冴えない陰キャだけど勇者としての才能だけはある俺は、ドSで学園一の美少女である幼馴染にもてあそばれるらしいです
トドキ
とある未来の結末
「お前……強くなったんだな」
細々とかすれた声で、彼はこんな言葉を残して最後の息を引き取った。彼の体を覆う鉄の鎧は大量の血で汚れ、その悲惨な死にざまを物語っている。
これが、俺が望んだ……けつ、まつ?
俺は右手に握っていた剣を落とし、その場にひざまづいた。
すると、そんな俺の背後から『彼女』がゆっくりと近づいてきて、そっと口を開く。
「そう。あなたはこうなることを願った。ずっと、最初からそうだった」
『彼女』の透き通るような甘い声が、そよ風とともにこの澄んだ草原に響き渡る。壮大な草原に比べると、ひとつの点でしかない俺たちの元にも、その音が届く。
「違う……俺、こんなの、望んでない」
「うん、あなたはそういうと思ってたよ。彼を、殺してしまう前から。でも、でもね。そしたら、私は一体、何のために、あなたを選んだの? どうして、みんなを犠牲にしてまで、こういう結末にしなくちゃいけなかったの? 」
『彼女』はもっと俺のそばによって、手を強くつかんでこう言った。
「俺は……俺は」
「ねえ、どうして? 」
握られた俺の手は、『彼女』の眼から流れ出る何粒もの涙にどんどん濡らされていく。
悲惨なこのシチュエーションに合わないくらいに晴れているこの空間に、小さな雨を降らしているみたいに。
そしてその雨は、俺と同時に彼の死体にも注がれていた……
……あの日、ちゃんと断っておけば、こんなことにはならなかったのに。
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