第105話 クレープ練習中!私じゃなく皆さんが

 クレープを試食したあと、お互い意見を出し合った。


 ハニーナッツバタークレープはそのまま採用で良い。

 他の2つは花形に時間がかかってしまう。

 ならば、花形は価格を高く設定して、もう1種類価格を安くした花形無しのものを用意したらどうか?と言う事だった。


 確かに、あれは手間がかかるよね。じゃあ、ソルベをのせよう。



 アルコール無しのオレンジとイチゴのソルベを再構築。

 丸めたクレープの上に生クリームを平になるようにのせ、その真ん中にオレンジやイチゴのソルベを置き、果実も添え、さらに口金を着けた絞り袋の生クリームでデコレーションし、それぞれのソースをかける。


 こちらをレギュラーバージョンとして感想を聞いたところ、これならそれほど時間がかからず作れそうだと言うことで採用とした。


 今回作ったクレープは食べてしまったので再度作り、その中で綺麗なものを即収納。混雑して追い付かなくなったらこれを複写して出すよ。



 あとは値段だよね。


 レギュラーバージョンを5百エンと言ったら鳳蝶丸達に安すぎると指摘された。

 甘味を気軽に食べる貴族だって少ないのだから、いくら皆に食べて欲しいと言っても安すぎると。

 こちらでギリギリ出せる高めの値段はいくらだろう?


 色々考えて、レギュラー8百エン。デラックス1千2百エン、ハニーナッツバター6百エン。あと、唐揚げ(2種どちらも)6百エン。フライドポテト3百エンでいいよね?


 お値段的にクレープを食べられないならせめてと思い、ワッフルコーンを再構築。バニラアイス、ストロベリーアイス、オレンジソルベ、イチゴソルベのアイスのみなら買えるかな?

 カシャカシャってするアイスディッシャーを再構築しておこう。


 アイスのみはシングル3百エン、ダブル5百エンってことで。

 うん、もう決定しちゃおう。優秀商だからいいのだ!そうなのだ!




 あとは明日たこ焼き機の試行作業をする予定。

 この辺りの地方は比較的海に近いので、タコやイカも食べるみたいだし安心して販売出来る。

 紅しょうがは、焼きそば作った時普通に食べてくれていたから大丈夫かな?明日【虹の翼】のお姉さん達にたこ焼きを試食してもらって考えよう。


 価格は大玉8個5百エンでいいかな?と思っている。

 こちらの世界の食材を使うと費用が高くなりそうだけれど、私は沢山の人に食べてもらうためお安くするのだ!






 午後になってアスナロリットさんが来たらしい。

 まだ魔道具の試行作業だよ?って言ったんだけれど、今から参加したいと言う。


 それは良いけれど、テントでは作れない……とローザお姉さんに相談したら、【虹の翼】邸の厨を使ってと言われ、遠慮なくお借りすることにした。



 【虹の翼】邸のキッチンはとても広い。


 魔道具のコンロや洗い場が両側にあり、真ん中に大きな作業台がある。

 これだけ大きな作業台ならば全部作業出来るね?


 許可をもらって厨全体に清浄をかけると隅々までピカピカになった。

 ローザお姉さん達に得をしたと喜ばれたよ。台所のお掃除って大変だもんね。良かった良かった。



 作業台にクレープ焼き機を3台出していると、扉の向こうからガヤガヤと人の気配がした。

 地図には15人の反応がある。4つは青点であとは白点。


「ああ、ごめん。多分アスナロリット様と、ウチらの家族だね。紹介してもいい?」

「うん」


 家族って、ローザお姉さんの家族?


