第102話 やっぱり、こっちの方が美味しいよ!

 でも、ワタシ的にはやっぱり物足りない。お肉がピリ辛で凄く美味しいけれど、香り付け程度でもいいから黒胡椒が欲しい!


 片栗粉に粗挽き黒胡椒を入れ混ぜて、再びレッドホットワイバーンを揚げる。

 もちろん二度揚げでカラッとね!



 ザクッ!

 あっつい!ホフホフ…。


 うまあ!コレだよ!



 ザクッとした歯ざわりのコロモ。鶏ガラスープを揉み込んで少し柔らかくなったお肉。

 ピリ辛のお肉の濃い香りとたっぷりの肉汁が噛むたびに口いっぱいに広がって、そこに追加した粗挽き黒胡椒でより一層美味しさが増している。


 私が食べたので、他の人達も黒胡椒入りの塩唐揚げを食べる。



 !!!!!!!!



 レーネお姉さんが「んー!んー!」言ってモグモグしながら、激しく何かを訴える。


「おいちい?」


 皆さん高速でウンウン頷いていた。

 首、気をつけて?



 レーヴァに水でさらしてたジャガイモをキッチンペーパーで水切りしてもらいながら、鳳蝶丸に醤油クルコッコ唐揚げをお願いする。


 バットに片栗粉と小麦粉を混ぜて、お肉に粉をつけ二度揚げ!



 サクッ!

 熱っ!ホフホフ……ホフホフ…ホフホフ…。



 うん!間違い無し!


 甘くて旨みたっぷりの柔らかいお肉と肉汁。

 醤油の深い味わいと香ばしさ、爽やかな生姜の香り。ほんのりと感じるニンニクがアクセントになって、めちゃくちゃ美味しい!


 白いご飯食べたい!



 【虹の翼】の皆さんはジタバタしながら悶えている。


 鳳蝶丸はマジックバッグから無言でビールサーバーを出し、炭酸カートリッジとビール樽をセット。

 冷やしたジョッキにナミナミ注ぎ、



 ゴッゴッゴッゴッ

 ンハー………



 豪快に呑み干した。


「間違いないな」


 ウン、と大きく頷きながらアンタ達もどうだ?と他の人達に声をかける。

 真剣な顔付きで頷きながら、ビールを呑み干す面々。


「ヤバイ。ヤバすぎるよ!」

「相性抜群」


 レーネお姉さんとミムミムお姉さんがンハーっとため息をつきながらウットリしている。


「相変わらずゆきちゃんの作るものは美味しいですわ」

「うんうん。あたしもう唐揚げの虜だよ」

「どちらも甲乙つけがたい」


 エクレールお姉さん、リンダお姉さん、ローザお姉さんも美味しかったと口々に言った。



「姫。俺は姫の従者になって本当に良かった」

「美味しい食べ物とお酒。幸せですねえ」

「お嬢、これは売れる。でも屋台じゃなくても作って欲しい」


 家族達からも大好評だった。


「嬉ちい、良たった。こえかやも、作ゆ」

「よろしくお願いします」

「よろしく頼む」

「よろしくね。楽しみだよ!」

「ア、アタシ達も食べたい、な〜?」

「こら、レーネ。ゆきちゃんの負担になるような事は言わない」


 レーネお姉さんがモジモジしながら言うと、ローザお姉さんが叱る。


「頑張って自分達で作る」

「そうだね。作ろう!」

「調味料、売ってくれる?」

「うん、いいよ」


 【虹の翼】で料理出来るのは、ローザ、リンダ、ミムミムお姉さんなんだって。

 その3人が唐揚げに挑戦してみるらしい。

 ならば売りますよ、調味料、その他諸々!色々挑戦してね?



 調味料の事はまた後回しにして、次はフライドポテト。


 使ったフライヤーを油ごと清浄。

 低温用にサラダ油を入れて、まだスイッチは入れないでおく。

 高温用は温度設定をしてスイッチオン!



 小麦粉と片栗粉をブレンドしておく。

 水を切ったジャガイモをバットに広げ、ブレンドした粉をふりかけ、満遍なく行き渡るようにジャガイモを混ぜる。

 粉をまぶしたジャガイモを常温の油に入れ、そこからスイッチオン!

 数分揚げたら一旦出して馴染ませて、次に高温のフライヤーでジュワッ!と揚げる。

 きつね色に揚がったら油からだし、油切りをしておく。

 バットに移し、塩(少なめ)と黒胡椒をふりかけ混ぜて、はい、完成!


 なぜ塩少なめかと言うと、ケチャップ、マヨネーズ、チーズソースが用意してあるから。

 好みでディップしてね!



 まずは私が味見。

 アッツアツのポテトをそのまま食べてみる。



 外側カリッ!中ホクホク。



 美味しい〜!


 次はケチャップ、マヨネーズ、チーズをそれぞれディップして食べる。

 どれもフライドポテトに合っていて、めちゃくちゃ美味しかった。



 木製の深皿にフライドポテトを山盛りに入れる。

 ケチャマヨチーズの3種類は、それぞれ小さな紙製カップに入れたものを複写して、無限収納から人数分出した。


「どうじょ」



 ワァッ!

