第29話
「諦めるわけにはいかない!」
剣を構え直し距離を詰める。
モンスターはそれから逃げるように徐々に後ろに下がっていく。
「いくら俺の攻撃を避けようとしたところで倒さなければ何の意味もないぞ」
「こんなところで負けるわけにはいかない!」
「いくらお前の体がカタカローが俺はお前を倒す」
俺がそう言うと手に持っている鉄球を振り回す。
「何度も同じ攻撃を食らうわけないだろう!」
余裕の表情でその攻撃を避ける。
その一瞬でできた隙に攻撃を叩き込む。
遅かったか。
だがその攻撃をガードされてしまう!
俺の攻撃に対応するため無理な動きをしたせいなのか一瞬体勢を崩した瞬間を狙い再び攻撃を叩き込む。
するとその攻撃は避けきれなかったらしくもろに食らう。
「うおおおーーー!!!」
かなりのダメージだったのか叫び声をあげながらもなんとか一度崩れた体勢から持ち直す。
「今の攻撃を食らっても持ち直すかさすがだな」
敵でありながら感心してしまう。
「けど今の攻撃を食らってまともな状態じゃいられないだろう」
おそらく立っているのもやっとのはず。
それでもモンスターは懲りずに鉄球を振り回し振り下ろしてくるがそのスピードは明らかにさっきまでより落ちている。
「もう終わりだ!」
俺はモンスターの鎧ごと真っ二つに剣で切り裂いた。
次に目を覚ますと後ろには同じ見た目をしたモンスターがずらりと並んでいる。
俺はそのモンスターの方に体を向け手に持っている鉄球を振り回す。
周りにいるモンスターたちはそのいきなりの攻撃に反応しきれなかったのか次から次へと巻き込まれていく。
「アリユスさんモンスターの体に乗り移ることができたんですか!」
ええ、できるかどうかは賭けだったんですけどうまくいって良かったです。
ユリンシスが不思議そうに首をかしげる。
そうかこの体生き物の体じゃなくてモンスターの体だからユリンシスさんに言葉が届かないんだ!
一瞬どうしようかと考えたがもし本当に伝えたいことがあれば元の体に戻ればいいだけかと思いとりあえず頷いておく。
俺がモンスターの方に体を向け直したその時斧を振り下ろしてくる。
鉄球でその攻撃をガードする。
このモンスター身につけてる鎧いは一緒だけど手に持っている武器はそれぞれ違うのか。
俺は片方の手に持っている鉄球を上に上げものすごい勢いで振り回す。
竜巻のような風が巻き起こり周りのモンスターはその竜巻のような風に巻き込まれあっという間に倒していく。
「すごい今のたった1回の攻撃で全てのモンスターが全滅した!」
素直に驚きの声をあげたのはプレミアだ。
俺は周りに倒れているモンスターを指さしこのモンスターの素材を剥ぎ取るように指示する。
「アリユスさんさっきから何で喋らないんですか?」
言われてどうにかして自分の言葉を訴えることができないことを伝えようとしたがどうやればいいのかわからず困ってしまう。
「アリユスさんは喋れないのではなくお姉様に声が聞こえていないだけなんじゃないでしょうか?」
「どういうことですか?」
「お姉様の心を読む能力は人間とモンスターには通用しないんでしたよね?」
「そうか今のアリユスさんはモンスターだから私が心の声を聞くことができないんですね!」
その俺は言葉に何度も頷く。
「それじゃあバッタの方の体に戻りますかアリユスさん」
首を横にふる。
1つの体だけじゃなく別の体の動きにも慣れておかないとな。
「そうですか…」
断ったことを疑問に思っているようだがそれを伝えることができないのでもどかしい。
とは言っても本当に伝えたいことがある場合は元の体に戻ればいいだけなのでそんなに困ってはいない。
俺がこの100年後の世界にやってきてからすぐに動物の心を読むことができるユリンシスに出会ったので気づかなかったがもし出会うことができなかったら最初の段階で何もできずに終わっていた。
当たり前のこと過ぎて忘れていたが今俺は人間の言葉を喋れない!