「アスナロリット様は会ったことあるよね?」

「あい。おひしゃし、ぶいでしゅ」

「お久しぶりにございます。今日は押し掛けてしまい申し訳ありません。いても立ってもいられずやって参りました。暫くの間、どうぞよろしくお願い申し上げます」

「こちやこしょ、よよちく、おねだい、しましゅ」



 次は初めましての人ばかりだった。


「私の家族。両親、姉、弟」

「初めまして。父のテテテテです。妻のフルフル、娘のミクミク、息子のテトテトです。ミムミムがとてもお世話になっているとお聞きしております。よろしくお願いします」


 まずはミムミムお姉さんのご家族だった。

 ハーフリングのご家族は小さくてとってもとっても可愛らしい。



「あたしの家族。両親と兄夫婦、甥と姪。よろしくね」

「初めまして。父のコビー、妻のエララン。息子夫婦のスウタイとミイ。孫のトミー、タッキーノ、ミアンです。娘が世話になっているそうで、ありがたく思っとります。今後もよろしくお願いします」


 リンダお姉さんのご家族は巨人族なのでとても大きかった。でもタッキーノ君とミアンちゃんはとても小さかった。

 以前エルガさんから聞いたけれど、巨人族は子供の頃とても小さいって本当なんだね。



 次に自分が名乗ろうとすると、ローザお姉さんが私達の紹介をしてくれる。


「こちらは私達の友人、ゆきちゃん。そして、ゆきちゃんのご家族の鳳蝶丸殿、ミスティル殿、レーヴァ殿だよ」

「初めまちて。よよちく、おねだい、しましゅ」

「突然驚かせてごめん。ミムミムとリンダのご家族は雪深い地方に住んでいてね。冬になると雪で身動きが取れなくなるから、立冬祭頃から春まではここで過ごすんだよ」

「しょうなの」

「私とレーネは孤児、エクレールの家族は訳あって来られないので2人の家族だけだけれど、冬の間はとても賑やかになるんだ」

「ごかじょく、沢山、わたち達、いて、だいじょぶ?」

「もちろん。ゆきちゃん達はテントだし、なんの問題もないよ」

「でも、テントでは狭いのでは?よろしければ、我が家にお泊りいただいても…」

「だいじょぶ。あにあと、ごじゃいましゅ」


 アスナロリットさんは私達のテントを知らないものね?お気遣いありがとう。




「今日はクレープと言う食べ物だ。色々聞きたいことはあると思うが、取り敢えず最初は作り方を見てくれ」

「クレープの生地をきちんと焼けることが最初の第一歩だから、まずはそこからだよ」


 鳳蝶丸とレーヴァの説明でクレープ作りが始まった。

 まずはクレープを薄く焼くこと。

 ミスティルがお手本として1枚焼き上げる。アスナロリットさんもお姉さん達も興味津々で眺めていた。


「ここにお玉1杯分の生地を流し、このトンボと言う器具で薄く伸ばします。焦げる前にスパチュラと言う器具で裏返し、直ぐに上げてこちらの台に置きます」

「簡単そうに見えて、なかなか難しそうですね」

「実際、結構難しいよ。破れたり、うっかりすると焦げたりするから加減がね」


 ミスティルとレーヴァの説明にアスナロリットさんはメモを書いていた。


「じゃあ、体験してもらうか」


 お姉さん達とアスナロリットさんがクレープ焼きに挑む。最初はやはり破けたり、慌てているうちに焦げたりしていた。


 でもアスナロリットさんはコツを掴むのが早い。

 流石、料理人かつ調理スキル持ち。割りと直ぐに薄く焼けるようになる。


「この調理法は凄く楽しいです。薄く仕上がれば仕上がる程、スッキリした気分になります」

「だな。均等に焼けたときの爽快感があるよな」

「そうなんです!」


 鳳蝶丸とアスナロリットさんが意気投合していた。



 他の人は……。

 日頃から料理を作っているローザお姉さん、リンダお姉さん、ミムミムお姉さんは慣れるのが早かった。

 多少破けたり、厚みが違ったりするものの、許容範囲だし大丈夫かな。

 レーネお姉さんとエクレールお姉さんは早々に離脱し、売り子に回る宣言をしている。

 うん。無理に作らなくても他にやることは沢山あるし、そちらの方向でオッケーです。



 結構練習して、クレープがだいぶ溜まってきた。

 クレープはある程度冷めたら直ぐに無限収納に仕舞い、乾燥しないようにする。

 モッチリ感が無くなったりボソボソしたり、硬くなると嫌だしね。

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