第134話 ちゅいちたゆ、ぴっと!!

蜘蛛が出現します。

苦手な方はご注意ください。

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 私がお昼寝している間に50階層に到達です。

 目を開けると辺りが真っ暗で、何も見えない状態だった。

 暗視に切り替えて周囲を探索してみると、罠だらけの道が続いていた。


 普通の人には何も見えないよ!



「あ、たたや箱」


 暗視の目に宝箱が映った。

 でも、地図では赤点になっていて、鑑定すると[宝箱(偽)]となっている。


 これが、かの有名なミミック!



 途端に何故か超有名某RPGのセクスィー姉妹の曲が頭の中に流れた。



 何故?!



 鉄扇、は危ないので、扇子を再構築してパタパタさせる!

 レーヴァの背中で!


「どうしたんだい?姫?」

「ミミッちゅ、たたたう!たったた、たーたーたーたーたー♪」

「姫が楽しそうで何より」

「お嬢が楽しけりゃ、それでいい」



 バスッ!



 ミスティルがニコニコ笑顔で手元も敵も見ず、超速で矢を放つ。


「ちゅいちたゆ、ぴっと!!」



 クリティカルヒット!



「うん?お嬢すまん。今のは分からなかった」



 鳳蝶丸達が私の拙い言葉を完全に理解しているのは、ウル様に世界言語理解をいただいたかららしい。

 そして、ミスティルの強い希望により、私の言葉だけ言ったまま聞こえ、意味を文字で浮かび上がるようにしてもらったんだって。


「舌足らずの主の言葉を聞き逃したくありません」


 ウル様と伝説の武器一同深く同意し、全員一致で文字化に決定したんだって。



 なじぇぇー?



 しかし、それをもってしても伝わらなかった[ちゅいちたゆ、ぴっと]、最強!

 クリティカルヒット、、、だよ?




 ミスティルの矢を受けた宝箱(偽)はすでに消え、「自動収集の箱」に20カラットくらいのピンクダイヤモンドと透明の小粒ダイヤモンドをふんだんに散りばめた指輪が収納されていた。


「しゅごい!」

「これは主の指輪にしますか?」

「んーん、いなない」


 売って現金化一択。

 お金は何かに使うつもり……何に使うかは未定だけれど。




 宝箱を拾いつつ、51階層階段前に到着。


「お嬢。降りたら結界1を張ってくれ。外からの音と視界の遮断はしたほうが良いかもしれん」

「わたった。ボシュ、いゆ?」

「ボスではありませんが、ある魔獣が沢山出現します」


 でも何で音と視界の遮断って言ったんだろう?

 私は足手まといになるから結界には入るけれど、3人が戦っているし戦況を知るのに音と視界を遮るわけにはいかないよ?



 52階層に到着。

 直ぐに私中心で半径3mの結界1を張った。


 キョロキョロと辺りを見回すと、ここはただただ広いドーム型の洞穴と言うことが分かった。

 地面の60%は地下湖があり、水の中は闇色で何も見えない。

 そして、岩壁には尋常じゃない数の鉱石が埋まっていてキラキラと輝いている、パッと見はとても美しい光景だった。



「来るぞ」



 ザワザワザワザワ………


 ザブッ



 地底湖からでっかい蜘蛛………

 蜘蛛さんなのに、水の中からご登場!



 叫びそうになったのを何とか飲み込む。

 3人が戦いに集中出来ないといけないので、結界から外に音を出さないを設定する。



 ぴゃー!!!

 5匹くらいいるんですけどーーー!



 1体で4tトラックくらいある大きさ。

 鑑定すると、デドゥリーポイズンタランチュラ(ゲートキーパー)と表示された。


 3人にそっと結界3を二重にする。私達には毒も効かないけれど。



 ビュッビュッ!



 タランチュラの牙から毒が飛び出す。

 3人は軽々と避けながら討伐を開始した。



 ベチャッ!



 レーヴァに攻撃しようとしたタランチュラの毒液が結界に飛んできて、体がビクッてしたよ。



 シュシュシュ!