 振り向くとすでにビール片手!

 用意が良すぎない?



 カリッ!

 モグモグモグ………。


 ゴッゴッゴッゴッ…ンハー!



「うん〜〜〜まっ!」

「止まらない、止まらないよ…」

「ジャガイモってこんなに、美味しいの?そのままでもいいけど、あたしはチーズが好き」

「以前いただいたポテトもとても美味しかったですけれど、こちらも本当に美味しいですわ」

「ああ…作り方は単純なのに、ジャガイモがこんなにサクサクで美味しいなんて」


 レーネ、ミムミム、リンダ、エクレール、ローザお姉さん達の手が止まらない。

 エクレールお姉さんは、お菓子以外の食べ物で、手で食べたのは生まれて初めてなんだって。



 ポテトも直ぐに無くなった。


「これはエールが不可欠だね」


 ローザお姉さんが深刻そうに腕を組んだ。


「そうだな。ビールは不可欠だ。売るか」

「良いですね」

「ああ、異存はないよ」

「でも、おまちゅい、おしゃけ売ゆ、いいの?」


 屋台でお酒を売って良いのなら私は構わないよ。


「売っている店はあるし、大丈夫だとは思うけど、ゆきちゃんトコは戦場になりそうだね」

「まだ1日め分の試食なのにコレだもんね」


 リンダ、レーネお姉さん。戦場って、そんな?


「フィガロギルド長かエレオノールさんに聞いてみたほうがいいかもね」

「そうですね」


 ローザお姉さんの言葉にミスティルが同意した。




 ちょっと遅いお昼に唐揚げ&フライドポテトをたくさん食べたから今日は試食終わり。



 鳳蝶丸とレーヴァ、ローザお姉さんとレーネお姉さんは、お酒を出して良いかを交渉しに商業ギルドへ向かい、エクレールお姉さんは調理を手伝ってくれるアスナロリットさんに会うため出かけていった。

 リンダお姉さんとミムミムお姉さんも用事があるらしくお出かけするんだって。



 私とミスティルはお留守番で、もう一度塩と醤油の唐揚げとフライドポテトを作り、漬かったお肉と揚げたてのお肉両方を無限収納に仕舞った。

 屋台でもし揚げが間に合わなくなった場合の対処方法として、すぐ出せるようにね。


 あとは寛ぎの間でミスティルと2人、ゆっくり過ごしたのだった。




「コンテストの参加辞退って本当ですか?」

「うん」


 しばらくしてフィガロギルマスがやって来た。


 寛ぎの間でゴロゴロしていたら、地図に反応があったので外に出る。

 すると、鳳蝶丸達、フィガロギルマス、何故か冒険者ギルドのリィンさんがテントに向かって歩いているところだった。

 そして開口一番がコンテストについて。そう、私は鳳蝶丸に屋台コンテストの辞退もお願いしていたんだよね。



 【虹の翼】の皆さん曰く、この美味しさでビールもつけたら、恐ろしいくらい人が殺到してとんでもない事になる。

 あの屋台設置予定の場所でも危険かも、と言うことだった。

 それに、屋台コンテストにお酒をつけるのは何だかフェアじゃない気がするし、コンテストは性に合わないのでエントリーを辞退したいと考えたのだ。



「実は、あの場所に去年まで出場していた方が、今頃になってやはりコンテストに出場したいと打診して来たのです。ゆき殿と約束した場所なのでお断りしたのですが、お譲りして良いですか?」


 責任者の人が引退して今年は参加しないと言っていたお店だよね?


「うん、いいよ。でも、わたちたち、どこ、だしゅ?」

「はい。冒険者ギルド・ミールナイト支部裏手に大きな訓練場があります。普段は剣術の訓練をしたりする場所なのですが、そこで屋台を出しては?と、ビョークギルド長から打診がありました」

「冒険者ギルド職員リィンです。本日はビョークが来られないため代理でやって参りました」

「こんにちは」

「こんにちは」


 リィンさんがニコッと笑みを浮かべた。


「ビョーク、ギユマシュ、帰ってゆ?」

「はい。少し前に戻りました」

「よよちく、ちゅたえて、くだしゃい」

「はい。お伝えします」




 リィンさんの説明では、祭の日は冒険者ギルド裏を一般開放、魔獣の素材やその他ドロップ品などを売り出す屋台を出しているんだって。

 屋台で使うのは一部なので毎年敷地が余っていて、空いているスペースに椅子やテーブルを置いて休憩所にしているそう。町の人やお祭り参加者が屋台で食べ物を買って、そこで食べているらしい。

 それでもまだ場所に余裕があるので、良かったらそこで屋台を出してはどうかと言うことだった。


「わたちたち、ちゅかって、いい?」

「はい、勿論です。私もお肉のおにぎり?や、ハンバガ、カレーをいただきました。本当に美味しかったので、お祭りの屋台も楽しみにしております」

「あにあと!」



 じゃあ遠慮なく、その広場に屋台を出させてもらおうかな?

 テーブルや椅子、トイレテントなども用意するよ。

 もちろん、どの屋台で買ってもそこで食べたり休憩したりして良いと言うことにするからね!

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