転生勇者の逆転!〜ほら、バイクの免許も取ったばかりだし。〜

ににしば(嶺光)

バイク魔法



俺の冒険は始まった瞬間、終わっていた。


「残念だったな!この盗賊ヤムタ様がお前の集めるべき宝具はすべて先に集めたぜ!これからは俺が真の勇者だ!」


な、なんてことだ。


前世で猫を助けようとしたら蕎麦屋の自転車にひかれかけ、河川敷に転がり落ちて首の骨を折った俺。


その転生先はさながらゲームで、かなりわくわくしながら旅立ちの日を待っていたのに……。


「まてー、山田!」


「俺はヤムタ様だ!」


魔法が掛かった銀の脚甲は山田をおれからぐんぐん引き離す。くっ、バイクがあれば……こないだ、いや前世で免許とったばかりなのに。



置いていかれた。


勇者を心待ちにしていた町や城の人々からは罵られ、おれは失格勇者のレッテルを貼られてしまった。引きこもるおれ。


このままでは、前世と同じ……前世ではなんとか免許をとるまでは頑張ったが、もう……。



おれは窓から外を見ていた。「旅立ちの朝よ」と言われたあの部屋で。


窓の外では子供たちが遊んでいる。


……って、あんな小さいのに火遊びとは、危なくないか?



「おい、やけどするぞ」


念の為バケツに水を汲んでもっていった。子供たちはきょとんとしている。火は見当たらない。子供たちの足元で、焦げた草が濡れている。


「お兄ちゃん……わざわざ水なんかなくても、ぼく、水魔法使えるよ?」


「え。あ、魔法?」


そうだ、異世界だった。引きこもって以来、すっかり忘れてた。



おれは魔法を習った。はじめは近くの子供たちから学び、うまくなると近所の魔法使いに弟子入りした。魔法使いから色々習って免許皆伝の許しを得て、おれは晴れて魔法使いの弟子を卒業した。


「各種強化魔法薬、変身に透明化、眠らせ魔法に、封印魔法。これでおれも一人前の町の魔法薬屋さんに……あれ?」


おれは首をかしげた。家の前の空き地では、すこし大きくなったあの子供たちが魔法ごっこをしている。凝ってるなあ。氷らしき塊が、輝きながら色を変える魔法のようだ。


「なあなあ、そういうのってどうやるの?」


「これ?教えなーい」


「えー」


「特別な夢を見ないといけないんだよ。大人になって、魔法が使えたら、一生にひとつだけ、具現化魔法が使えるの」


「具現化魔法?」


「でも、女神様が夢に出てこないとだめなの。だから教えなーい」


「へー」


具現化魔法か。おれもそんな魔法、使ってみたいな……。家に帰ると母は優しく微笑んだ。おれが勇者だと言われていたころは、あんなに厳しく鍛えてくれた母。しかし、いまでは好きにしろと言わんばかりになんでも許してくれる。がっかりさせたようで、申し訳ない気もするが……。


