第30話

「100年ぶりってどういうことですかアリユスさん!」



ユリンシスが疑問を含んだ口調で訪ねてくる。


(俺は100年前に同じ種族のドラゴンと戦ったことがあるんです)


「その時は倒せたんですか?」


(ええ、もちろんそう簡単には行きませんでしたけど)


「じゃあその時はどうやって倒したんですか?」


続けて疑問をぶつけてくる。


(結論から言うとあのモンスターのドラゴンには弱点らしい弱点がありません)


「それじゃあ、あんな凶暴なモンスターどうやって倒せばいいんですか!」



プレミアが驚きと困惑が混じった言葉を口にする。


(俺もあのモンスターと100年前に戦っていた時は途中から倒した時の状況をはっきりと覚えていないんです)


でもただ一つ気をつけなきゃいけないのは…


俺が2人に伝えようとしたその瞬間!


(2人とも避けてください!)


その瞬間モンスターが俺たちに向かって氷のブレスを放ってくる。


俺たちはブレスの攻撃をギリギリでそれぞれ右と左に避けた。


(おそらく後数秒反応が遅れてたら俺含め3人氷漬けにされて動けなくなってたな)


「何なんですか今の攻撃は!」


ユリンシスが声を震わせ訪ねてくる。


(俺が100年前に戦っていた時村の半分をたった一度のブレスで氷漬けにした攻撃です)


「でもお姉様の効果力の魔法なら今の攻撃を押し返すことができるんじゃないですか?」



(いやいくらユリンシスさんの攻撃が強かったとしてもあの攻撃には歯が立ちませんよ)


(それにもしあの攻撃を押し返すことができたとしても、もう一度同じ攻撃をやられて押し返せなかったら意味がありません)


「でもそれなら一体どうすれば!」


(大丈夫です俺が何とかします!)


「そんな無茶ですよ!」

「そんな無茶ですよ!」


2人に同時に引き止められてしまう。


(大丈夫ですよそんなに心配しなくても俺はこれでも元勇者ですよそう簡単にやられたりはしません)


距離を詰めたと同時に翼を羽ばたかせその風圧で俺を近づけさせないようにする。


(俺は勇者としてこの手で魔王を討伐することができなかった)


(だから今度こそ俺がこの手で魔王を討伐する!)


(そんな魔王を倒そうとしている勇者がこんなドラゴンに手こずってるわけにはいかないんだよ!)


体にひしひしと風圧を感じながらも距離を詰める。


完全に手が届かないところまで飛んだモンスターは俺を横目で捉えながら辺りを飛び回る。


「あんなに高いところまで飛ばれたら私たちは手が出ない」


(ユリンシスさんには魔法があるじゃないですか)


「でもいくら私とプレミアちゃんが魔法を使えるって言ってもあそこまで飛ばれたら」


(2人は後ろに下がって杖を構えて攻撃をできるタイミングを見計らってください)


(俺はどうにか攻撃ができないか探ってみます)


と言うとユリンシスがまた俺を引き止めようとしているようだったが、でも無駄だと判断したのか言うのをやめる。


近づくと容赦なく俺に向かって氷のブレスを放ってくる。


(さすがに安易に近づくわけにはいかなそうだな)


このまま中を飛び俺に向かって攻撃をしてくるかと思いきやちょうど周りを一周したところで俺に狙いを定める。


すると両方の足先で俺の体をがしっと掴み再び高く飛ぶ。


(なるほどこいつ俺を天井に叩きつけようとしてるのか)


どうやら俺の考えが当たっていたようでだんだんと上に上がっていく。


(そう簡単に叩きつけられてたまるか!)


(激しい音が周りに響き渡る!


「アリユスさん!」

「アリユスさん!」


(ふう危なかった後もうちょっとで本当に天井と激突するところだった)


心の中でほっと安堵のため息を漏らしながら2人の方に顔を向ける。


(2人とも鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔してどうしたんですか?)


