第107話 幼児、一人芝居を目撃される
翌日はたこ焼きです。
念の為、お姉さん達やアスナロリットさんにも確認したら、この領は比較的海が近いので茹でタコや干しイカ等食べるんだって。
それでは、憂いなく焼いていこう!
熱や匂いが籠もりそうなので、今日は外で試行作業します。
テント前に帆布シートを敷いて、粉塵・防砂、清浄の結界を張り、簡易テーブルの上に防火の結界を張って、魔道具化した業務用たこ焼き機のセット完了!
まずはウチの3人に作ってもらうよ。
さあ!思い出せ、日本人の私!
あの、イベントで大量に作らされた記憶を呼び覚ますのだ!
うう、右手が………右手が疼く。
いでよ!粉つぎ!油引き!千枚通し!
我が配下よ。たこ焼きの道具となるのだ。
(暗黒微笑)
…うん、ちょっとやってみたかっただけだよ☆
「何やってんだ?お嬢?」
ぴゃあ!見られてた!
まずは、イベントの時に撮った我がたこ焼き師匠の手捌きを観てもらう。
その間に、油、タコ(ぶつ切り大)、天かす、紅しょうが(みじん切りと普通のサイズ)、青ねぎ(小口切り)、青のり、鰹節、たこ焼きソースを用意。
生地はたこ焼き師匠が作ってくれたものを再構築した。
その他には、粉つぎや油引き、千枚通し、ソースを塗る刷毛、たこ焼きを入れる舟形の経木、竹串等々を再構築しておく。
「面白いな。丸くするのか。たぶん出来ると思う」
「何度も返して焦げないようにするんですね」
「最初の、賽の目に区切ってから丸めるのが難しそうだね」
3人が耐火・耐熱・汚れ防止の結界を張ったタブレットを観ながら焼き始める。
油引きで1つずつ多めの油をひいて、粉つぎで生地を流し、タコを入れて、天かす、紅しょうが(みじん切り)、ネギをたっぷりかける。
暫く焼き、頃合いを見て千枚通しで賽の目に区切り、クルリと回していく。
何度も回し焼き、きつね色になったら経木に8個入れて、満遍なくソースを塗り、青のりをかけ、鰹節をかけ、紅しょうがを添えたら完成!
早速鳳蝶丸に作ってもらったら、悔しいくらいアッサリと焼き上げた。流石、器用さに抜きん出た漢。
ミスティルもレーヴァも何度か失敗しているうちに、段々と上手に焼けるようになった。
何気に伝説の武器達って器用だよね。
「こんなもんでどうだ?」
「しゅごく、いい」
「ありがとうございます」
ホワアっと上がる湯気、香ばしく焼けた丸いフォルム、ソースの香り、踊る鰹節。
最高です!即収納です!
「載せていたのは何?木屑に見えるけれど、食べるってことは違うんだよね?」
「こえは、かちゅお、ぶし」
レーヴァの手に文字を書く。
「か、つ、お、ぷ?ぶ、し?」
「かつおぶしって何だ?」
「しゃかな、かちゅお、硬く、しゅゆ。作い方、わたなない」
「鰹を硬くするとこうなるんですね?」
「作い方、ふくざちゅ。とても、おいちい。旨み、たっぷい。お出汁」
私は削ってある鰹節を出して食べて見るよう言った。
3人は鰹節をひとつまみして口に入れる。
「うん、美味いな」
「旨味を感じます」
「香りもいいね」
次に鰹節のみを使った鰹出汁を飲んでもらう。
「美味しい!これだけでもスープとして成り立ちますね」
「美味いね。どこかで味わったような…?」
「味噌汁や吸い物じゃないか?」
「しょう、しょえ!煮物も、ちゅかってゆ」
「煮物にも使っているんだな?」
「うん」
昆布からも出汁が取れて、合わせるとまた美味しい。
ちなみに、たこ焼きの生地にもお出汁が入っていると説明した。
では、食べてみよう。簡易テーブルと椅子を出して座り、皆でいただきます!
沢山あるので今回は複写無しだよ。
「あちゅい。火傷しゅゆ。気をちゅけて」
と、言っているのに鳳蝶丸がパクッと一口で口に入れた。
「あっっっつ!」
うわあ!大変!
慌てて冷たい水を出す。
「うん、美味い!」
でも平然と食べ進めた。
「おっ、すまん。俺達は火傷しないから大丈夫だ」
あっ、そうだった。
でも熱いんだよね?鳳蝶丸は細かい作業が好きなくせに、自分のことはわりと大雑把で時々不安になるよ。
「では、わたしも」
「俺も貰おうかな」
パクッ!
2人も一口だったぁ!
「はふはふはふはふ」
「あつっっっっっ!」
鳳蝶丸だけじゃなく、3人共大雑把だった。
火傷しなくても熱いんだからフーフーして!
私は竹串で半分に割り、フーフーしながら口に入れる。
それでも熱いよ!