せっかくだから、魔法薬屋さんにもなれたし、自分なりに生きてみようかな。


自分の店を持ってみたい、と母に告げると、母は昔道具屋をやっていたと言い、近くの店主におれの魔法薬を置いてくれることになった。


しかし、速攻で俺の商売は失敗した。子供たちの遊びに巻き込まれ、道具屋は俺の魔法薬が引火して吹き飛んでしまった。


幸い店主は無事だった。店番はおれだったからだ。


ボロボロの俺を介抱したのは、非常にへたくそな見習いヒーラーだった。


おれの家は道具屋への弁償に追われ、見習いヒーラーくらいしかよぶことはできなかった。三日三晩かけても、見習いヒーラーは俺の傷を癒やすことはできなかった。


「ごめんなさい、すみません……」


金髪の小柄な美少女ヒーラーは泣いていた。背丈ほどの大きな杖は鈴のような音を立てるが、それだけでは何にもならない。


「すみません、すみません」


べしょべしょに泣きながら、ヒーラーは謝った。


おれはだんだんかわいそうになってきた。やけどまみれの手で、慰めるように顔の前で振る。これが精一杯だが。


「大丈夫、がんばれ」


ヒーラーは涙ぐみながら、ふと意を決したように立ち上がった。


巻物を勢いよく広げると、それを高速で読んでいく。


すると、おれの傷はみるみる間に癒えていった。


「家宝の品だったんですけど、うちの一族はもうわたしだけなので、これが最後でもかまいません」


「いいの?そんなものを」


「私のせいですから。じゃ、失礼します」


ヒーラーは頭を下げて出ていった。母から聞いたが、お代はもらわなかったらしい。


それから、しばらく町中でヒーラーを見ることがあったが、時々震えながら夜中まで道の端に座り込んでいた。かわいそうに思った母が何度か家に上げ、何度か家に泊まっていった。なにかの一族の末裔らしかったが、少女は語らず、おれにはよくわからなかった。


「魔法がへたで、女神様の夢も見られない。貧しくて家もないし、わたしなんて……もう……この形見の杖しか……」


自分に似ているように思ったが、おれは彼女にかける言葉が見つからなかった。



そして、ヒーラーの少女は街からいなくなった。


噂では、あの盗賊の仲間になったらしいが、なぜかはよくわからない。盗賊は各地で勇者のために用意された稀少なアイテムをかき集めているらしく、ヒーラーの少女も杖目当てで連れられたのかもしれない。


おれは心配だったが、あの盗賊……山田だっけ?


あいつが世界を救う、という噂はあちこちに広がっていた。その噂が本当なら、そのパーティにいれば王様からの褒賞も見込めるだろう。あの子にとってはいい話かもしれない。


山田はほかにも、元騎士やどこかの村一番の戦士など、屈強な男たちばかりを雇っているらしい。


いいな、おれも母が期待してくれたような、父みたいな勇者になりたかった。あの子がうらやましい。



そんな折、例の夢を見た。


夢だとわかる空間、意識のなか、おれは女神様に会った。すると、女神様は出会って早々土下座した。


「ごめんなさい、あなたが勇者にされるとは思ってなくて!はじめはチュートリアル的に快適な農夫とかにするつもりだったのに……」


「そんなのいいよ、それより、免許が……あれ?前世の感覚が近い」


「まあ、それはそうかもね、意識の世界だから」


「そうなんだ……ああ、免許取りたてだったのに、悔しいな。勇者にもなりたかったけど、免許が」


「わかったわよ」


「え?」


「固有の具現化魔法、あげたから。あとはがんばってね」


「え?」



目が覚めると、ベッドの横には立派なバイクがあった。雑誌の表紙やCMに出てくるような、すごいやつが……。


「勇者、ごはんよ……きゃああああ!モンスターが!」


「バイクだよ、母さん」


いまだに息子を癖で勇者と呼ぶ母が火炎魔法で燃やしてしまわないうちに、おれは魔法のバイクを外に出そうとした。


どうするべきかまよったが、取り敢えずいそいで乗り込み、ハンドルを握った。


重低音と震え。重い響きがあたりを包む。母は腰を抜かしたようだ。


「げほげほ」


「母さん、行ってきます」


バイクに乗ってみて、おれは決意していた……。こいつを乗りこなし、おれは勇者になる。


「え?まさか、勇者……!」


「ああ……魔王を倒しに!!」



おれはバイクを駆った。人々の驚く声、顔は見るひまもない。


平原、森、洞窟、山。


あらゆる地形を魔法のバイクは軽々とこえた。


だいたいのモンスターは轢くだけで一撃で倒せた。ボスらしきやつは最大3000回は踏んづけてやった。しかし、お宝はどのダンジョンでもほとんど入手できなかった。あの盗賊……山田はあちこちですでに先回りしているのかもしれない。


バイクとバイク乗りだからか、おれたちはレベルアップできなかった。経験値を表すキラキラした輝くなにかが、執拗におれたちについてまわった。何回でもおれたちは敵を踏んづけたが、徐々に敵は強くなり、少しずつやりづらくなってきた。



