miracle live in 2024.1.1

坂中祐介

第1話

東京から北陸地方のA市に来ている歌手のシンイチは、実は、年末年始は、ここのA市にいて、コンサートを開く予定だった。

 しかし、シンイチは、本当は、北陸地方のA市に来たくなかった。

 もう、2023年12月も終わるのだが、だが、本当は、東京へ戻りたかった。

 本当は、年末年始は、憧れの彩女を誘いたかった。

 アヤメは、女優の上白石萌歌に似ているから。

 しかし、東京へ戻っても、歌が大して上手くないシンイチは、事務所の社長から「シンイチは、北陸地方のA市に行って、地方巡業をしてこい」と言われていた。

 歌手のシンイチは、顔だけは、佐藤健に似ている。

 だから、事務所の先輩歌手からは、「お前は、佐藤健の弟か?」などと揶揄われる。

 そして、2023年12月30日。

 東京駅から北陸新幹線かがやきに乗って、北陸地方のA駅にやってきた。

 シンイチは、こう感じた。

「こんなA市なんて、東京に比べたら田舎じゃん」

「信号が、変だ。横断歩道の信号が縦になっている」

 なんて思った。

 アヤメをデートに誘えず、そして、LINEの交換もできず、一人で、悶々としながら、北陸新幹線に乗って、ここのA市にやってきた。

 そして、A市の観光局のスタッフに会って

「シンイチさんは、これから、A市のL町に行ってもらいます」

 とA市のクルマで送ってもらった。

 A市は、まだ、この辺りでも都会だった。

 そして、戦国武将の何とか何だ衛門が、A城を立てた。

 さらに、A市のB神社には、鎌倉時代からの由緒ある神社です、と言った。そして、A市には、A総合病院があって、さらに、A市バスが、青色のラインをボディに塗って走っている。

「シンイチさん」

「はい」

「ここのA駅はね、昔、北陸本線があった時、東京までは、寝台特急があったんですよ」

「へぇ」

「今は、便利になって、北陸新幹線かがやきで、すぐに、東京へ行くから」

 と言った。

「今は、第三セクターになって、不便になるんじゃないかって、思っている」

 とか言っていた。

 そして、2023年12月31日。

 シンイチは、NHK紅白歌合戦を観ていた。

 同じ歌手をしている人間が、渋谷で歌っている。

 オレは、何だろうって思った。

 そして、チューハイを一杯飲んで、ホテルで寝た。

 アダルトサイトを観たが、実際の彼女ではなく、最近では、動物の交尾に見えてみなくなった。

 2024年1月1日になった。

 朝から暖かい日よりだった。

 そして、シンイチは、A神社まで、初詣に出かけた。

 ライブは、そこの小さな公民館で行う。

 今日は、仲間が、5人、クルマで来るらしい。

 着物姿の女性やら親子連れを何人か見た。

 そして、夕方4時前だった。

ーPRRR

 とスマホが鳴った。

 見知らぬ番号だった。

「はい、どなた?」

「シンイチ君?」

「え、アヤメさん?」

「大丈夫かなって」

「いや、大丈夫だよ」

「ライブ、頑張ってね」

 と言った。

 そして、その直後だった。

 ガラガラドンドン。

 急に建物が揺れた。

 アヤメは、音楽事務所の事務スタッフだったが、学生時代、一時期、占いのバイトをしていた。

 まさか、そんなことが、とシンイチは、思った。

 そして

ー地震発生!

ー今すぐ逃げてください!

 となった。

 ホテルのフロントが急にやってきた。

ーエレベーターが駄目だから、非常階段で逃げてください

 と言った。

 この時、震度は7らしい。

 慌てて逃げたがシンイチは、どうしたら良いのか、もうパニックになった。

 …

 そして、A市の避難所へ行った。ただ、避難所は、寒く、ここは雪国で、寒くなっていた。

 シンイチは、客として来ていたが、その内、A市の役所の人が来て「すみません」と言った。

 避難所には、一か月も過ごしていくとは思えなかった。

 勿論、SNSでは、大変だったが、この時、シンイチは、少し、思った。

 東京の大学を卒業したら、本当は、市役所勤めをしようと思っていた。だが、シンイチは、大学で、同級生と喧嘩になり、教授に罵られ、無職のまま、卒業した。実は、シンイチは、40代後半になった。

 だが、今の音楽事務所が、歌だけは好きなシンイチを拾って今に至った。

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