第5話 幼女 爆☆誕 ここはどこ?
耳に心地よく寄せては返す波の音。
柔らかいベッドに寝てるのかな?それにしてもサラサラ…。
サラサラ?
ん?
「あ、あちゅい~!」
体を起こして周りを見ると、そこは南国。
真っ白く綺麗な砂浜の上で横たわっていたようだ。
「ほぇ~…。う?え…、な、なんれぇー!」
青い空~、
白い雲~。
キラキラキラ……
とんでもなく美しい景色に目が奪われた後、思わず叫んだ私の声は青空にむなしく消えていった。
立ち上がって体についた砂をはらう。
手がちっちゃい。視線が地面に近い。
「馴染ましぇゆ、小しゃい、やり直しゅ?」
そして舌足らず。
髪は触った感じおかっぱで色は黒。馴染みある色だし、
顔は…鏡がないからわからない。
手足を見ると色白で子どもだからかきめ細かく綺麗な肌だった。かなり嬉しい。
服は簡素な作りの白いワンピース。裸足。
「わたち、何となく、把握。しょんで、ここ、どこぉ?…」
周りを観察する。南国っぽい島だった。
島の中央は土で椰子が3本と南の島っぽい木が少し生えていた。
そこをぐるりと囲むように真白い遠浅の砂浜が美しく、浜の途切れた先は濃い青色の海で、おそらく深いと思われる。
広さは大人の足で一周5分とかからないだろう。
日本にいた時にネットで見たジープ島にちょっと似ている。
そして、周辺はなにも見えない。
ただ海が広がっているばかりで他の島は見当たらなかった。たぶん絶海の孤島というヤツだ。
「ちゅんだ…」
詰んだ。
幼児が何も持たず、椰子と少しの草木しかない孤島で炎天下の中一人。
「いきなり、ちんじゃうよ。ウルしゃま!」
スッ
思わず天に向かって恨み言をいうと、目の前の何もない空間に音もなく画面が表れた。
こ、これは!
かの有名な、異世界もののありがちな、例の!
『お疲れさん(スタンプ)』
ピコン♪と表れたのは、日本でいつも使っていた無料通話アプリにそっくりな画面のメッセージスタンプだった。
ウル様がデフォルメされたイラストで、片手ピースしている。
ページの上には<ウルちゃん>と書かれていた。
『目覚めたかの』
またしてもピコン♪という音とともに文字が浮かぶ。
あわわ、
へ、返事、返事。
でも文字を打つ場所がない。
画面をタップしてみたが何も起こらなかった。
『画面に向かって<入力>』
『<文章>を考えて、<確定>じゃよ』
『声なしで大丈夫じゃ』
おお!打たなくて良いのか。
『<入力>何にもない島につきました<確定>』
『フォッフォッフォッ(スタンプ)』
メッセージ送れた。入力と確定ね。
『笑っている場合じゃないです』
『熱中症と日焼けで着いた早々死にそうです』
『いや死なんよ』
『どういう事ですか? 』
『熱中症にならんし日焼けもせん』
『食べなくても飲まなくても死なんよ』
『病気はせんし、よほどのことがない限り怪我もせんな』
『半分、神だもの』
半神だもの…。
『じゃが、暑い寒い、空腹、臭いなどは感じるかの』
『半分、人の子だもの』
『テヘペロ(スタンプ)』
半人だものね。
……………………。
なに、その残念ハイブリット。
『炎天下で暑いけど死なず、喉乾いてもおなか減っても死なない』
『うんうん(スタンプ)』
『まるで拷問のようですね』
『良いではないか、良いではないか(スタンプ)』
まあ、その方が人間らしさが残っていて良いかな。
『あとその島は満ち潮にならんようになっとる』
『安心♪(スタンプ)』
『異世界転移なら到着地点は森がテッパンでは? 』
『漫画の読みすぎじゃ~』
漫画知ってるのか。読んでるな、ウル様。
『そこにしたのは意味があるんじゃが今は言えん』
『とりあえずインベントリを見るんじゃぞ』
『わかりました』
『あと、精神が幼児の体に引っぱられるが』
『受け入れるが吉よ』
『それでは、またな』
『バイバーイ(スタンプ)』
『ありがとうございました 』
「ふぅ」
兎に角、簡単には死なないようなので、色々試してみることにしよう。
心が幼児寄りになるのが気になるけど仕方ない。ウル様のいう通り受け入れるしかないかな。
まずは椰子の木陰へ向おうと一歩を踏み出す。
「あっちゅ!」
あっつ!熱いよ砂浜!
