黒と黄1 闇のりんご飴

黒と黄1 闇のりんご飴


とあるホームにて


「りんご飴はいかがですか?そんな、ギリギリのところにいたら、危ないですよ。」


「いいんです。もう何も残ってないんで。・・・・・・」


わたしは、とても憔悴しきっている様子の彼に話しかけた。


「もしよかったら、こちらの試作品をどうぞ。」


「黒いりんご飴ですか。珍しいですね。まるで今の僕みたいだ。」


「どういう意味ですか?」


「実は、長年勤めた会社があって、そこは、いわゆるブラック会社だったんですよ。それでも、俺は、他に行くところがないから、一生懸命その会社で働いたんです。それなのに、うぅ、それなのに、今日リストラされてしまって、家に帰ったら妻や子供に、どんな顔して会えばいいのか、お先真っ暗なんです。僕はいや、俺は、今一人で闇の中にいるんです。」


「そうだったんですか。でも、どうして諦めるんですか?一人で闇の中って、まだ奥さんやお子さんがいるんでしょう?どうして、裏切るんですか?」


「え?いや、だって、誰だって、こんな男嫌いでしょう?」


「そうですかね。私だったら、他人に振り回されるような人生納得できません」


「貴方には関係ないでしょう。」


「貴方は、本当に暗闇の中にいるんですかね。誰も、その闇を照らしてくれないんですか?」


「何言ってるんですか?」


「私は、貴方は、闇からは抜け出したと思います。だって、このりんご飴が、貴方の闇を吸収してくれたから。」


「え?」


「人間、そう、うまくいきません。貴方を支えてくれる人は、本当はまだ残っているんじゃないんですか?」


「ふふ。面白いことをいいますね。確かに、その考えはありませんでした。これからも、頑張りたいと思います。このりんご飴に誓って。」


「りんご飴の感想聞かせてくださいね。」


「そうでした。家族に買っていっていいですか?」


「もちろん。」


「あの、また来るので、もしよかったら、緑色と、着色アレルギーでも食べられる、りんご飴を作ってくれませんか?」


「わかりました。」

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