やがて、ゲームであればいわゆる終盤といえそうな、かなり厳しいらしきダンジョンにたどり着いた。


しかし、そこはパズル的な仕掛けにより、仲間が必要だった。最低2人はいるが、5人以上いるとどうやら進めないらしい。


「おれのバイクじゃ数のうちに入らないか……魔法陣が反応しないみたいだ」


すっかり魔法というよりただのバイクなおれの愛車をなでながら、おれはため息をついた。


いろいろまわりを巡ってみたが、おれのバイクは壁に張り付いたりしないため、急角度の岩山に囲まれた地形は流石に無理だった。


仕方なく、おれは最寄りの街にもどった。ちいさな街道に宿場などがそこそこあるだけ。おれは諦めきれず、一番安い宿で数日過ごした。しかし、仲間が必要なんだから、無理だよな。あれ?もしかして仲間がいても、バイクには二人乗りできなくない?やばい、免許返納だけは勘弁だ。異世界でも法律違反はしたくない。危ないし。



次の日。


ぼんやりしつつ、ふらふらとおれはあたりを見て回った。このへんで魔法薬屋を開くのもいいかもな。おれはすっかり諦めモードだった。


「あ、え?」


しかし、おれは目を疑った。街の入り口あたりに、見覚えある小柄な金髪美少女。長い杖に、なにやら大荷物。


「大丈夫か?あんた……一人で運べるか?」


「!」


途方に暮れた様子の少女は、驚いたようすで振り返った。


そのわきの荷物は、おれがのぞきこむと、はげしく光った。


「うわあああ!」


気がつくと、荷物の袋は空。かわりに、おれはすっかりフル装備になっていた。あの盗賊山田が身につけていたはずの、あの装備たちを。



「うわあ、勇者さまだ!」


「なんだ、いきなり勇者が現れた!」


「すごい、本物だわ!」


あちこちで歓声が上がる。おれはびっくりして立ち尽くしていた。ヒーラーの少女は微笑んだ。


「あの……わたしも連れて行ってください。」


「え、いいけど……あ、やっぱ無理だ」


「え?」


「おれのバイク、一人乗りだからさ」


おれはバイクを持ってきた。少し遠くの茂みに隠していたが、どうやら誰も触っていなかったようだ。


「サイドカーでもあれば別だけど……」


「?」


首をかしげるヒーラーに、おれは説明した。


「……だったら!」


少女は考えこみ、それから微笑んだ。


「わたし、あの夢を見たんです、だから!」



サイドカーつきのバイクに二人で乗り込み、おれたちはダンジョンを目指した。


勇者セットを着込んだおれは、バイクに似合っているか自信がもてない。しかし、まあ、勇者なんだから、いいか。


「どけどけー!」


おれたちは遠慮なくモンスターを轢きまくった。トラックに轢かれて転生してたらやりづらかったから、河川敷でころんだだけでよかった!



二連続でくる過酷なダンジョンも、おれたちは勢いよく進んだ。


ヒーラーは驚いていたが、なぜかおれが得ることができなかった経験値を一気に吸ってレベルアップしまくっていた。音がうるさい。


「うわー!ジャンプ台が!」


ヒーラーはなぜか地魔法にめざめ、バイクの進行方向にジャンプ台を出現させた。慣れると強化魔法と組み合わせ、加速する床までも作りだし、おれのバイクはますます加速した。


「きゃー!あはあはは」


ヒーラーは嬉しそうにはしゃいでいた。あ、今更だが、ヘルメットは大丈夫だったか……?それっぽい兜かぶってるから、いいか。取り締まられたりはしないとは思うが。いまさら、安全運転どころじゃないし。