「たこ焼きの中が激熱、火傷注意!」
「フーフーしてね☆」
って、屋台に看板立てなくては。
それにしてもめっっっちゃ美味しい。大玉3個ペロッと食べちゃったよ。
そうだ!お好みでマヨをかけるってどう?
早速デコレーションマヨネーズ容器(マヨネーズ入り)を再構築。
「鳳蝶まゆ、シャーッて、やって」
「ん?こうか?」
残りの大玉5個にマヨネーズをかけてもらった。
「これはマヨネーズですか?」
「うん」
ナナメにかけたり、チェック柄にすると綺麗だよ、と説明すると、3人はおかわり分でマヨデコしていた。
「なかなか綺麗だね」
「チェックにすると愛らしいです」
「俺はぶっかけりゃそれでいいんだが」
「鳳蝶まゆの、しゅきな模様、しゅゆ」
「ああ、ありがとな。んっ美味い」
「マヨ付きもいいね」
「少しまろやかになるんですね」
結局焼いた分は全て私達のお腹に収まった。朝ごはん代わりでいいよね?
「美味かった。ビールだな」
「ビールですね」
「友達、たこ焼き、ハイボーユ、ちてた」
「ハイボール?」
レーヴァはハイボール飲んでないもんね。
「任せろ」
「焼きます?」
「よろしく」
レーヴァとミスティルがたこ焼き焼いて、その間鳳蝶丸はハイボールの準備。
マジックバッグからボールやマドラー、レモン、ウイスキーなどをサササッと出し、頃合いを見て冷たい炭酸水とグラス、氷を用意した。
そして、私にはサイダー、自分達にはハイボールをテーブルに置く。
「改めて、いただきます」
「いただきます」「いただきます」
私はもうお腹いっぱいなのでサイダーだけでいいや。
でも3人はたこ焼きをつまみつつ、酒盛りを始めている。
朝からどうなのよ?と思わなくもないけれど、まあ、楽しそうだしいいかな。
彼らは酔っ払わないしね。
「合うな」
「ええ」
「美味いっ。ねえビールも用意しないかい?」
「お、いいぜ」
黙っていたらお酒の種類が増えました。
「朝から良い匂いがしているんだけど、お腹が空いてしょうがないよ。…ん?もう酒盛り?」
「もちろん。美味しいよ?」
「本当に、美味しそうですわ」
リンダお姉さんとエクレールお姉さんが様子を見に来た。
「今日はタコを使った料理ですの?」
「うん。食べゆ?」
「もちろん食べたいよ!でも、皆が揃ってから集まった方が良いか聞きに来たんだよ」
「アスナロリット様はお昼時が落ち着いたらいらっしゃるそうです。ゆきちゃん達のご都合はいかが?」
3人に聞くと問題ないとのことなので、アスナロリットさんが来てから説明をすることになった。
午後も大騒ぎしながらたこ焼きを焼く。
今回は、流石のアスナロリットさんもなかなかコツが掴めなかったみたい。
でも、何度か挑戦して少しずつ上手くなった。流石だね!
そして、今日からリンダお姉さんとミムミムお姉さんのご家族もお祭りの手伝いをしてくれることになり、たこ焼き作りに参加している。
最初はお祭りを楽しむ側なのだからとお断りしたんだけれど、こちらの方が楽しそうだからかまわないって。
人数が多ければ休憩も出来るし、皆さんが良いならばお願いしますと伝えた。
お給金の話をしたら受け取れないと言われたけれど、お祭りが終わったら何かしらのお礼をするよ!
まだ練習が必要だけれど、何となくコツを掴んだところで休憩にする。
厨に椅子を出し、作業台を囲んで座った。
私はサイダーと、焼き上がったたこ焼き(生焼け以外)のものを出す。
「あちゅい、ちをちゅてて」
「これは中がとても熱いから、火傷しないよう気を付けてね」
「いきなり噛じらず少し割って様子を見ながら食ってくれ」
レーヴァと鳳蝶丸が説明してくれた。
「で、では」
アスナロリットさんがフォークで半分に割り、慎重に食べ始める。
「ん!!!」
ハフハフハフ………。
「熱い、熱いけれど、最高に美味しいです!」
アスナロリットさんを見て、他の皆も食べだした。
「あつっ!ん〜〜〜美味しい!」
「柔らかいのね?美味しいわ」
「タコは初めて食べたが、結構美味いんだな」
皆さんに好評だったよ!
「昨日は店に戻ってから大変でした。甘くて良い香りがする!と従業員から尋ねられまして。もちろん、話しておりませんよ。お祭り当日のお楽しみ、ですものね」
「あい、あにあと。おまちゅい、ビックイちて、ほちい」
「ビックリなんてものじゃないよ。美味しすぎて天地がひっくり返りそう!」
ミクミクさんが両手をグリンと回して、天地をひっくり返してた。
可愛い♪
「では、従業員の皆さまから今日も質問がありそうですわね?」
「ええ。この香ばしい香り。覚悟して帰ります」
皆で笑いあった。
アスナロリットさんは貴族だけれど気さくな人。
エクレールお姉さんと仲良しだし好感がもてるよね。
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