 シュシュシュ!



 今度は体毛を飛ばしている!



 カカカカカッ!



 体毛が地面に突き刺さる。


 刺激毛だっけ?

 魔獣のタランチュラは剛毛何だね。固くて痛そう………。



 タランチュラを討伐すると、また次のタランチュラが地底湖から現れる。

 次々に出てくるけれど、終わりはあるの?


 私は皆を見守るしかなかった。



 何体かが足先から糸を飛ばし、器用に岩壁を移動している。

 それらをレーヴァが大剣で焼き切った。



 ダアン!!!



 プスプスと焼け焦げた蜘蛛が仰向けで落ちて来る……う、うわあ。



 鳳蝶丸が地上を這っている蜘蛛達を、細かく切りきざ………。

 見ないほうが良いかも!



 まだ水中にいる蜘蛛達は、ミスティルが矢を放って討伐して行く。

 その合間に右手をスイッと上げると、イバヤちゃん達が絡み合って何本もの太い槍の様になり、水の中から上へとイバ槍(イバヤちゃんの槍)を突き出した。


 もちろん大量の蜘蛛を串刺…………。



 ぴゃー!

 見てはいけないぃぃ!



 鳳蝶丸が、視界遮断したほうが良いと言った意味を今更理解した。

 次回から、3人に視界遮断するように言われて虫さんの時はそうしようと心に誓う私だった。




 しん…………。




 少しして、タランチュラが出現しなくなった。

 索敵すると、もう魔獣はいないみたいでホッとする。


 結局、それほど時間がかからず討伐完了。

 蜘蛛達は討伐された順に消えてゆき、ドロップ品が「自動収集の箱」に収納された。



「おちゅたえ、しゃま、でちた」

「お疲れ。お嬢、視界遮断せず見ていたか?」

「うん。見てた。皆、頑張ってゆ。ちんぱい、ちた」

「ありがとうな。でも俺達は負けないし、心配しなくても良いぞ」

「姫、怖かっただろう?大丈夫?」

「うん。だいじょぶ」


 ミスティルは私を抱っこして、ギュッと抱きしめてくれた。


「取り敢えず先に進むか。一定時間を過ぎると、蜘蛛がまた復活するしな」

「あいっ」

「少し採掘して行きます?」


 うーん。

 こんなに沢山あるから、少し採っていこうかな?


 何を持っていこう?と思って鑑定すると、どの鉱石も採掘した直後にこの部屋の天井が全て崩壊すると表示された。


「採ちゅちゅ、天井、ちゅぶえゆ」

「ん?」

「天井、ババーンッて、壊えゆ」


 両手をブンブン振って説明すると、皆がなるほど、と理解してくれた。


「どの石が罠だ?」

「じぇんぶ」

「全てか」


 鳳蝶丸達はこのダンジョンに来たことがあるけれど、採掘はしていないから知らなかったらしい。


「じゃあ、姫の欲しい石を1つだけ採掘しようか?」

「いなない。危にゃい」

「大丈夫だ。俺が採ってくる」


 でも、鉱石より鳳蝶丸の方が大事だよ?

