第104話 月と音色と金平糖

 夜ご飯も終わり自由時間になった。

 私は温室に行って、噴水のモチーフ追加と変更をするつもり。


 鳳蝶丸のレインボーアコヤを消して、エメルの亀さんに再構成。もう1つはレーヴァのスザク。

 これで3つ埋まったね。



「主、お風呂に入りますか?」


 ミスティルが温室に顔を出す。


「綺麗ですねぇ」

「うん!」



 温室はライトアップされ、夜の薔薇園と満月が浮かぶ星空が幻想的。

 噴水の永遠の薔薇エターナルローズは暗めの部屋を鮮やかに飾り、流れる水音がとても心地良い。


 ミスティルが私の傍に来て、作ったばかりのモチーフを覗いた。


「これは…スザクですか?」

「しょうよ。こえはイバヤちゃん、こえはエメユ」

「ここに6つのモチーフを作るんですね?」

「うん」



 2人でしばらく噴水を見上げる。


「なんて美しい空間でしょう」

「ちにいった?」

「ええ。とても」

「いちゅでも、ちて、良いよ」

「ありがとうございます」



 あっ!そうだ!



 ここに、ミスティルの好きな物を再構築しよう。


 無限収納内で、交響楽団のコンサートで見たピアノと椅子を再構築。温室の雰囲気に合わせて白く再構成。

 コンサートで見たピアノなんだから、調律も合っているよね?


 そして、噴水前の広い場所にピアノを出した。噴水の水に濡れないように念のため結界を張っておく。

 白い噴水と白いピアノ。

 うん、すっごく綺麗!



「こえ、どうじょ。遅くなった、ごめんね」

「主……ありがとうございます」


 ミスティルが嬉しそうにピアノに触れる。


「弾いても?」

「もちよんよ。こえ、ミシュチユの」


 にっこり笑って、鍵盤をポーンと鳴らす。



 ポロロン♪ポロロン♪



 適当に音を鳴らしていき、椅子に座ると音楽を奏で始めた。



 金平糖の曲だ!



 私のPCに入っているクラシックを奏でてくれた。


 私は嬉しくなって踊り始める。傍から見ると屈伸運動ともいう。

 バレエは習ったことがないので踊れない。ただの屈伸運動でも楽しければそれで良いのだ!


 ミスティルはその後も同じバレエ曲のピアノアレンジバージョンを弾いてくれた。


「ミシュチユ。イクエシュト、ちて良い?」

「リクエスト、ですか?」

「うん。ちゅきのひかい」



 タンタンターン、タタタターン♪

 口ずさんでみる。



「月の光、ですね?」

「うん。一番、しゅき」

「わかりました」



 温室の月光の下、ミスティルが奏でる美しい音色。

 私は椅子に座ってウットリと聴き入る。


 そして、もう帰れない地球を思い出し、そっと涙を流した。






 昨夜、鳳蝶丸がクレープ焼き機の魔道具化を急いでくれたので、今日の魔道具試行作業はクレープです!



 トンボとスパチュラを再構築。

 クイーン魔石で背の高いガラ入れの様な容器を作り、入り口に結界4を張る。

 そして、トンボやスパチュラ等物を入れると生地、汚れ、雑菌があればそれを排除する、の清浄を結界に付与。

 トンボやスパチュラを容器に入れると、付着した生地が無くなって清潔を保つ仕組み。



 生地に関しては、友達に教えてもらいながら自分で薄力粉と米粉をブレンドしたものを再構築。

 作るクレープは冷たいオレンジとイチゴ、温かいハニーナッツバターの3種類。



 オレンジはクレープシュゼットじゃなくて、冷たくて爽やかなのにするよ。

 甘さ控えめ生クリームたっぷり。そこにカットしたベイクドチーズケーキとバニラアイス。

 デリモアナで美味しいオレンジが手に入ったので、カルチェカットで沢山入れて、ブルーベリーを散らし、オレンジソースをかけクルクルッと丸める。

 丸めた上にまた生クリームをのせて、薄くスライスしたマンゴーを薔薇のように、外側にオレンジで花形にして、黄色いハートと星のシュガースプレーを散らして、オレンジクレープの完成!



 イチゴは甘さ控えめ生クリームたっぷり。カットしたチョコブラウニーとストロベリーアイス。

 日本の苺を半分にカットして沢山入れ、ブルーベリーも散し、ストロベリーソースをかける。

 クルクルッと丸めたら、その上に生クリームをのせ、日本の赤いイチゴとデリモアナ産のイチゴに似た白いプルメリアベリーを花形に並べ、そこにピンクと赤のハートのシュガースプレーを散らして完成!



 ハニーナッツバターは、まずデリモアナ産ナッツをキャラメリゼにしておく。

 クレープを焼きながらバターを満遍なく塗り、ナッツキャラメリゼを散らし、岩漿山産のホットハニーをかけて、パリッと焼き上がったクレープを三角に折って完成!シンプルだけれど、ナッツの香ばしさがたまらないのだ!


