劣等貴族のレクイエム -訳アリ転生の人生劇- (休載中)

hard(ハルト)少佐

プロローグ

こんなエスニックジョークがある。

『最高の人生とは、アメリカ人の給料を貰い、イギリス人の家に住み、日本人の妻を取り、中国人のコックを雇う。』

反対に、

『最悪の人生とは、アメリカ人の妻を持ち、イギリス人のコックを雇い、日本人の家に住み、中国人の給料を貰う。』


誰がこんなうまいことを考え付くのか。だが、こういう風刺的なジョークはしっかり的を射ていることが多い。つまりこれは、幸せな人生の典型例、お手本と言えるのである。

 ちなみに俺の人生はどうなのかって? 少なくとも最高の人生ではなかったさ。

平均なのか、それより下なのか。…いや、間違いなく上ではない。


 幼い頃に両親が死んで、俺は施設で育った。

普通に食事も寝床も与えてもらえて、学校にも通わせてもらった。

施設の人たちはみんな…哀れな俺に対して優しく、手を差し伸べてくれたのだ。

 でも俺は…施設の職員たちに対して、「血の繋がりなんてない」「この人たちは仕事で俺に愛情を注いでるだけ」、なんて考えちゃって。

人間不信な奴に、俺は育ってしまった。今思うと本当に申し訳ない。


 俺は理系男子だ。よって、科学が好きだった。

自主的にたくさん勉強したし、それを生かす人生を送ろうと思ったさ。

追加で、俺は所謂ミリタリーオタクだった。「オタク」と呼べるほどではなかったかもしれないが、それなりの興味、知識量があった。

…きっと、科学が好きだったからだろう。


 それら二つの「好き」が繋がってか。俺は就職した。

――軍需品の設計局に。


 人生というのは晴天の霹靂。糞みたいな人生が、突然良い方向に変わるパターンだってある!ここまでは順風満帆だ…!


「さぁ!自分に合った仕事も見つかったことだし、出来るだけ良い人生のパターンに沿えるように生きよう!」


 そして現在、俺が務める軍の設計局では、緊急事態のブザーが鳴り響いている…。

どうやら開発中の兵器が暴発して、設計局全体に被害が広がったらしい…。


「…。いや!マジでヤバい⁉ この設計局!やたらと予算が少ねぇ状態で運営してると思ったら!やっぱりこういう所に弊害が出てるじゃねぇか‼」


まずい…確か開発中の兵器は爆発する系だよ…! 早く逃げなくては―――。


(――なんだ⁉ まさか有毒ガス…⁈)


 どこかからキツイ匂いが漂う。

漏れ出した気体が、何かと混ざったのか?

これは間違いなく吸ったらアウトな奴だ…!


―――だが、一歩遅かった。どうやらガスを少し吸ってしまったようだ…。


(あぁ…マズい。足から力が抜ける…。――畜生!)


感覚が麻痺して、足に力が入らない。

腕で地を這うのがやっとだ。だがその腕からも徐々に力が消えていく。

脳内で血管が破裂したらしい…、鼻血が垂れてきている。

目は充血し…視界は消え去る。


「――ちくしょう…せっかく、ここまで来たのに…! 俺は―――」

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