 すると、お嬢の結界があるから問題無いと、私の頭をナデナデしながら破顔した。


「鳳蝶丸は3人の中で一番素早いので大丈夫ですよ」

「主と俺とミスティルは横穴近くで待機してるよ」

「了解。で、お嬢はどれが欲しい?天井にあるのでも問題無いぜ」



 うーんと。



「遠慮するな」

「どんなに遠くても大丈夫ですよ」

「早く決めないと、また蜘蛛が蘇っちゃうよ?」


 大量の蜘蛛はいやだぁ…………。

 じゃあ、あの、天辺にある最高品質のドでかいブルーダイヤモンドがいいな。


 いや、心配と言いながら、よりによって天辺と言う。

 自分でも鬼畜だと思うけれど。



「わかった。待ってな」


 鳳蝶丸は気にするとなくニコッと笑い、飛行ひぎょうで天井に向かった。


「わたし達も行きましょう」

「ああ」


 レーヴァに抱き上げられる。

 ミスティルとレーヴァは躊躇なく地底湖に入り、水の中を飛行ひぎょうして一番奥に移動した。


「鳳蝶丸!」

「了解!」


 レーヴァが鳳蝶丸に声をかけると、直ぐに採掘が始まる。



 パラ………。パラ、コン、コン………。



 すると、天井付近や壁から土や小石が落ちて来た。



 ボコッ



 鳳蝶丸が原石を採掘した直後、猛スピードで私達のいる方向へ下降してくる。



 ゴゴッ!

 ガガガ、ガガガガガガ!



 天井はすでに崩壊を始め、大きな岩が地底湖に落ちてくる。



 ダブッ!ダブンッ!



 水の中にも天井であった岩が沢山落ちて来る。

 でも、水中は落下速度が鈍るので、少しの間鳳蝶丸を待つ。



 ザッ!!!



 鳳蝶丸が地底湖に飛び込んできた。

 こちらに近付きながら手で進めと合図している。

 私達は落ちて来る岩の間を縫って、下の方へと移動した。



 水の中は真っ暗で何も見えない。

 暗視に切り替えると、湖の底の方に丸い泡がたくさん見えた。

 大きさはまちまちで、泡の中で何かがモゾモゾ動いている。



 シルエットが蜘蛛!



 あれがもっと大きくなって、デドゥリーポイズンタランチュラ(ゲートキーパー)になるんだね。



 あと不思議だったのが、落ちて来る岩は湖の半ばでスウッと消えること。


「ここはダンジョンだから、あの砕けた沢山の岩は一旦ダンジョンに吸収されるんだ。さっきの部屋はしばらくするとまた元通りに復活するよ」


 レーヴァの説明でダンジョンの仕組みがわかる。

 天井が崩れてそのままじゃ、ダンジョンにとっての栄養が入ってこないもんね。


 っていうか、今回も言わせて?



 ダンジョンコアの仕掛けが厳しすぎて、強者も下まで降りてこないと思うよ。オススメするわけじゃないけれど!



 あと、毎度思うけれど、ウル様は勇者(想定)に厳しすぎ!

 こんなにややこしくちゃ勇者(想定)が伝説の武器に辿り着けないからね!




 無事鳳蝶丸と合流し、湖底の暗い横穴に入る。

 しばらく泳ぐと奥の上部に明かりが見えた。



 チャプン…………。



 水面から顔を出す。


「わあーっ、ちえーい!」


 それはそれは美しい光景だった。

 おびただしい数の巨大な水晶の六角柱が、垂直に伸びたり、折れて横たわったりしている。

 水晶は横幅だけでもミスティルの背丈より1.5倍はありそうなほど太い。


 水晶クラスターも沢山あり、辺り一面キラキラしていて、まるで水晶の国に来たみたいだった。



「人の子には過ごしにくい場所だけどね」


 レーヴァに言われ周りを鑑定すると温度が100度近いし、湿度が85%超えているし、ついでに毒ガスが充満している。


「しゅどい」


 凄い危険な場所なんだね。

 私達以外来られないかも?ってちょっと思う。



 水晶を避けながら飛行ひぎょうで進む。

 しばらくすると、水晶クラスターだらけの広い洞穴に出た。


「ここは右と左の入口から丁度中心辺りだ」

「あれがダンジョンコアです」



 鳳蝶丸とミスティルが指差した方向も水晶クラスターだらけで、一見どれがダンジョンコアなのかわからない。地図はしっかりダンジョンコアの場所を指しているので、直ぐわかったけれど。


 ダンジョンコアにゆっくり近付きながら様子を見る。

 辺りの空気が何だかビリビリと震えていた。


「攻撃はしないでくださいね?もし、仕掛けてきたら…………」


 ミスティルが静かに語りかけ、右手の拳をダンジョンコアに見せつけると、



 ビリビリビリビリビリビリッ!



 凄い勢いで空間自体が震えた。

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