074.ウサギパニック
「着いたのです」
『そうみたいだね』
目の前にあるのはウサギの紋様が刻み込まれたアーチ状の門だ。ここがスタリアにあるダンジョン、通称ウサギダンジョンと呼ばれ、ウサギ型の魔獣しか出てこないらしい。
ちなみにミニックは今回のために持てるだけの最大の麻袋を冒険者ギルドで購入した。麻袋に350ニクルもするとは思わなかったね。あとは地図。これが500ニクルした。だから残金は500ニクルしかない。
ミニックが門を抜けて階段を降りていく。
ギルドで確認したところウサギダンジョンは全部で10階層。1、2階層ではGランクの魔物が、3、4、5階層ではFランクの魔物。5階層のボスがEランクの魔物。6〜10階層ではEランクの魔物が出るらしい。今日の目標は6階層まで行って100体魔物を狩ることだ。ダンジョンの広さとしてはそんなに広くないから多分行けると思うんだよね。ミニックはすごい嫌そうな顔してたけど。
『フォーチュンラビットに出てきて欲しいのです』
『そんな簡単にはいかないと思うけど』
フォーチュンラビットとはウサギダンジョンの低階層で出てくる金色のウサギ。フォーチュンラビットが落とすドロップアイテムは幸運の月貨といって金運が上昇して、持ち主に幸運をもたらす。それがギルドで高価買取されるのだ。その買取価格は10万ニクル。昨日考えていた達成金額の10倍である。
ただしフォーチュンラビットは逃げ足がすごく早いらしく冒険者が倒すのは難しいらしい。
……ミニックなら弾丸で打ち抜けばいいだけだし見つかれば簡単に倒せるかも?
階段を降りると早速魔物が現れる。小さいウサギ型の魔物だ。一応〈天眼〉で見てみるとこんな感じ。
────────────────────
種族:ミニラビット
状態:通常
小型のウサギ型魔物。Gランク。ぴょんぴょんと飛び跳ねる。ウサギ肉をドロップする。
────────────────────
明らかに弱そう。そういえばGランクの魔物とか初めてみるかも。ゴブリンでさえFランクはあったからね。
『なんか倒すのが可哀想になってくるのです』
『でも一体は倒して欲しいんだよね』
わたしがそんな鬼畜なことを言うのはなぜか? それはもちろん天声ポイントのためだね。Gランクの魔物を倒した時の初回討伐ポイントはもらえるかの検証をしてほしい。
『可哀想だけどいっちゃって!』
『……わかったのです』
バン!
「キュー」
頭を撃ち抜かれたミニラビットは黒い煙となって消えて爪くらいの大きさの魔石と笹みたいな葉っぱに包まれた肉がドロップした。
わたしは早速〈天眼〉で〈天の声〉を確認する。
────────────────────
技能:
副技:天啓
天眼
天授
天与
天秤
天運
??
天声ポイント:1pt
天命 ★★☆
────────────────────
うん。やっぱりGランクでも天声ポイントがもらえるみたい。今まででG、F、Eランクの魔物の初回討伐では1ポイント、Dランクだと5ポイント、Cランクだと10、Bランクだと20だというのは分かっている。ただAランクが微妙で多分40ポイントだと思うんだけど、魔物によってもらえたりもらえなかったりするんだよね。それが謎。で、あとはSランクが70でSSランクが100ポイントかな? 全部確認したわけじゃないけど多分あってると思う。
ミニックが魔石と肉を拾って一息ついているとまたミニラビットがぴょんぴょんとこちらに向かってくる。
『ミニック。来てるよ』
『もう倒さなくていいのです?』
『別にいいけど』
『なら逃げるのです』
ミニラビットはぴょんぴょんと追いつこうとするがミニックちょっと早く走るだけでついてこれなくなる。
しばらく進むと先ほどよりちょっと大きなウサギが現れた。あれは違う魔物っぽいから倒してもらおうかな?
────────────────────
種族:ツノなしホーンラビット
状態:通常
小型のウサギ型魔物。Gランク。ぴょんぴょんと飛び跳ねる。ウサギ肉をドロップする。
────────────────────
ツノなしホーンラビットって。それもうただのラビットで良くない? しかも説明文がミニラビットと同じだよね? 〈天眼〉さん? 手抜きかな?
『ミニック。あれも倒して』
『わかったのです』
バン!
「ギュ」
これも頭に弾丸一発で沈んでいった。
さらに追いかけてくるウサギもいるけどやっぱりミニックに追いつけない。あまりに弱すぎて憐れみを感じるね。
……そう思ったのが良くなかったのだろうか。大量の魔物の気配がする。〈天運〉が悪運を発動したのかもしれない。
『囲まれてるね?』
『なのです。大量のラビットたちなのです』
ラビットたちが大量にミニックの元へやってくる。もしかして氾濫が起こってるのかと思って周りを見回してみるけど他の冒険者たちには少しのウサギしかいない。ラビットたちはミニックだけを追いかけてきているみたいだ。
それにこのダンジョンはまだできて50年のダンジョンだと聞いた。だとすると本来なら氾濫は起こらないはずだ。セリスの件があるから絶対とは言えないんだけど、流石にそこまでの悪運があるとは思いたくない。
ミニックが弾丸を撃ちまくる。しかし倒しても倒しても湧いてくるラビットたちにミニックが飲み込まれそうだ。
『魔力を練ってから跳んで!』
わたしは咄嗟に命令する。ミニックは迷うことなく精神集中を始めるがウサギが群がり始める。しかしウサギたちの体当たりはたいしてミニックにダメージを与えられない。……あんまり焦る必要はなかったかもしれない。
まあ、それはいいや。ミニックがジャンプした。
『自分にヴォイドグラヴィティを使って!』
「ヴォイドグラヴィティなのです!」
ミニックにかかる重力がなくなった。そのまま天井までミニックが浮かび上がる。
『あとは魔法が切れる前に殲滅するだけだね』
『なのです!』
ミニックの銃声が響き渡る。それが聞こえなくなる頃には大量のドロップアイテムと魔石の山が高く積まれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます