第19話 お屋敷と使用人

 思わず固まってしまった俺。だけど何とか正気に戻り、どうにか見える部分だけでもと思って、俺は目を動かす。だけどあまりに家が大きいせいか、建物を全部把握することはできず。途中で諦める事に。


 これが家? 家っていうよりお屋敷って感じなんだけど。色は薄い水色で、やっぱり他と同様、少しキラキラ光っている気がする。階数は見える所が2階部分までだったけど、でもその後も続いているから、多分3階まではあるはずだ。


 上だけじゃない。横にも広くて、あの茶色の大きく見える物が玄関なんだろうと思うけど、玄関だけでもかなり大きい。今俺が見ている場所からかなり大きく見えるんだから、近づいたらもっと大きく見えるわけで。どれだけ大きな玄関なのか。


『ただいま』


『さぁ、グレンヴィルここが私達のお家を、そして今日からグレンヴィルが過ごすお家』


 母さんが俺を少し起こすようにして抱き直してくれたけど、結局最初とあまり変わりなかった。大きすぎてダメなんだ。


『さぁ、そして彼らは、家で働いてくれている人達よ。みんな私達のために、とても良く働いてくれているの』


 俺達の前に並んでいた人達数人が、俺の近くまで来て挨拶してくれた。


『このお屋敷の全てを任されております、アトウットと申します。グレンヴィル坊っちゃま、よろしくお願いいたします』


『私の名前はアンディー。キュリス様の秘書をしております。よろしくお願いいたします』


『はいは~い! 私の名前はリズで~すぅ!! グレンヴィル様のお世話を任されましたぁ。よろしくお願いしますねぇ』


『リズそんな挨拶がありますか! グレンヴィル坊っちゃま、私はカータレットと申します。よろしくお願いいたします』


 みんな赤ん坊の俺に、しっかりとした挨拶をしてくれた。1人はちょっと独特な話し方で、お、おう、と思ってしまったけど。そのうち慣れるだろう。

 そして他に、今挨拶をしてくれた人達の後ろにいる人達も、ここで働いている人達なんだよな、と見ていると。父さんが、本当は他にもまだまだいるが、今集まれる人だけ、とりあえず集まってもらったって。どれだけこの家で働いているんだ?


 お爺さんがアトウットさん。この感じだと筆頭執事って感じかな? 父さんより若い男の人がアンディーさんで、聞いたそのまま秘書をしていると。多分ついでに秘書以外の仕事もしているんじゃないかな? 後ろに並んでいる男の人達と同じ洋服を着ているし。


 そして女の人、カータレットさんはメイド長って感じか? それでもって、明るい独特の挨拶をしてくれたのが、メイドのリズさん。俺のお世話を任されたって言っていたけど。俺にお世話係が? この俺に?


 こんな大きな家、じゃなくてお屋敷に住んでいる父さん達。父さん達って実はかなりのお金持ちだったのか? そこの所、全然考えていなかったな。一体どんな人達なんだろう。これも後で調べないと。


 うん、筆頭執事とかメイドとか、俺初めて見たよ。まさか階級みたいなものとかもあるのか? 俺、そういうの良く分からないんだけどな。まぁ、なるようにしかならないか。俺はここで生きていくことが決まったんだから。


 とりあえず俺も挨拶をした方が良いよな。


『ばぶぅ!! ちょお!!』


 初めまして、これからよろしくお願いします、と赤ちゃんの言葉で伝える。一応手も振ってみた。そうしたら喜んだのがリズだ。


『きゃあぁぁぁ!! カータレット様、挨拶してくれましたよぅ!! かわいいですぅ!!』


『リズ、いい加減にそのテンションをやめなさいと、何度言ったら分かるのです!! もっとシャキッとなさい! これからあなたがグレンヴィル坊っちゃまのお世話をするのですよ!』


『は~い』


 何だろう、このテンション、俺、本当に大丈夫かな? 


『それでキュリス様、モコモコはいかがでしたか?』


『ああ、それならここに』


 父さんが籠に被せてあった布を取る。俺と同じでモコモコ達も途中で眠ってしまったらしく、布をかけてもらっていた。布を取ると、あくびをしながら起きたモコモコ達。周りを見て、ビックリしていた。起きていきなり、こんなにいっぱい人がいたらな。


 すぐに警戒態勢とでもいうのだろうか、ちょっと姿勢を低くし、ぷいぷぴ、ぷうぷう、威嚇みたいなことをした。まぁ、まん丸すぎて、あんまり姿勢が変わったようには見えないし、この見た目の威嚇だからな。でもそこが可愛い。


 それに侮るのは危険だ。邪魔をすると魔法を放たれたり、蹴りを入れられてしまう。


『大丈夫よ。みんな私達の家族だから、怖がらないで』


 母さんに言われて周りを見渡し、そして匂いを嗅ぐモコモコ達。少しすると確認が済んだのか警戒態勢をとき、元の可愛いモコモコに戻った。

 そして父さんが籠を俺に近づければ、ちょこちょこ歩き、俺のお腹の上に乗ってきた。うん、相変わらずどこに座るかで蹴り合っているけど。


『これは…、2匹に選ばれたのですか?』


『ああ、私もビックリしたんだが。最初すぐに1匹寄って来てくれたんだが、その後私とケニーシャが外へ出ているうちに、もう1匹寄って来たらしい』


『2匹とも、すぐにグレンヴィルに寄り添ってくれたのよ。まぁ、ちょっとした話し合いはあったのだけれどね』


『ではモコモコの寝床をもう1つ、用意しなければいけませんね』


『部屋の準備は?』


『知らせが届いてからすぐに。後は旦那様方がお買い物された品物を』


『そう。じゃあそっちは任せるわね。私達はグレンヴィルとモコモコ達を。ブルーとフェリー、ルーに会わせましょう。お茶の準備を』


『畏まりました。行きますよリズ』


『は~い』


『は~いではなく、はい!! です。まったく』


 アトウットさんが他の人達に指示を出し、集まっていた人達は俺に軽く挨拶をしてくれた後、解散していった。そして俺達といえば。あの大きな玄関と思われる場所へと移動して。俺の考えはあっていた。大きい玄関と思っていた物は確かに玄関だった。玄関だったが…。


 え? こんなに大きな玄関? こんなに大きな玄関いる? って程、大きな玄関で。もしこの世界にトラックがあれば、そこそこ大きさもトラックが通れそうなくらいに大きかった。

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