第20話 見えて分かる魔法と、モコモコ挨拶前のおめかし

 大きな玄関のドアが開けれ、ついに中へ入る俺。中はどうなっているのか。玄関と外装だけでアレだからな。中も凄いんじゃ。そう思っていた俺の考えは間違っていなかった。


 中も外装と同じ、水色や黄緑色、黄色にオレンジにと、みんな薄い色をしていたが、それがこの家にあっていて、とても綺麗だった。相変わらずキラキラしているし。


 そしてそのキラキラを、一層綺麗にしているのが、天井に浮かんでいる、シャンデリア風の物だった。けして天井から吊るされているわけではなく、本当に浮かんでいて。形は貝殻で、その貝殻1つ1つがポワァッと綺麗に光っている。

 床は一面真っ白で、これまた綺麗な床だ。俺が今見えている範囲だけだけど、汚れがまったなく、本当に綺麗な真っ白で、もしかしたら俺の顔が映るんじゃないかと思ったくらいだ。


 他にはやはりキラキラ光っている置物や肖像画、花がたくさん飾られていて、本当に全てが綺麗な内装だった。


 と、綺麗な内装に感動したけど、俺、ここでこれから暮らすのか。こんなに綺麗なんて、汚さないでいられるだろうか。ちょっと不安になってきたぞ。


『フェリー達と会わせるのは、どこが良いかしら』


『いつもの皆が集まる部屋で良いだろう。先に私がブルーとフェリーとルーを連れて行っておこう』


『そうね、お願い』


『パパ、あたしもあたしも!!』


『分かった分かった』


 父さんと姉さんが、アンディーさんと一緒に階段を上っていく。俺と母さん、そしてモコモコ達は、アトウットさんと一緒に移動することに。階段を上がって、2階まで上ると右に曲がる。


 でも階段はまだ続いていて、やっぱり最低でも3階まであることが分かった。どれだけ大きいんだ。1番上の階まで上がって外を見たら、かなり良い景色が見えるんじゃないかな。


 曲がってすぐ、2つ目の部屋へ入る、とそこは洗面所みたいな場所で。何だろう、テーマパークのホテルの洗面所って感じがした。

 そこに置いてあった台の上に寝かせられた俺。俺を置いた母さんが俺から離れると、母さんの代わりにアトウットさんが俺の側へ。


 そして母さんが別の洗面台のような場所へ行くと、何かを囁き。するといきなり母さんの前に水の塊がモコモコモコと現れたんだ。そしてその水で手を洗い始めて。思わず声をあげる俺。そんな俺にアトウットさんが教えてくれた。


『今のは魔法ですよ。皆使える魔法は違いますが、この世界に生きている全ての者が使える、とても素晴らしい力なのです。このお屋敷にも、外にも、たくさんの魔法が溢れています。グレンヴィル坊っちゃまも大きくなられたら、たくさんの魔法が使えるとよろしいですね』


 父さんも母さんも姉さんも、そして他の人達も、俺は赤ちゃんなのに、それでも丁寧に色々教えてくれる、優しい人達ばかりだ。何も分からない俺にとっては、本当にありがたい。


 そしてついに。きたきた、魔法だよ。やっとしっかり見ることができる魔法が。ザ、魔法ってのがきたよ。ここまで魔法は、クリーンとか風魔法は見せてもらったけど。後、父さんの空間魔法みたいなやつね。だけど、あんまり実感がなかったからな。


 アトウットさんの今の話だと、使える魔法はみんな違うって言っていたから、得意不得意、そして使えない魔法も、人それぞれ違うんだろう。


 俺はバカ神に魔法を使えるようにしてくれって、お願いしておいたけど、どんな魔法が使えるのか。魔法はステータスが見られるようになれば、使えるようになるって言っていたからな。

 こっちの年数の数え方は分からないけど、地球で考えれば最低でもあと2年は使えないことになる。まだまだ先は長いけど、今から楽しみだ。

 

 母さんが手洗いを終えると、俺の所へ戻ってきてアトウットさんと交代。アトウットさんも水魔法を使って、今度はその水でタオルを濡らす。心なしかタオルから湯気が出ているような?


 そしてそのタオルを持ってきて、母さんにタオルを渡すと、母さんが俺の顔を綺麗に拭いてくれた。そのタオルは温かく。


『クリーンで綺麗にするのも良いけれど、こっちの方が温かくて気持ちいいでしょう?』


 俺の見間違えじゃなかったらしい。水魔法と思っていたけど、アトウットさんが使ったのはお湯? どんな魔法なのか。水魔法を変化させることができるとか?


『それじゃあモコモコちゃん達も、おめかししましょうね』


 そして俺の顔を綺麗にした後は、またタオルを洗い、次はモコモコ達の手足を拭いてくれて。それから目が見えやすいように、改めて綺麗に毛を結ってもらった。小さなちょんまげみたいでとっても可愛い。


 最初のモコモコには青いリボンで、小さいモコモコはピンクのリボンで結ってもらった。それから片方の前足にも巻いてもらって。最初のモコモコは右足に、小さいモコモコは左足に巻いてもらい。


 2匹ともとても喜んで、しっぽを振りながら、その場で何度もジャンプしたあと、リボンを巻いてある方の前足を上げてポーズをとった。


『ぷぴぷぴ、ぷぴぴ』


『ぷうぷう、ぷうぅぅ』


 そして声を合わせて鳴き始めるモコモコ達。か、可愛い。


『さぁ、行きましょうか。そろそろ連れてきてくれているでしょう。ケニーシャが何もしていないと良いのだけれど』


『お嬢様がお遊びにならなければ、ですね』


『そうなのよね。さぁ、みんな移動よ』


 母さんが俺を抱き上げると、歌を歌うように鳴いていたモコモコ達が歌うのをやめて、すぐに俺のお腹へ乗ってきた。そしていつも通りの蹴り合いを始め。

 そうして洗面所から出て階段に戻ると、さらに上に上がる。3階に着くと、今度は左へ。階段はまだ続いていたから、4階までが確定した。


 そして3つ目の部屋の前で止まる俺達。玄関のドアはかなり大きかったが、部屋のドアもそこそこ大きなドアで。例え俺が成長しても、5、6歳になっても、開けられないんじゃと思ったよ。そして中からは父さんと姉さんの声が。


『パパ、コロコロ、ヒョンであそびたい』


『ケニーシャ、待ちなさい。先ずはモコモコ達をブルー達に合わせると言っただろう?』


 姉さんははコロコロ? ヒョン? で、すでにここで暮らしているモコモコ達、ブルーとフェリーと、自分のルーちゃんと遊びたいらしい。早くモコモコ達と合わせないと。


 アトウットさんがドアをノックして、俺達が来たことを伝える。父さんがモコモコを全員抱っこしたのを確認して、アトウットさんがドアを開けてくれて。いよいよ俺達は、ブルー達がいる部屋へと入った。モコモコ達が喧嘩しなければ良いけど。

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