第25話 ここまでの事、これからの事

 暗くなった部屋の中、母さんの寝息とモコモコ達の可愛い、ぷぴ~と、ぷぅ~っていう寝息が聞こえてくる。そんな中、俺は天井を見つめて、これまでの事、これからの事に付いて考えていた。


 赤ん坊は寝るのが仕事と言う通り、俺は何回も寝たり起きたりを繰り返していたけれど、みんなが寝静まった中、どうにも俺は目が覚めてしまっていたんだ。そして不思議な物を見れば、尚更寝られるわけもなく。


 天井には、地球では暗い部屋の中で使うと光って見える、星や動物、色々な形をしている物を売っているけれど。この部屋全体にも、それと同じような物が。部屋の中が暗くなって、少しして見えてきたんだ。たぶん子供部屋って事で、用意してくれたんだと思う。

 星の形に、魚の形、イルカみたいな物もあったし、クジラみたいな物も。海の世界って感じで、結構面白かった。

 

 ただ、その中には気になる物も。どう考えてもドラゴンみたいな物があって。これぞドラゴンという物もあれば、魚型のドラゴンとでも言うのか、そういう物も。この世界には本当にドラゴンがいるのかと、改めてドラゴンを見てみたくなった。

 もちろん人と一緒にいても襲ってこない、優しいドラゴンに会いたい。襲われのはごめんだ。ただでさえこの世界に来てすぐに殺されかけているのに。


 他に俺が気になったのは、俺の頭の上で回っているライトだ。ライトが回る? そう俺も最初は見間違いか達思ったけど、俺の見間違いじゃなく。ライトが本当にクルクルと回っていた。


 大きさ的には、母さんの手よりも小さいく、貝殻の形をしたライトのカバーみたいな物の中に、光の玉が入っていて。それが7個、円を描くように回っているんだ。

 ついでに言うと、貝殻のカバーの下部分には、ビーズのような物でできているヒモがついていて、それが淡い光に照らされてキラキラ光、とても綺麗なんだ。


 でも貝殻のカバーは、天井に吊るされている感じはしなくて。確かめようと、俺は動かない体を何とか動かしてみようと思ったんだけど、途中で諦めることに。明日起きた時に確かめてみるかな。


 はぁ、それにしても、この世界に来て3日、色々なことがありすぎだ。大体はバカ神から始まったことだが、それにしたって色々あり過ぎだろう。

 1回目はバカ神のせいで完璧に一生を終え。転生させて貰えば、本来行くべきだった家族の元ではなく、あんな最悪な家に送られ。


 挙句2回目の命の危機だ。父さん達に出会っていなければ、今頃またバカ神の所へ行っているところだった。いや、本当に、父さん達には感謝しかない。そして家族にまでなってくれるなんて。


 俺の新しい家族。俺の最初の家族はバカ神が、今は幸せに天国で暮らしていると言っていた。その辺は安心して、もちろん前の家族のことを思いながら、これからは新しい家族と、家族を楽しみたい。


 そしてそして、早速もふもふの生き物に出会うことができた。しかも2匹も俺を選んでくれるなんて。この子達に早く名前をつけてあげたい。ただモコモコって言うのもな。だけど名前を付けるのが苦手な俺。一体どんな名前が良いだろう。


 可愛い名前が良いか、それともカッコいい名前が良いか。見た目は可愛いから、可愛い名前の方が合っている気もするけど、でも本人はカッコいい名前が良いと、思っているかもしれないし。


 そうだな、モコモコ達は人の言葉を、ある程度理解しているみたいだから、俺が話せるようになったら聞いてみるか。それでもし分かれば、それぞれ好きな名前を付けてあげて。それまでは我慢してもらおう。俺はそのためにも、発音の練習をしないとな。


 それに合わせて体を動かす練習もして。とりあえずは、寝返りから頑張らないと。今は寝返りさえできないからな。とりありえずそれには腕と足をもっと動かせるようにして。

 俺の当面の目標が決まった。寝返りをする!! だ。……仕方がないんだ、赤ん坊なんだから。起きているから、ちょっとやってみるか。ま、そのうち寝るだろう。


 俺はちょっと練習してみることに。まずは手を動かして、腕を動かして。少しだったら動かせるんだよな。でもこれももう少し大きく。ゆらゆら、ゆらゆら……。まぁ、こんな感じか。


 よし次は足だ。ひょいひょい、ひょいひょい。腕よりも足の方が動かしやすい気がするな。こう、ひょいひょい、ひょいひょい。あっ!

 あんまり動かしていて、かけてもらった毛布がずれてしまった。困ったな、別にかけていなくても、部屋は暑くもなく寒くもなく、ちょうど良いからなくても困らないけど。でもなんか気になる。


 そうしてモゾモゾ動く俺。そんなことをしているともっと毛布がズレてしまい。なんで反対には動くのに、俺が思っている方には動かないんだよ。ちょっとイライラしてきたそんな時。


 俺はあることに気づいてそっちを見た。そこには俺の動きのせいで起きてしまったのか、俺のモコモコ達が起きていて、俺を見たり毛布を見たりしていた。ああ、ごめんな起こしちゃって。もう動かないから寝てくれ。

 

 と、赤ちゃん言葉で、小さな声でモコモコ達に話しかける。が、ここでモコモコ達がとった行動は。

 ちょこちょこズレた毛布の方へ歩いていくと、2匹で協力してズレた毛布を元の位置に戻してくれ。直した毛布をパシパシ叩いき、やれやれて表情をした後、俺の頭の方へ。そして俺の頭を撫でると、頬の方へ戻ってきて、いつも通り寄り添って再び寝初めて。


 ………おい、ちょっと出来過ぎじゃないか、お前達。これじゃあどっちが歳上だか分からないだろう。いや、赤ん坊だけども、本当は俺の方が歳上なんだぞ。


『ぷぴ~、ぷぴ~』

 

『ぷう~、ぷう~』


『ばぶ……』


 なんか納得がいかない。

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