第17話 いつの間にか付けられていたネックレス

『そろそろ交代の時間だな』


『そういえば、あなたは良いの?』


『私は5日後に戻るんだよ。この前調査に当たった者達は、全員7日間の休みがもらえたんだ』


『そうなのね。じゃあ少しだけど、ゆっくりケニーシャとグランヴェルと過ごせるわね』


『ああ。君ともね』


 見つめ合う父さんと母さん。うん、まぁ仲が良いことは良いんだけど、あんまり見せつけられるのは。もしかしてこれが父さんと母さんの日常なのか? 俺的にはあんまり見たくない光景なんだだ。いや、本当に仲が良いのは良いんだけど、それが親ってなるとね。


『おっ、ギデオンも戻ってきたな』


 見つめ合っていた父さん達。ようやくそれを止め、再び上を見ると、またあの綺麗なリュウグウノツカイのような魚がたくさん泳いできた。が、どう見ても父さんがその魚を見て、名前を呼んでいるように見えるんだが。


『そう言えばギデオンの所も、子供が生まれたばかりだったな。もしかしたらグレンヴィルと良い友達になれるかもしれないぞ』


『そうね。落ち着いたらアーリーンに会いに行ってみるわ』


 そしてまた歩き出す俺達。そういえば海も気になるけど、父さん達は海に生きる者達。泳ぎも得意なはずだけど、どうやって海の中で移動とかしているのかな? 


 もしかしてそのまま泳いで? それか魔法で空間みたいな物を作って、その中に入って移動するとか? だっていくら海に生きる者でも、ずっと息をしないで泳げないだろう?

 それとも人とは違う種族だから、自然と水の中でも息ができたりして。でもそれだったら俺は? 父さん達と違って人間の俺は、ずっと息しないで泳ぐことなんかできないよ。


 この場所がどれだけ深い場所か知らないけど、結構深い感じがするんだよね。ということは、海面に出ることもできないってことで。

 この海の中で生活するのはもちろん良いよ。だけどいつかは陸と海、色々な場所へ行って、もふもふ達に出会いたいよな。


 考えながら、ふと俺は首についている物を触った。でもそれを見ていた母さんが、慌ててそれを止めてきて。


『ダメよ! それに触っちゃ!』


『ああ、やっぱり気になるか。ここは安全だから外してやっても良いんじゃないか?』


『ダメよ!! もしもの事があったらどうするの? この子は私達と違うのよ』


『まぁ、確かにそうだが。グレンヴィルはまだ何も分からない赤ん坊だ。触るな、外すなって言っても分からないだろう。しばらくは私達か、他の者達が側にいる時はその者が持ち、慣れてきたらずっと付けたままにすれば良い』


『大丈夫かしら。それに予備も揃えておかないと』


『今はネックレス以外にも、色々あるからな。この子にあった物を後で選ぼう。いくつか用意して。そうだな、ある程度身近な人物には、先に渡しておくのも良いな』


『そうしましょう。私それが心配よ』


 そう、俺があの最初の部屋で目覚めた時、最初は周りのことが気になって気づかなかったんだけど。お尻を綺麗にしてもらってさっぱりした時に、首にある物が付いていることに気づいた。


 貝殻が何個か付いていて、それから真ん中に真珠のような丸い石が付いている、ネックレスを付けていたんだ。何でネックレスとは思ったが、わざわざ付けるってことは、何かあるんだろうなと思っていたけど。


 どうやらこのネックレスは俺にとって、とても大切な物らしい。もし俺が付けないのであれば、側にいる人達が持っていないといけないような。

 一体何なんだ? 別に悪い物って感じはしないし、大切な物ならずっと付けているけど。何か分からないと気になるな。


 俺は触っていた手を離す。それを見ていた母さんが良い子ねと、俺の頭を撫でてくれた。まぁ、そのうちどういう物か分かるだろう。そういえばネックレス以外もあるって。そっちも気になるな。何か気になることがどんどん増えていくな。


 それからも歩いて、建物が集まっている場所の端まで来ると、そこには大きな花の輪があり、どうもその花の輪が、この建物の集まっている場所の入り口になってい

るようだった。そしてそこで父さん達は止まると。


『ここからはウォーターホースに運んでもらおう』


『そうね』


『わ~い!!』


 ウォーターホース? 新しい魔獣か? 名前を俺の知っているもので考えると、水のウマって感じなんだけどな。


 ワクワクしながら父さん達が進む方向を見ていると。少し行った所にその生き物はいた。うん、俺が考えていたよりも全然大きかった。父さんと比べても、かなり大きく見える。


 そこにいたのは大きな大きな、水っぽいウマだった。確かにウマなんだけど、全体的に透明感があって水っぽい。それから立て髪が揺れると、そこから水の粒が飛ぶんだ。うん、正にウォーターホース。そしてそのウォーターホースには、馬車のような物が繋がれていた。


『これはキュリス様、シェリアーナ様』


『家まで送ってくれるか?』


『はい。ああ、この子が新しい子ですね』


『ええ、グレンヴィルというの。よろしくね』


『グレンヴィル君、こんにちは。初めてのウォーターホースを楽しんでくださいね』

 

 そうして馬車のような物に乗った俺達。うん見た目通り馬車だった。そしてさっきの人の声が。


『それでは動きます!!』


 カタンっと少しだけ音を立てて、馬車が走り始める。すると窓のところに水滴が。多分ウォーターホースの水だろう。


『ばぶぅ』


『どうしたの? ああ、これはお水よ。お馬さんのお水。そうだわ、着いたら少しだけ見させてもらいましょうか』


『ウォーターホースは暑い日には、とっても気持ち良いんだぞ』


『あのね、あのね、おみずをブルブルって。みんなげんき!!』


 ブルブル? 元気? ん?

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