「アリユスさんだって今思いっきり天井にぶつかってたじゃないですか!」


(俺も後少し遅れてたら直撃すると思ってましたよ)


「じゃあなんでアリユスさんは今こうして無傷なんですか!」


次に驚きの声をあげたのはプレミアだ。


(それは壁に激突する前にあのドラゴンと戦ってて、傷を負わすことはできなかったんですけどなんとか捕まえられた足からは逃げることができたので)


(俺は引き続きモンスターの気を引きつけるのでどうにか攻撃する手段を考えてください!)


「いくらそう言われても魔法で攻撃するぐらいしか手段はありませんしその魔法の攻撃が通用するかも分かりません」


プレミアがどうしようかと頭を抱え考える。


(大丈夫です2人ならきっとできます)


(俺は俺で攻撃の手段をちゃんと考えますから空に飛んでる時の攻撃方法は2人に任せましたよ)


「ここまで言われたらやるしかありませんよプレミアちゃん」


(さて空中戦は2人に任せるにしても俺が何もしないってわけにはいかない)


俺がモンスターの動きを観察していると、なぜかいきなり地面に降りてくる。


(どうしたんだいきなり空中で飛び回って俺たちに攻撃を仕掛けてれば特に苦労することもないはずだ)


と思った瞬間!


俺めがけて再び氷のブレスを放ってくる。


だがその攻撃は余裕で避ける。



(なるほどうっとうしくつきまとってくる俺を先に始末しようっていう魂胆か)


(正しい判断だ、だが俺もそう簡単にやられるわけにはいかない)


ある程度モンスターとの距離を取ったところで2人の方に目を向けてみると、プレミアが魔法で大きな大砲を作り上げていた。


何かを察したのかモンスターは再び空中へと飛ぶ。


ユリンシスがその大砲に魔法で力を込め玉を放つ。


モンスターに向かって放たれた玉はまっすぐ直撃した。



大ダメージとは行かなかったようだがわずかに鱗の部分に綻びが見える。


(そうだこの方法なら俺があのモンスターを倒せる)


(ユリンシスさん俺をその大砲の中に入れてください!)


「何を言ってるんですかそんなことしたら!」


(自分でも頭のおかしいことを言ってることは分かってます)


(でも倒すためには必要なことなんです!)


それから俺が考えた作戦を一通り伝え俺の体をプレミアが作った大砲の中に入れてもらう。


「それじゃあ行きますよアリユスさん!」


(はい!)


ユリンシスの魔法で火をつけてもらい俺がモンスターに向かって飛ばされる。


すると考えていた通りモンスターと激突し地面に落ちる前にモンスターにしがみつく。


俺は背中に乗り容赦なく攻撃を畳みかける。


モンスターは俺の攻撃をくらいなんとか振り落とそうとするが負けじとしがみつく。


(そんな簡単に振り落とされるわけにはいかないんだよ!)


鷹の鋭い爪でモンスターの目を攻撃する。


さすがに鱗は固くても目に直接攻撃をされるのはかなりの大ダメージだったようで大きな叫び声をあげながら地面に落ちていく。


(2人とも今です攻撃をしてください!)


指示をすると2人は杖を構え直し攻撃を放つ。


俺はその2人の攻撃を何とか回避する。


これで終わりかと思いきや2人の攻撃を食らっても体勢を立て直そうとする。


(そういえばお前たちの種族はその鱗の固さと体力の多さが脅威とされている理由だったな)


(でもそれだけで俺たちには勝てないぞ)


そのモンスターはそれでも俺に再び攻撃をしてこようとしたがその攻撃をかわし急所の部分に攻撃を入れ倒す。


(はぁなんとか倒せましたね)


安堵のため息を漏らす。


「そんなことよりアリユスさん大丈夫なんですか?」


「大砲で飛ばした私が言うのもあれですけど怪我とか?」


「大丈夫ですよ、それに俺が自分でアリユスさんに頼んだんですから」


それから俺たちは素材の剥ぎ取りをしいつも通りギルドに戻った。

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