第69話 虹の翼の皆さんに正体を明かす

 一旦解散、お昼ごはんはお弁当を提供して各自食べてもらい、タープテントに13時集合とした。

 【虹の翼】の皆さんは、そのまま我がテントにご招待。


「どうじょ」

「ありがとう」


 ローザお姉さんとエクレールお姉さんは躊躇なくテントに入る。他のメンバーは恐る恐る入って来た。


「……………………」


 二人以外は玄関で立ち尽くす。


「こちらで靴を脱ぎますのよ。靴はこちらの棚に。清浄されておりますので香り関連の心配は無用ですわ」


 エクレールお姉さんが皆に説明してくれた。


「はあ………凄過ぎる」

「何となく予想してたけど、ここまでとは思わなかった」

「すっごくいいね!このテント!わあ!」


 リンダお姉さん、ミムミムお姉さん、レーネお姉さんがキョロキョロしていた。


「こえ、どうじょ」

「ああ、これ。森で使ってたよね?気になってたんだ」


 人間をダメにするソファで寛いでもらう。


 あああぁぁぁ…。


 妖しいため息をつきながらソファに沈んでいく【虹の翼】のメンバー。

 わかる、わかるよその気持ち。


 ミスティルが私専用のソファに座らせてくれたので、私も柔らかいクッションに沈みました。ふぅ。


「自由に好きなもの飲んでくれ」


 鳳蝶丸が飲み物を何種類かと各種鯛焼きを出す。


「悪いな、ありがとう」


 それぞれ好きなものを飲みながら皆でまったり寛いだ。



 ん?何しようと思ったんだっけ?



「それでは、あの、魔法契約を……」

「あ、しょうだった」


 エクレールお姉さんが言ってくれるまで忘れてたよ。


「魔法、契約、ちない」

「ん?何で?」

「ひみちゅ、ちあう。契約、いなない。おねしゃん、みんな、信じてゆ」

「本当に良いの?」

「あい」

「念の為、何か条件とかある?」



 うーん、条件ね。特には無いけれど…。



「おねしゃん、おともだち?」

「ゆきちゃんと?もちろん、友達だ」


 【虹の翼】の皆さんもウンウンと頷いている。


「わたち、お友達、思てゆ。正体、ちいても、お友達」

「ああ、もちろんだ」


 思わずじっと見つめる。【虹の翼】の皆さんは真剣な表情だった。

 私の正体を知って距離を置かれると寂しくなっちゃうからこのままでいて欲しいなあ。


 うん、良し、覚悟を決めるか。



「わたち、神しゃまの、神子」

「ん?」

「神しゃま、ちゅかえゆ、神子」

「え………。御使い様?」


 全員が固まっていた。

 念の為地図を見ると、青点のキラキラ度が増していた。


「知らなかったとはいえ御使い様に数々の失礼を…」


 全員跪く。私は慌てて制した。


「止めて」

「しかし」

「ふちゅう、くちゅのいで」

「御使い様……」

「ゆち、良い。お友達、良い」


 ちょっと悲しくなって、声が小さくなってしまう。


「主はあなた達を気に入っているようです。今まで通りにして下さい」

「ああ。俺達は堅苦しいのが嫌いだ。もちろん、お嬢を困らせる場合は許さんが、普通にしていて良い」

「主は、こうなるので余り広めたくないのです」

「わかりました」


 【虹の翼】の面々は顔を上げてソファに座り直した。


「本当に普通で良い?」

「うん!お友達」

「ありがとう。では、友達のままでいさせてもらおうかな」


 ローザお姉さんがニッコリ笑うと、他のお姉さんもホッとした表情で微笑んだ。



「それでは、鳳蝶丸さんやミスティルさんも御使い様ですの?」

「いや、違う」

「ふたいは、でんしぇちゅの、ぶち。わたち、かじょくよ」


 頭に???を浮かべるエクレールお姉さん。


「俺達は人ではない。伝説の武器と呼ばれている」



 ! ! ! ! !



