授けられしみかんの皮をむく能力で神のごとく

『グウェン』

第1話 再生

人間の純化に懸ける思いは真実だと信じたい。生命の輝きをみせ、精力的になる生物。自分を、世界を、他人を、ありとあらゆる罪を浄化する。その甘美な響きにあらがえる人などいるのだろうか。

その転生者は、死してなおそのしがらみから逃れられずに新たな世界へと送られた。己の罪が浄化されると信じ戦う、人と魔が支配する世界へと。


なぁぜひとのいふとこよははんなにもなみだあふれたまふのですか?モットヘイワニナッテホシイ。watasihasyousetutoukousaitono「nakeruhanasi」woomoniyomiasatteitaw,sosite「sns」dekanasii「nyu-su」nadowoyondebakariitakara「kanasimisi」wositesimattayouda.覚醒後、目前に神!直視した瞬間、頭に声が響いた!!まず初めに、君の人生はどうせくだらない内容のない内容だから語らなくてもどうでもいいのだと神はおっしゃった。生命力という言葉は、それ自体が命のバイブレーションを感じさせる正に純真な竜吟虎嘯(りゅうぎんこしょう)の響きを伴う純潔の祈りというに相応しく、信仰の服となるべきものである。その生命力のアントニウムこそ、なんだかしと、あはなれば、おもしろをかし、並の人間では察しづかぬことなりけり、いとをかし。


いろはにほへとぱぴぷぺぽまみもめも


「止めて!神様やめて下……し……あ!どういう意味ですか?頭がおかしくなりそうです?!」流れ込んでくる何かに圧倒される。しかし、束の間の夢に似た幸せな幻覚であったかのように、ただの気のせいだったのかと思えるほど、嘘のように落ち着いた。


「これからお主には、みかんの皮をむく能力で魔王を倒してもらう」反響するように神の声が聞こえる。


「ど、どうやって?!ど、どういう意味ですか?!!」私はそう聞けどもすべては分かっていた。


「とにかくみかんの皮をむけばそれでよい!行くのだ!」


時はまさに乱世。そうして私は、戦場の真っただ中に――光を伴いみかん片手に地上へ降り立った。神が私に授けたのは謎能力だ。しかし……!感じればわかる。みかんの皮をむいているときに限り、神と同じ万能の力を得るのだっ!全身が全能感で打ち震える。


戦場がどよめく。突然の降臨により、直径200m範囲にいた魔王と人間の軍勢が蒸発したからだ。


魔王軍所属の勇猛な将軍である狼の獣人(名をオルガザインといった)が私を目標に定め、片手剣を頼りに猛烈に向かってくるつもりだ。


「お前は、デリートだ!」私はみかんの皮をむきながらそう宣言し、彼と巻き込まれたモノがいずこへと去ることで世界全体の容量がいくらか減った。


次の標的は、同じく魔王軍所属の魔法王(名称なし)だ。既に魔法で作り上げた巨大な火の玉を飛ばそうとしているが神速に及ぶべくもない。


「貴様は、ユートピアへご招待だっ!」全自動殺戮マシーンが闊歩する素敵な2333年のTOKYOへ飛ばした。それに気づかずTOKYOで火球を放ち、文字通り飛んできた無数の小型ロボットにその場で処刑され血の雨が降る様がクラシックのように頭に流れる。


「テメェは、逝ってよし!」魔王軍の軍師であり神を歪曲し穢す偽りの預言者ドグマドグマとその仲間が天へと召された。


「巨大化魔法!」残った魔王といろんなタイプの幹部をまとめて100倍程度の大きさに変える。二乗三乗の法則だ、あとは窒息するか、自らの重さで潰れるのみ!


戦争は終わった。人類の勝利だ。


私の圧倒的なパワーを目の当たりにした人類側の兵士に囲まれ何者か問われる。


「フッ、わたしか……わたしは……」みかんの皮をむく。


「魔王を倒すために遣わされたゴールデンミカンマスターゴッドボーイだ!」


「それはもはやレモンでは?」「いや、グレープフルーツの方が近い!」「ぜひ我々の王にお会いください」などと雑兵がざわめく。


次にやるべきことは既に分かっている。しかし、昔の名残か、人だったころのやり方で神に尋ねた。


「これから私は何をすればよいのですか?」


「聖地を巡礼し、衆生に洗礼を施せ!お主は、ゆく先々で人々にみかんの皮を浴びせる旅にでるのだ!」


「ものども、浴すがいい!」集まった群衆の前で高らかにそう告げる。


私は、ピラッピラッとむいた皮を一人一人頭の上にのせていくのだった。

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