急いで足裏を確認。赤くなっていないし火傷している様子もなかった。
いや、これ、地獄の熱さなんですけど。どうするのこれ。椰子まで行ける自信がないよ。
サンダル欲しい。
底が厚めでピンク色の可愛いの。お花がついてるやつ。
サワサワサワ…。
友人の子供にプレゼントしたサンダルを思い浮かべると、目の前の砂が細かく振動し始める。
そして、3Dプリンターでつくられていくように形が構築されていった。
「………なに?これぇ」
1分ほどで出来上がる。
それはつま先とかかと保護付きの足首で固定できる可愛いサンダルだった。
ちょん
恐る恐る突いてみる。
ちょん、ちょん
形が崩れることはなさそう。
何かわからないけど、半神的な何かで作ったのかな。
もう、いいや。
熱い砂の上裸足で歩く地獄からは逃れられる。
早速サンダル装着。…ってしたかったのになかなかサンダル履けない問題が生じた。だって、小さい手指でボタン外したり閉じたり難しいのよ、これが。
何度もチャレンジし、どうにかサンダルを履くことができた。
やっと椰子の木陰に向える。
が、次は一生懸命歩いてるのにヨチヨチ歩きで進まない問題が…。
幼児の体に早く慣れなきゃ転びそうだわ、これ。
ようやく根元に到着。
陰に入れるよう身を小さくして座りこんだ。
インベントリ。
スッ
言葉に出さなかったけど、空中に画面が表示された。
見た感じちょっとゲーム画面っぽいような、PC画面のような感じかな。
左端にメニューが書かれていた。
上から、
ステータス
無限収納
半神スキル
半人スキル
魔法創造
神様ライン
まずはステータス。
タップすると画面右側に私のステータスが表示された。
名前 ゆき(朝宮ゆき)
年齢 1歳
種族 半神半人
称号 神の
体力 無限
魔力 800,000
神力 599,900
魔術 全属性、魔法創造
半神スキル 浄化、結界、再構築、奉納
半人スキル 全言語習得、無限収納、複写、解体、鑑定、探索、地図
転移の門戸
耐性他 物理耐性(常時)、魔力耐性(常時)、精神耐性(【幼児の気持ち】
発動時を除く)、
異常状態無効化(常時)、気配完全遮断
加護 ムゥ神の加護、ウルトウスオルコトヌスジリアス神の加護
桃花咲待姫命の加護
…………………。
凄いな、完全チート。
使いきれない自信しかないよ。だってスマホも使いきれてなかったもの。
体力とか魔力とか神力とかすでに化け物級では?
あ、半神だった。
それにしても1歳か…。結構な幼児になっちゃったなぁ。
受け入れようって思ってるけれど大丈夫かな、私。
精神耐性の【幼児の気持ち】発動時って1歳に引っ張られている時ってことだろうな。
………あ、すでに発動し始めてるかな。
ピンクでお花のサンダルって…個人的に大人になってからは選択しなかったデザイン。でもあの時、可愛いの!って考えちゃった。
これからもっともっと1歳児に寄っていくのだろうか?
一抹の不安を抱えつつ、ええい、ままよ!と受け入れる気持ちも感じつつ。
思い切りの良さもウル様が与えてくださった強さだろうか。
右も左もわからないこの世界で勇気や強さは私の味方をしてくれるだろう。
「よち、ちゅぎ、行く!」
私は次の項目をタップすべく、人差し指を動かした。
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