第7話 約束

航とはそれから会うこともなく、あの夏の夜の約束なんて、すっかり忘れてしまったまま、大学2年生になった。




「真帆!」


駅の改札を出たところで、名前を呼ばれ振り向くと、雄大が走って追いかけて来ていた。


「帰りが一緒になるの久しぶり」

「ずっとバイト入れてたからね」

「真帆はGW、地元に帰るんだっけ?」

「そう。明日の朝イチで帰って、最終日の前の日にこっちに帰って来る予定」

「最終日空けといてよ」

「何?」

「航が真帆に会いたいって」

「そうなの?」

「真帆と約束したからって」

「約束?」


約束……


「去年の夏にみんなで海に行ったろ? あの後、航のやつ、すっごいやる気出して第一希望合格したんだよ。それで親が喜んで『卒業旅行の費用全部出してやる』って言ったもんだから、卒業式終わってすぐアメリカに10日間も行ってさ、帰って来たら家は決まってないし、引っ越しの準備もまだだしで、こっちに来る余裕がなかったらしい」


約束……


「一人暮らしするの?」

「家からじゃ通えないしね」

「高校生でひとり暮らしなんだ」

「何言ってんの? 航は大学生だよ」

「え?」

「あいつ、大学1年生」

「嘘……」

「もしかして、あの時、中学生だと思ってた? 航は童顔だけど、僕の1学年下」

「受験って、大学受験だったんだ」

「そうだよ。で、何の約束したの? 指切りもしたって聞いたけど」



約束……



指切り……



約束……



思い出した。



軽い気持ちでした約束は、かわいい中学3年生が相手なんかじゃなくて、高校3年生が相手だったんだ……



でも……そんな……深い意味は……ないよね?

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