「あれが魔王の城だ!」


おれたちは遠慮なく突っ込んだ。


跳ね橋が上がっていたが、ジャンプ台で無視。


扉も固く閉まっていたが、加速床で加速しまくって突っ込むと、あっけなく吹き飛んだ。


「魔王!覚悟!」


勇者らしいセリフだ、おれは感動した。なぜかフルアクセルで魔王城の壁を壊しながらバイクで突っ込んでいるが、気にしない。


ヒーラーはモンスターにも地形にも、もちろん壁にも弱化魔法をかけまくり、あらゆるものが、おれのバイクの下敷きになった。あと、たまにバイクに回復魔法をかけてくれた。今までなぜか気にしたこともなかったが、ガソリンが満タンになった気がする。すると、おれの魔力消費かすこし楽になった。さすが魔法のバイクだ、おれの魔力で走ってたのか。


おれは手製の魔力回復ポーションを一気に飲み干した。近所の魔法屋も認めたおれのポーションはすごい。引火もしたしな。じつはカロリーがとても高い。よくたまに飲んでたが、なかったらガス欠してたと思うと……。



はるか遠くに、盗賊の山田がいた。あれ、あんなところで仁王立ちして、轢かれるぞ、おれに。


「おれはヤマタだ、勇者よ!」


え、聞こえてる?


「しかし、それも仮の姿!真の勇者を倒した男が死んだとふれ回り、人々を絶望させる作戦は失敗した……しかし!お前を倒せば同じだ!」


なんか、このセリフ、あれっぽい。


「俺を封じたオーブを見つけたこのおろかな盗賊の姿だと思って、油断したな!おれの真の姿は……!」


「やばい!」


「へ?」


吹き飛ぶ山田。やべえ!やっちまった!


おれは叫ぶ。


「魔王だったらさっさと変身しろよ!それっぽく戦いたかったのに、もう轢いちゃったじゃん!」


あんな距離じゃ、おれたちの加速じゃもたない。会話時間が。


「そんな……」


魔王らしきものを宿したまま、盗賊山田は倒れた。


「ヤマタだ……ぐはっ」


ちょっとだけ肩から生えた真っ赤なツノのようなものが折れ、山田の懐から真っ赤なオーブが転がり落ちた。まがまがしい光を失っていき、あっさり割れる。


そこへ、天から光。


「よくがんばりましたね。勇者よ、みごと、与えた伝説の剣で魔王を討ち取り……あれ?」


「女神様、おれです。」


「あ。バイクの。じゃ、勇者よ、みごと伝説のバイクで魔王を轢き倒しました。ありがとうございます」


「へへ」


「おめでとう、勇者さま!」


ヒーラーの歓声。


盗賊山田は言った。


「おまえら、もとの世界だったら、あらゆる法律違反で逮捕されるぞ……」


「あ、あなたは前世であの勇者を轢きかけた蕎麦屋の山田くん。あなたも気をつけなさいよ。あれから、すぐに勇者をよけて、よろけた拍子に反対側の河川敷に転がり落ちて亡くなってたし……。」


女神様は言った。


「気をつけます……」


山田は言った。



帰り道は、レベルアップしたヒーラーの地形操作魔法が火を吹き、魔王城のを取り囲む岩山を軽々と飛び越えて戻った。


故郷に帰ると、魔王を倒した報告にさっそく城へ。歓迎ムードが城中にあふれ、おれたちはファンファーレで迎えられた。


「真の勇者よ、見違えたぞ!魔王を倒した!わしのあとつぎはお前じゃ!決めたぞ!」


王様は気が早かった。


おれはバイクを城の外に停めていたが、外に出ると派手な神輿にそのバイクが載せられていた。それが人々に担がれて動き出し、おれたちはあとの神輿に乗ってパレードに参加させられた。となりでヒーラーは目をキラキラさせながらあちこちに手を振っていた。おれは母に手を振った。母は家の窓から一人で見ていた。


しかし、おれより先に旅立ったはずの父はいなかった。物心つくころには父はいなかったが、おれは母の顔を見て寂しくなった。おれがいなくなってからは一人で待ってたんだな……。



