第9話 買い物は疲れる……、いよいよあの子の所へ

 それから少し歩けば、建物がずらっと並ぶ場所へ到着。まぁ、人も大きいと思っていたけど、建物も大きいのなんの。この世界の人、まぁ、種族にもよるだろうけど。みんなこんなに大きいのか? それに合わせて建物も?


『違うよ。それは君が赤ちゃんだからそう見えるだけ』


 と、話しができなくなったはずの、バカ神が話しかけてきた。


『おい、もう話せないんじゃなかったのか?』


『ああ、まだ大丈夫だったみたい。でもこれで本当に最後。周りが大きく見えるのは、君がまだ生まれたての赤ん坊だから。大きくなれば普通になるよ。まぁ、君が考えた通り、種族によってはあってるけどね。大きな種族もいるけど、そこの海に生きる者達は、地球と同じくらいだよ』


『そうなのか』


『あ、それと、君が楽しみにしていた、もふもふだっけ? もうすぐ会えそうだよ。じゃ、そういことで、今度こそまたね』


 そう言って途切れる会話。もふもふ? もうすぐ会える? それを聞いた俺のテンションは爆上がりだ。手を動かし足を動かして、喜びを表現する。……あんまり動いてないけど。


『あら? 急に動き出したわね。いっぱい人の居る所へ来たからビックリしたのかしら。表情も何かおかしいし』


『そうだな。まずはとりあえず様子が分かるように、この辺を一周してみるか?』


『パパ、ママ、グレンヴィルわらってるよ?』


『え? 笑ってる?』


『確かに目を細めているけど、口元がね。言われてみれば笑ってる? いえ、ニタッとしている?』


『でも、よろこんでわらってる。ねぇ』


 ケニーシャの言葉に、俺は手を動かして反応する。


『ケニーシャは他の赤ん坊のことも、大人がわからない表情でも、よく分かるからな』


『ケニーシャがそう言うのなら、そうなのかしら』


『じゃあ、笑っているのなら、このまま買い物をするか』


 ケニーシャのおかげで、俺が喜んでいるのが伝わって、そのまま買い物続行となった。お姉ちゃんありがとう。でも俺の喜んでいる表情を見て、変な顔をしているって。俺は普通に喜んでいただけなんだけどな。


 それにしても……。買い物があんなに疲れるとは、この時の俺は思ってもいなかった。まさか最初の買い物でほとんどの体力を使い果たすとは。


 最初の買い物は話していた通り、俺の洋服から買うことに。入ったお店は子供服ばかりが売っているらしく、可愛い洋服がたくさん並んでいて。内装も子供向けに作られていた。

 売られている子供服は、父さん達が着ているような、少しキラキラ光る、ヒラヒラな洋服がほとんどだったけど、ちょっとずつちゃんと違いが出ていて、刺繍も施されているから、見ていて結構楽しかった。


 そう楽しいまでは良かったんだ。その後母さんがお店の人に、何着か俺に合う服を選んでもらったんだけど。その枚数が。

 最初はサイズを確認するために着せられて、着せられるのはそれで済んだんだけど、その後何枚、寝ている俺の上に洋服が置かれていったか。


 寝ている状態で、洋服を合わせているだけだから。ただただ、されるがままになっていた俺。しかしいくら動きにくいとは言っても、ずっとじっとしていられるわけもなく。手を足を動かせば、もう少しだからじっとしていてと。


 まさか動かないことで、我慢することで体力を使うとは。最後は洋服を選んでもらっていて申し訳なかっかけど。必殺攻撃『泣く』で、洋服選びを終わらせてもらった。

 ついでに父さんの追攻撃、『もうそろそろ良いんじゃないか?』も、母さん達に効いて。その日は6着ほど洋服を買ってもらった。


『赤ちゃんは成長が早いからな。こんなに小さい服は今のうちだけだな』


『もう少し経ったら、また買いに来ましょうね』


 ……その時はもう少し我慢できるように頑張ろう。


 次は俺の食事、ミルクを買いに。まさか子供用の食事を売っている、専門店があるとは。赤ちゃん用のミルクだけでも10種類も売っていた。


 俺はその中から、俺が1番気に入った物を選んでもらうことに。お店の人や父さん達の話から、ミルクの成分にそんな変わりはないけど、それぞれ味が違うらしく。赤ちゃんが喜んで飲むミルクを選ぶって感じらしい。


 スプーンにちょっとずつミルクを付けて、それを俺が舐める。その繰り返しで全部舐めてみて、俺はイチゴ味を選んだ。それとバナナ味を。まさかこの世界に同じような味があるなんて。バカ神はほとんど同じて言っていたけど、これなら本当に気にしなくて大丈夫そうだ。


 2種類のミルクを買ってもらい、それと母さんが普通のミルクを選んで、ちょっと元気が復活した俺。次は俺の寝具を買いに。

 そこでは父さん達の洋服と同じように、綺麗な布で作られている布団と、しっかりとした地球と同じようなお赤ちゃん用の柵付きベビーベッドが売られていた。


 ベッドは1つあれば、長く使えるってことで、少し大きめのベッドを買ってもらうことに。おまけって事で、枕は俺の頭の高さに合わせたピッタリの物を、その場で作ってもらった。

 買ったベッドに枕を置いて、お試し寝をした時の、布団と枕の気持ちいい事。この世にこんなに気持ちの良い物があるなんて。これが地球にもあったなら、俺は不眠にはならなかっただろうなと、本当にそう思えるほどの気持ち良さだった。


 が、これはお試し。すぐに抱き上げられ、買い物は終了に。早くゆっくりこのベッドを味わいたい。


『さて、今日買うとりあえずの物は、これで終わりだな』


『そうね』


『じゃあこれもしまってと』


 父さんが何か唱えると白い丸が現れ、その中に今買った寝具類を入れる。そうすると寝具類はシュッと白い丸に消えていき。


 最初、俺の洋服をしまっているのを見て驚いていたら、姉さんが気づいてくれて、あれは魔法だって教えてくれた。父さんや母さん、大きな人が使っているって。空間魔法みたいなものなのか。

 この魔法が使えれば俺も成長した時、どんな事をしているかは分からないけど、かなり楽になりそうだ。


『さぁ、じゃあ、あそこへ向かうか』


『ええ。あの子の所へ行きましょう』


『ルーちゃんのかぞく!』


 きた!! 俺が1番気になっていたあの子。一体どんな子なんだろう。


      *********


お読みいただきありがとうございます。

この後、夕方17時、夜20時に更新します。

よろしくお願いします。

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