第22話 高級紅茶と初めての家族との食事

 俺の飲み物は、縦長の透明な貝殻に、吸い口を付けたような物で。俺はこれから、この飲み物入れはでミルクを飲むらしい。と、俺はあることに気づいてホッとした。


 それはあれだ。赤ん坊がミルクを飲むのは? やはり母親からと決まっているが、年齢が変わっただけで、元の俺の感覚はそのままだからな、それはちょっと。確かに母親から、免疫のためにも、食事をもらうのは大切だけど。


『あなたのミルクには、たくさん大切な栄養が含まれているのよ。そして病気にならないようにもしてくれるの。後でいっぱい飲みましょうね』


 と母さんが説明してくれ。母親からとも貰わなくとも、俺は栄養をしっかりと摂れるらしい。いや、本当の良かった良かった。


 と、1つの問題が解決したのは良いが、次の問題が。ミルク瓶に入っている液体は何だ? 俺、あんな色の液体を見たことないんだが。

 ミルク瓶の中には、黄色と緑色が混ざったような、そしてちょっとミルクが混ざっているような。何ともいえない半透明の飲み物が入っていた。


 そしてそれは姉さんの飲み物と一緒だったようで。俺のミルク瓶を見た姉さんが、お揃いと騒ぎそうになって。話しが続いているモコモコ達の迷惑がかからないように、父さんがパッと口を塞ぐ。


 姉さんと一緒の飲み物? すぐに姉さんがその飲み物を飲み始める。あんなにニコニコ飲んでいるんだから、美味しいんだよな? だが新しい世界だ。姉さんや他の人が飲めるとしても、地球人の俺は?


 母さんがそっと俺に、ミルク瓶を近づけて、俺は恐る恐る飲み口に吸い付いた。すぐに飲み物は口の中へ入ってくる。こ、これは!!


『あぶぅ!!』


 俺は思わず、大きな声を上げていた。そして静まりかえる部屋の中。見れば、話しをしていたモコモコ達が全員が、俺のことを見ていた。

 わわわっ、ごめんごめん!! いや、感動しちゃって、思わず声が出ちゃったんだよ。飲み物は紅茶の味がしたんだ。ただの紅茶じゃない高級紅茶だ。


 前に会社で、海外旅行のお土産で、高級紅茶を貰った事があったんだけど。それを飲んだでから安い紅茶を飲んだ時の、残念感といったら。その最高の高級紅茶とこの飲み物は、ほとんど同じ味がしたんだ。もちろん香りも高級紅茶その物で。


 だから感動と嬉しさで、声が出ちゃったんだよ。別にみんなの邪魔をするつもりじゃなかったんだ。話し合いを邪魔したから攻撃される? 許してくれ。


 俺がそんなことを考えていると、フェリーが何かをみんなに言って、他のみんな全員が頷き。なんとみんなで俺の方へ歩いて来た。わわっ!? 本当に怒ったのか? これからは静かに飲むからさ。な?


 思わず飲んでいた紅茶を口から出してしまった俺。母さんが慌ててハンカチで拭いてくれて、合わなかったのかしらと心配してくれる。いや違くて、紅茶は美味しくて、モコモコが問題で。


 慌てて何もできない俺。いや赤ん坊だから何もできないんだが。ついにモコモコ達は俺の元へ。俺を囲んだ後フェリーが前足を前に出し、そしてそれに続いてみんなも前足を出して。


 叩かれると思わず目を瞑る俺。でもいくら待っても何も衝撃はこず、それどころかあの気持ちいい肉球の、優しい感触が。

 そっと目を開けると、モコモコ達が俺の事を撫でるように触っていた。そしてその行為が終われば、今度はみんなが俺に寄り添ってくれ。


 母さんが紅茶を飲ませてくれるのを再開する。どうもモコモコは俺の叫び声を、飲み物にショックを受けたと受け取ったらしい。それで俺を落ち着かせようといて、寄り添ってくれたのでは? とアトウットさんが言った。


 俺の喜びの叫びで、みんなに心配をかけてしまったようだ。モコモコ達ありがとう。攻撃されるなんて思ってごめんな。俺はもうモコモコ達を怖がらないぞ。


 それから俺は用意された紅茶を飲み干し、背中をさすられてゲップをし。俺が飲み物を全部飲んだのを見届けると、モコモコ達は短い会話をしてから、それぞれの場所へと解散していった。もちろんそれぞれの相手の元へだ。

 俺の叫びで、話しは強制終了したようだ。それもすまない。次は気をつける。


『とりあえず、モコモコ達は問題なさそうだな。後はその時その時で、みんながモコモコ達に教えてくれるだろう』


『そうね。みんな受け入れてくれて良かったわ』


『旦那様、お食事の用意ができました』


 みんなが落ち着いた所に、カータレットさんが食事の準備ができたと知らせに来た。こうして俺達は部屋を移動するとこに。また階段を上がって4階へ。階段はまだ続いていたけれど、よくよく階段を見てみれば、5階で階段は終わっているようだった。

 ということは、この建物は5階か? 5階は今までの階と違って、ちょっと暗く感じるけど。今度5階へと連れて行ってもらえるかな?


 ある部屋の前まで来ると、とっても良い匂いが。中へ入ればそこには大きな縦長のテーブルに、たくさんの料理が並んでいた。1箇所にはミルク便瓶が。そしてその前には台の上に籠が置いてあって。おそらくあそこが俺の席だろう。


 ああ、こんな良い匂いのする、美味しそうなご飯を食べられないなんて。早く大きくなりたい。1年は無理か? いや、1年半くらいか? はぁ、俺は大きなため息をついてしまったが、誰も気づかなかった。


 そしてテーブルの近くに、果物らしき物の山が。モコモコ達がみんなで走っていく。どうやらモコモコ達のご飯らしい。


 皆が席についき、俺は俺が考えていた通りの籠の中へ。すぐ近くに母さんが座った。そしてみんな食事の手をつける前に、食材となっている生き物や、すべてもの物に感謝して。みたいな事を、みんなで目を瞑って言った後、ご飯を食べ始めた。


 俺は、母さんの食事の合間合間でミルクを飲ませてもらったよ。ミルクは地球と同じミルクの味がした。


 こうして俺は、この世界へ来た初めての、家族との食事をしたのだった。

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