だって約束したからね!
こう
第1話 こわいゆめ
こわいようこわいよう。
こわいようあついようこわいよう。
イザベラは眠るのが怖かった。眠ると必ず悪夢を見るから。
こわいようこわいよう。
ぜんぶまっかで、くるしくて、うごけないよう。
悪夢ではいつもイザベラは倒れていて、酷く頭が痛くて指一本動けない。
ぼんやり見える部屋は見覚えのない薄汚れた部屋で、壁の木目が真っ赤に照らされている。やけに近くからぼうぼうと燃える音がして、髪の毛や肌が焦げてしまうほどの近さに熱を感じた。いつもすぐ近くで炙られるから、イザベラは火が怖くて仕方がない。
こわいようこわいよう。
もえちゃうよう。だれかたすけて。
助けを呼びたくても、声も出ない。呼吸も苦しくて、煙が充満して、喉が焼けるように痛い。きっと火が身体の中に入り込んで、内と外から焼こうとしているんだ。イザベラは火の近くで感じる息苦しさをそう感じ取った。内側から、燃やされている。
こわいようこわいよう。
たすけてかあさま。とうさま。あっしゅ。あーみあんさま。
イザベラは一生懸命助けを呼ぶのに、夢の中のイザベラはぐったりして声も出ない。
ぼうぼうと燃え盛る音。ガラガラと何かが崩れる音。目の前が真っ赤に染まり、最後には黒くなる。
イザベラは甲高い悲鳴を上げて目を覚ました。
あんあんと声を上げて泣き、全身が焼け爛れている気がして痛い痛いと泣いた。一人ぼっちで燃え尽きて、誰もいない恐怖に泣いた。そんなイザベラを、小さな手がいつも抱き締め撫でて慰めてくれた。
「だいじょうぶだよイザベラ。どこももえてない」
「泣かないでイザベラ。ぼくらはちゃんとここにいるよ」
イザベラは泣いた。慰めてくれる小さな手をぎゅっと握りしめて、放すものかと泣いた。
「だいじょうぶだよイザベラ。ずっとぼくが守るから」
「泣かないでイザベラ。ぜったいに一人にしないから」
「や、やくしょく。やくそくしてよぉ…」
それは悪夢で夜眠れないイザベラが、うとうとして眠ってしまった昼下がり。
悪夢に魘されるイザベラと、子供たちが交わした約束。
ずっとさんにんいっしょだよ。
悪夢の炎に怯える幼子は、小さな手のぬくもりに縋った。
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