プロレスとは何か?というのをきちんと説明するのはなかなか難しい。ルール自体はしっかり存在する。だが、それと同時にプロレスにはいくつもの暗黙の了解がある。その結果、プロレスとは格闘技なのか、スポーツなのか、あるいは単なるパフォーマンスなのか、という単純な疑問に21世紀になっても明確な答えが出せないままなのだ。
そんな中、本作品では高校生による高校生のためのプロレス機構「ハイスクール・プロレスリング協会」が存在する世界を舞台にして、「プロレスとは何か?」という問いに答えようとする。
その中心となるのはマスク・ド・オークと呼ばれる覆面レスラー。強靭な肉体を持ちながらも、オークのような覆面を被り、セコンドにはエルフ姿の少女を従えている色物系。さらには相手の技を受けようとせず自分のやりたいことばかり押し付けるファイトスタイルで、しょっぱいレスラーだ。
このオークと戦う対戦相手たち――プロレスを愛する正統派、元総合格闘家、コミカルな試合を好むお笑いレスラーの三名のそれぞれの視点から物語は語られ、タイプの違う彼らとオークのぶつかり合いを通して、作者はプロレスの魅力とその正体に迫ろうとする。
果たしてプロレスとは純粋な力比べなのか、あるいはフェイクなのか、それとももっと別の何かなのか? 高校生プロレスという新しい概念を作り出して青春要素を加えつつも、プロレスが秘める怪しい部分にもしっかり触れる今までになかったプロレス小説だ。
(「拳で道を切り開く! 特殊格闘技小説!」4選/文=柿崎憲)