「すごかったね」


ヒーラーは王宮の寝室でつぶやいた。もう夕方だった。パレードがあり、これから花火と宴会があるというが、一回休憩を挟ませてもらった。


そこへ、天からの、いや天井からの光。


いや、よく見ると、その光はヒーラーから発せられていた。


「光るのか、ヒーラーさん」


「……そうみたい?」


不思議そうにヒーラーは首をかしげた。すると、ヒーラーから女神様の声がした。


「このヒーラーは昔、わたしを祀る文化があったころの巫女一族の末裔です。この者を救ったからには、わたしはもう一度、あなたの願いを叶えたいと思います。」


「え!」


固まるおれに、女神様は言った。


「いいですよ、なんでも。といっても、あなたはこの国の次期王様でしたね。もうなにも望むものはないでしょう。だったら、もとの人生に戻る、というのは?免許とったばかりだと言ってましたし……」


「でも、こっちでもう十分乗り回してるしな。それもいいや。」


「じゃ、どうします?」


女神様とヒーラーの声がかぶる。おれはうなずいた。


「……父を、もし無事なら母さんのもとへ。死んでたら、生き返して家に帰してくれ」


「わかりました」


ヒーラーのおでこの光が消える。


おれはいてもたってもいられず、家に戻る。


家では、父と母が抱き合っていた。おれはそのなかに混じって歓声をあげたかったが、しばらく我慢して見守っていた。


「おお、かえったぞ、息子よ」


「……おかえり!」


おれはその日、結局お城の寝室では寝なかった。家族団欒にくわえられたおれを、しばらくヒーラーは見守っていて、すぐに彼女も加えられた。そして一晩家で宴会しながら、みんなで一緒に過ごした。



王としての人生は忙しく、あっという間にすぎた。ヒーラーは妃となり、おれを一生支えた。バイクは厩舎を改造した専用ガレージに入れてもらい、たまに磨いたりした。乗るひまはあまりなかったが、たまには思い切り乗り回した。乗るとたまに珍しいダンジョンやアイテム、遭難中の隣国の使者や旅人に出会った。それらとの出会いをいかし、わが国を発展させたりもした。子供たちはおれのバイクを気に入ったが、危ないから幼いうちはなかなかサイドカーにも乗せられなかった。たまに妻は、自分の魔法によるサイドカーを自慢していた。


大人になった子供たちは、馬風のバイクなど、思い思いの具現化魔法を得て、好きに広大な国土を乗り回した。その姿は国民たちに愛され、国民たちもさまざまな具現化魔法バイクを手に入れた。やがて魔法バイク国家としておれの国は広く知れ渡った。おれは満足だった。やがて孫にも恵まれ、年老いたおれは死を前にする自分を意識しはじめていた。王位はそのころにはすでに、優秀な息子に継がせていた。世襲制を無視して一番バイクのうまいやつにしたかったが、そうすると、息子たちはたぶん揉める。なので、取り敢えず長男にしといた。年も離れていて有能だったため、取り敢えず後顧の憂いはなくなった。(あと長男はおれのバイクをよく知り、バイクもうまかった。長男の固有具現化バイクもなかなかいいので、ちょっと嬉しい。長男はすでに仕事に忙しく、バイクは専用ガレージの中だ。たまには乗っているのだろうか。)


死に際に、おれはなにかの声を聞いた。一本調子の暗いような無機質なような、神聖な気もする歌?そうだ、これは……あれかもしれない。


やばい、妃に聞いておかないと。おれは暗くなっていく視界の中、聞いた。


「お、おい」


「なんですか?」


「おれの来世って、もしかして……」


「はい、あなたのなりたかった、あれにしときました。前にも言ってましたからね。」


「そうか、ありがとう……」


妻はすっかり女神様と同化し、たまに力をこっそり使うときもあった。そのせいか政治の助言も的確で、どんな政治上の局面の判断をも外さなかった。息子たちにもセンスが継がれていて、このためにおれは天の配剤を信じた。


おれは明るい世界を感じた。


目を閉じ、眠るようにおれは逝くのだろう。


そして、来世は……。

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