「ちなみに主は我らを神子ゆえに賜ったのではなく、自らの力で試練を乗り越え手に入れました」

「今じゃ、俺達は家族だ」

「うん!」


 鳳蝶丸もミスティルもニコリと私を見たので、私も笑って頷いた。



「な、なるほど。でも合点がいった」


 ローザお姉さんが納得顔をしている。

 私が1歳の赤ちゃんとは全く違うこと。

 見たことも聞いたこともない知識を持ち合わせていること。

 こんな素晴らしいテントを作り維持していられること。

 見知らぬ料理や品、その質と量。


 御使い様であればどれもあり得るかもしれない?と言った。

 鳳蝶丸とミスティルも、人族とは違うんじゃないかって感じていたんだって。


「もしかして、皆、神界の知識や料理かい?」

「いや。詳細は言えんが、神界のものではない。お嬢特有のものだ」


 いくつかの質問に応え、この話はおわる。

 【虹の翼】のお姉さん達は今後もお友達でいると約束してくれた。

 地図を開いたままだったけれど、全員青点のままで嬉しかった。



「時間あゆ?」

「ええ。集合時間まで特に用事はありませんわ」

「じゃ、おふよ、入よう」

「おふよ?」

「風呂の事だ。たまには女性同士で入りたいんだろう。お嬢をお願いできるか?」

「もちろん!良いの?」

「風呂は私達でもしょっちゅう入れないから、あ、サクラフブキ以外ではだけど、ありがたくいただくよ」


 レーネお姉さん、リンダお姉さんも喜んでくれた。

 ローザお姉さん抱っこで移動して、女湯に行く。


「おおお…」

「もう何も驚かないって思ったけど、やっぱり驚いたよ」

「広いですわね」


 ミムミムお姉さん、ローザお姉さん、エクレールお姉さんが驚いていた。


 使い方の説明をして皆で服を脱ぐ。ちなみに私はローザお姉さんにササッと脱がされた。


「なかなか風情があるね。見たこと無い独特な感じ」

「何か、良い」

「しゃき、かやだ、あやう」


 体を洗う真似をしたらわかってくれた。

 使い方はお着替えテントと同じだから、問題なく顔や体、髪を洗う。



 ああぁぁぁ…

 湯船に浸かると皆が声を漏らした。


「お風呂気持ちいいー!」


 レーネお姉さんがお湯を堪能している。


「こえ、おんしぇん」

「おんしぇん?」

「山、湧く、お湯」

「ああ、あの熱い湯か」

「そういえば、あのお湯に動物達が浸かっておりましたわね」

「きじゅ、治ゆ。肌きえい、腰痛い、治ゆ、効能あゆ」

「なるほど、あれは体に良いんだね」


 ローザお姉さんとエクレールお姉さんが納得していた。

 念の為、温泉によって効能が違うこと、中には毒ガスが発生して危険な場所もあるので注意など説明した。


「このお湯、あんじぇん」

「どうやってこのテントに?いや、聞くだけ野暮だね」


 リンダお姉さんが苦笑いを浮かべる。

 そう、そこんトコは聞いちゃダメですよ。


「ねえ、こっちは何?硝子の向こう」

「しょこ、しょとのおふよ」

「しょと?外?」

「え?外って冒険者ギルドの広場?」


 レーネお姉さんは好奇心が強くて露天風呂が気になるみたい。

 ミムミムお姉さんは外と聞いて身構えていた。


 私が扉まで行って大丈夫って言ったらローザお姉さんがガッと扉を開ける。



「な、な、何!」


 驚愕しているローザお姉さんに、皆さんが慌てて集まる。


「どこ!」


 全員で叫んだ。

 息ぴったり!


「外、外だよな?」

「少し涼しいですわ」

「ヤマトタキガ、キレイダナア」


 ローザお姉さん、エクレールお姉さん、リンダお姉さんが口元をピクピクさせている。



 イタズラ成功!な気分っ。



 私がキャッキャッと笑ったら、皆さん顔を見合わせてから笑顔を浮かべた。


「いやあ、してやられたね」

「ゆきちゃんのテントで驚いてばかりだよ」

「面白いね!ワクワクする!」

「美しい景色ですわ」

「ここどこ?」


 皆さん笑いながら湯船に浸かる。ちなみに私はローザお姉さん抱っこです。


「はあ、気持ちいいな」

「室内は室内で良いけど、外の風呂って気持ち良いんだな」

「ここはどこかに繋がっているの?」

「ちゅながゆ、ちてない」

「え?どうなっているの?魔法?結界から全部だけど、優しくて居心地の良い魔力に包まれていて、どんな魔術使っているのか判断出来ないよ」

「ミムミムがしゃべった」

「沢山しゃべった」


 ミムミムお姉さんは、話はするけれど口数の少ないんだって。

 魔力量も多く、魔術師の中ではかなりの使い手なので、私の魔術に興味あるみたい。

 ちなみにエクレールお姉さんもエルフなので、大弓だけではなくかなりの魔力量を持った魔術師でもあるんだって。


 この景色はどんな魔術なのか教えて欲しいと言われたけれど、魔力と神力が混ざっている箇所もあるし、日本の知識を多く使っているので教えるのは難しい。


「こうちたい、思う、出来ゆ。おちえかた、わたなない」

「そう……。御使い様の御業、私には難しいか」

「おーい、のぼせるよ」


 考え込んでいるミムミムお姉さんにリンダお姉さんが声をかける。

 お風呂からあがって、ヘアケアやスキンケアを行ってから寛ぎ部屋に戻った。


「かつてないほどお肌がスベスベで髪がサラサラですわ」

「私のゴワゴワの髪がサラサラで指通りが良い」


 でしょう?

 この世界にも多少のスキンケアやヘアケアはあるらしいけれど、肌は薬草とか髪は香油とかで香りがキツかったりベタベタになったりするんだって。

 それと、ミスティルの話では私の神力が少し入っているので効能が高いんだって。


「買う?」

「え?いいの?買う買う!」

「私も買う!多めに買う!」

「今後ずっと買いたいんだが」


 ですよね。

 良いですよ。【虹の翼】のお姉さん達には売りましょう。

 高くても良いと言うことだったので、販売方法を考えてまたお知らせすると伝える。


 皆さんキラキラの笑顔で頷いていた。

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