 の、予定。

 この世界の人達に受け入れられるか心配だけれど【虹の翼】の皆さんに試食してもらおう。




 まずは、3人に日本の友達がクレープを焼いている動画を観てもらった。


「なるほど。うん、出来そうだな」

「面白そうです」

「姫のお友達も綺麗だね」


 安定のレーヴァです。

 いや、焼き方見て?



 クレープ焼き機を複写で3つ出し、温めてから早速焼いてもらおう。


「うん、薄く丸く焼けたな。結構楽しいぜ」


 鳳蝶丸は器用なため直ぐに焼けるようになった。


「フフ、出来ました」


 ミスティルは最初破れてしまう事が多かったけれど、私をナデナデする時みたいに優しくとお願いしたら作れるようになった。


「存外難しいね」


 レーヴァも失敗続きだったけれど、クレープは女の子達大好きだよ!と言ったら上達が早かった。




 せっかくクレープを焼いたので、生クリームや果物、ケーキ等を用意して実際に作ってみる。


 レーヴァには女性に触れるように繊細で、かつ大胆に!とお願いしたら、生クリーム作りに素晴らしい能力を発揮してくれた。

 滑らかでフンワリ、でもちゃんと角が立つ。舐めたら舌触りが良くて超絶美味しい生クリームの出来上がり!



 オレンジをカルチェカットしたり、その他の果物やケーキをカットしたのは鳳蝶丸。どれもこれも均等で美しい仕上がりだった。

 マンゴーってこんなに薄く切れるんだ?と言うほど薄くカットされていて驚愕したよ。

 バットの裏(もちろん清浄済)にマンゴーで花形にしてもらったら、それは繊細で美しいお花が咲きました。



 イチゴとオレンジのソースを作ってくれたのはミスティル。

 ミキサーの後、綺麗なふきんで果汁を絞る時、その能力をいかんなく発揮してくれた。ギュウッと絞った後のオレンジの薄皮やイチゴの種とカスがカラカラだったよ。


 果汁にグラニュー糖とレモンを加えながら、弱火で優しくゆっくり火を入れたら、とろみのついた美味しいフルーツソースの出来上がり。

 香り付けのお酒を入れるか迷ったけれど、子供にも食べてほしいから今回は止めることにしたよ。



 次はナッツキャラメリゼ。

 今回はメープルナッツキャラメリゼにします。

 デリモアナで手に入れたナッツ類をオープンで焦げない程度ローストしておく。

 鍋にメープルシロップとお水を入れて火にかけ、ローストしたナッツを投入。

 焦げないように混ぜ続け、水分が飛んだらバットに入れ、少しだけ塩をふりかけて、くっつかないようにバラバラにしておく。

 冷めればメープルナッツキャラメリゼの出来上がり!



 ちなみに、ケーキとアイスとシュガースプレーは美味しかったお店や可愛いと思ったものを再構築しました。

 スクープタイプの熱伝導アイスクリームディッシャーや絞り袋、口金、その他も用意。

 作ったりカットした食材や、再構築したものはその度に無限収納に入れて複写するよ!




 では、と言うことで。

 鳳蝶丸はオレンジクレープ。

 クレープをクルクルッと丸め、桜吹雪のマークがついたペーパーでクルクルッと巻き、背の高いコップに差してから生クリームをクルリと丸く絞って、先程作ったマンゴーの花を小さめのスパチュラで真ん中にのせ、花の周りにオレンジものせ、黄色いシュガースプレーを少量パラパラとふりかけて完成!


 レーヴァはイチゴクレープ。

 鳳蝶丸と同じようにクレープを丸め、山盛りにした生クリームにイチゴを可愛く差して花形にする。赤やピンクのハートのシュガースプレーを散らしてとてもとてもキュートなクレープが完成!


 ミスティルはハニーナッツバター。

 クレープを焼きながらバターを塗り、メープルナッツキャラメリゼをふんだんに散らし、岩漿山産のホットハニーを回しかけたら軽く三角に折って予め折っておいた紙に入れて完成!




 早速、皆で試食!



 …………。

 …………………おいち〜い!



 生クリームを甘さ控えめにしたから食べていても飽きがこない。

 イチゴクレープは甘酸っぱくて定番の美味しさ。チョコブラウニーがほろ苦さがアクセントになっている。

 オレンジクレープは爽やかな柑橘の香りと、オレンジの苦味が加わって、少しビターな大人の味かな。

 ハニーナッツバターはクレープもナッツも香ばしくて、バターの独特な甘い香りと甘すぎないホットハニーが絶妙なバランスだった。


 全部美味しいけれど、個人的に好きなのはハニーナッツバタークレープかな?暖かくて香ばしくて甘くてとても美味しかった。



 岩漿山産のホットハニーは優秀だと思う。甘さ控えめでサラサラしているんだけれど香り高い。

 何故か常に温かいから、多分紅茶に入れてもすぐ溶けるんじゃないかな?温かいハチミツレモンを作っても良いし、パンやスコーン、フレンチトーストにも滲みて美味しそうだよね。

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