母さんも父さんも、俺を心配していたんだな。いきなりの父さんの変身。俺の歳の赤ちゃんが見れば、父さんは消えるは、魚は現れるくはで。大好きな父さんや母さんが消えれば、そりゃあ驚くよな。今の俺でさえ、かまり驚いんたんだから。
『あら少し落ち着いてきたかしら。グレンヴィル。パパはお魚さんになって、傷ついた子達がいないか、海の中を調べに行ったのよ』
『パパは、みんなをまもってくれて、おけがをなおしてくれるの!』
『消えたのじゃないから安心してね。すぐに帰ってくるわ』
『分かるかしらね。夜泣くんじゃない?』
『どうかしら。まぁ、今日からは少しの間、私が付いていることにするわ。最初家へ来た時、人の子だから心配で、一緒に寝ていたのよ』
『そうなのね。じゃあ、今日からは少しの間、それが良いかもしれないわね』
そう、母さんは俺が寝返りを出来てから、俺の部屋で毎日は寝ずに、時々自分の寝室へ戻って寝るようになったんだ。だんだんと1人に慣らそうって。でもまぁ、数時間ごとに確認しに来ていたけどね。
だけど今日からまた、俺の所へ来てくれるらしい。俺的には大丈夫なんだけど、別に問題があるわけじゃないし。ただ母さんが心配してくれているのは分かってるからな。今日からまた2人寝だ。それとモコモコ3匹。
と、俺が落ち着いてきてきた頃、姉さんがジュースのお代わりをしたんだが。それがまさかのジュースだった。
『うみのジュース、おいしいね!!』
海のジュース? と思っていると、母さん達がそのジュースの話しを始め。何と海のジュース、そのまんま海のジュースだった。詳しく言えば、海の海水と、ある果物を使ったジュースで。
あの父さん達が出て行った時に、魔法でまとめて、樽に入れた海水。別にあの海水じゃなくても、何処からか海水を樽に入れて。その後、この辺はよく分からないけれど、何かの方法で海水を綺麗にして、また樽へ。
その綺麗な海水が入っている樽に、今度はある特別な果物を入れる。そうすると海水とその果物が反応をして、海水が変化。約60日そのままにしておくと。今姉さんが飲んでいるジュースの出来上がりらしい。
透明でプチプチと弾ける泡が。まだ俺は飲めないらしいんだけど、見た感じ、あれって炭酸飲料じゃ? それなら是非とも飲んでみたいんだけど。でも赤ちゃんじゃなぁ。
後、他の席を見ていたら、透明なジュースに果物を絞って違う色にして飲んでいる人達が。自由に味を変えられるらしい。良いなぁ。早く飲んでみたい。
『今回は早く帰って来られるみたいよ』
『傷ついている子がいないと良いけど』
『最近は海の中だけじゃなく、陸からの脅威も問題だものね』
『なるべく何もなく生活したいけど』
『本当に』
そんな会話をする母さん達。でもそれは叶わず。父さん達が帰ってくるまでに、ある事件が起こるんだけど。この時の俺はそんなことを知る由もなく。早くジュースが飲みたいと、ただただ姉さんのジュースを見ていた。
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