俺はとりあえず周りに転がっているモンスターの死骸を指さす。
「何を伝えようとしてるんでしょうか?」
「もしかしてこのモンスターの素材を剥ぎ取ろうと言ってるんじゃないでしょうか?」
強く頷きプレミアの冊子の良さに驚く。
周りにいるモンスターの素材を剥ぎ取ったところで俺は地面に転がっていた鷹の死骸をユリンシスに手渡す。
また後でこの体に乗り移ることがあるかもしれないので念のために持っていてもらうことに越したことはないだろう。
俺がユリンシスに身振り手振りを踏まえてこれを持っといてくれと説明するとどうにか伝わったようでそれを持ち物の中に入れておいてくれる。
それからも敵を倒しながら前に進。
「お姉様あれって?」
プレミアが前の方を指差す。
すると少し遠くの方に大きな扉があるのが見える。
「とりあえず行ってみましょうか」
「これって!」
プレミアが小さく驚きの言葉を漏らす。
「おそらく前に探索をしたダンジョンと同じボスベアでしょうね」
ユリンシスが答える。
「それじゃあ行きますよ」
俺たちに確認するように行ってからユリンシスが重たそうな扉を慎重に開ける。
中に入ってみると周りは水晶のように綺麗な氷で覆われている。
天井の部分にはつららが並んでいてとても鋭い。
地面も全てが凍てついている。
真ん中には俺たちにしっぽを向けているモンスターが目の前にいる。
「このモンスター私たちが入ってきたことに気づいてないんでしょうか?」
プレミアがモンスターに聞こえないように小さな声で言うとその声に反応するようにゆっくりと顔を上げこっちの方に顔を向ける。
目の前にいるドラゴンは白い鱗で体が覆われていてとても硬そうだ。
待てよこの白い鱗と水色の綺麗な目このモンスター昔どっかで戦ったことがあるような?
そうだこのドラゴンのモンスター昔緊急クエスト依頼で戦うことになったモンスターだ。
あの時のモンスターは100年前俺が倒しているので同じモンスターというわけじゃないが強さは俺がよく知っている。
確かあの時はもうすでにそのモンスターにいくつかの村を焼き滅ぼされていてどうにかしてくれっていう話だったな。
いつまでも思い出に浸ってる場合じゃないか。
後ろにいる2人にアイコンタクトで指示をするとうまく伝わってくれたようで2人が杖を構える。
モンスターは俺たちを威嚇するように叫び声を上げる。
叫び声になんとか耐え俺が1歩前に出て鉄球をモンスターの顔面に当てるが全くダメージがないらしくピンピンしている。
さすがにAランクのモンスターなだけあって硬いな!
「アリユスさんよけてください!」
ひとまず俺はモンスターから距離を取る。
次の瞬間ユリンシスの効果力の魔法がモンスターに直撃する。
だが首を横にするだけで顔に傷などは全くついていない。
「嘘Aランクモンスターってこんなに強いものなんですかお姉様!」
「私もそれなりに覚悟はしていたつもりでしたが想像以上です!」
驚きの言葉を口にする2人とは対照的に俺はとても冷静だった。
今のこの体じゃ攻撃力はあるけどその分動きが遅い。
そう考えると空を飛ぶドラゴンと戦うのは不利。
体を乗り換えるか。
再び鷹の体へと乗り移る。
(2人ともあのモンスターは体全体が鱗に覆われていてそう簡単に攻撃が通らないんです)
「アリユスさんこの体に戻ったんですか!」
「でもそしたらこのモンスターはどうやって倒せば!」
ユリンシスが疑問の言葉を投げかけてくる。
(それじゃあ100年ぶりの戦いと行きますか!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます